永遠に残る化学物質「PFAS」を水から除去する簡単な方法、あります

いいんだけど、自腹なのが痛い…。

近年、やたらと見聞きするようになったPFASは、「永遠の化学物質」と呼ばれ、身のまわりにある多くの製品に使用されています。この厄介な化学物質はまた、環境中に漏れ出して問題になっています。そして最近は、上水道やボトル水から私たちの体内に入り込んでいる可能性も指摘されています。

新たな研究結果によると、体内に入ると健康への影響も懸念されるPFASを意外と簡単な方法で大幅に除去できちゃうようですよ。これは朗報。

PFASとは?

環境省は、PFASについて次のように説明しています。

有機フッ素化合物のうち、ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物を総称して「PFAS」と呼び、1万種類以上の物質があるとされています。

PFASの中でも、PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)、PFOA(ペルフルオロオクタン酸)は、幅広い用途で使用されてきました。これらの物質は、難分解性、高蓄積性、長距離移動性という性質があるため、国内で規制やリスク管理に関する取り組みが進められています。

で、実はこのPFAS、衣類やカーペット、家具、家電製品、スマホ、調理器具、トイレットペーパー、シャンプー、掃除用品、飲料水、食品包装素材、化粧品など、挙げ始めるとキリがないくらいたくさんのものに含まれているんです。

簡単に言えば、私たちはPFASから逃げられません。むしろ積極的に近づいている感じです。

厄介なのは、環境省の指摘通り環境中で分解されにくく人体に蓄積してしまうこと。特に、PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)やPFOA(ペルフルオロオクタン酸)といった一部のPFASは、発がん性や免疫機能の低下など、健康への影響が報告されています。

水道水とボトル水からもPFASを検出

中国の南方科技大学とイギリスのバーミンガム大学の科学者チームが発表した最近の研究結果によると、イギリスのウェスト・ミッドランズと中国の深センの水道水と、15カ国87ブランドのボトル水を分析した結果、すべてのサンプルからPFASが検出されたそうです。検出された濃度は、深センの水道水の一部を除いて、各国の規制基準を下回っていたといいます。

また、プラスチック製ガラス製のボトルでは、検出されたPFASの濃度に有意な差は見られませんでした。同じく、発泡水と普通の水でもPFAS濃度の違いはありませんでした。

ただ、同じ地域の水道水とボトル水を比較すると、ボトル水のPFAS濃度の方が低かったそうです。

PFASはろ過できるのか?

研究チームは、ボトル水のPFAS濃度の方が低かったことに注目し、煮沸と活性炭フィルター(ポット型)によるろ過の効果を調べました。

その結果、やかんで沸騰させると、分析対象とした10種類のPFASすべてで濃度の低下が確認できました。PFOAと、米国環境保護庁が規制濃度を定めている3種類のPFASの濃度は11%~14%減少し、規制されていない高揮発性のPFASは61%~86%の濃度低下が見られました。

規制対象のPFASは最大14%しか除去されないということで、沸騰させれば安心とは言えなそうです。

次に、活性炭フィルターを使用したケースでは、実験を行なったすべてのサンプルでPFASの濃度が81%~96%減少しました。活性炭フィルターでろ過したあとさらに沸騰させると、濃度は81%~99.6%減少したそうです。

この結果は、活性炭フィルターを用いたポット型浄水器を使用すれば、規制対象になっているタイプのPFASの濃度を大幅(80%以上)に低くできることを示唆しています。沸騰させるとちょっとはPFASを除去できますが、フィルターと併用しないと効果は低そうです。

国際的な規制が進むPFAS

PFOSとPFOAは、国際的な規制が進んだため、日本を始め多くの国で製造と輸入が禁止されていますが、環境中に残留していることから、水道水や井戸水などが汚染される事例が相次いで報告されています。

水道水などのPFAS濃度は、国際的に規制が進んでいます。世界保健機関(WHO)は、PFOSとPFOAについて水1リットルあたり100ナノグラム、(ナノは10億分の1)、すべてのPFASで同500ナノグラム暫定基準値として提案しています。

アメリカは2024年4月、バイデン政権が世界で最も厳しい基準値を設けました。PFOSとPFOAの基準値はそれぞれ1リットルあたり4ナノグラムになっています。トランプ政権移行後もこの基準値が継続するかは不明です。

日本は、水道水や河川などにおける水質管理上の暫定的な目標値を、PFOSとPFOAの合計で1リットルあたり50ナノグラムに設定しています。

活性炭フィルターと煮沸でPFASの大部分を除去できるのはいいことですけど、浄水器本体とフィルター交換はコストがかかりますし、やっぱり国や自治体が健康を最優先にして規制と浄水を行なうべきでしょう。安全な飲み水がぜいたく品になるのは避けたいところです。

Source: Gao et al. 2024 / ACS ES&T Water, The Conversation

Reference: 環境省, TIME , SciencePortal

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