映画『デューン』の砂の惑星を科学的にほぼ完璧に再現した3Dシミュレーター

フランク・ハーバートによるSF小説の映画化の続編『デューン 砂の惑星 Part2』が2024年3月15日に公開されます。

本作では、デューンとよばれる砂漠の惑星・アラキスを舞台に主人公のポール・アトレイデスが大いなる敵と宇宙の運命をかけた壮大なスケールの戦いが描かれます。

そんなはるか未来の遠い宇宙にあるこのデューンという惑星がどんな星なのか科学的アプローチを用いて視覚化した3Dモデルによるシミュレーションを、The Conversationが主導となって作成しました。この3DシミュレーターはClimate Archiveというウェブサイトにて公開されています。

このシミュレーターは2021年の映画1作目『デューン 砂の惑星』公開後にリリースされたものです。Science Newsは『デューン 砂の惑星 Part2』の公開に合わせ、改めてこのシミュレーターにフォーカスしました。

デューンの気候や特徴を科学的見地から表現

今回の3Dシミュレーターを作成したのは、Alex Farnsworth氏Michael Farnsworth氏Sebastian Steinig氏の3人。それぞれブリストル大学やシェフィールド大学の研究者で、気象学気候モデリングのプロフェッショナルです。

こした専門知識を基に、科学的にデューンという惑星をシミュレートし、さらにフィクションにおいて語られた物理学や環境が実際の気候モデルと照らし合わせてどうなるかを調査したといいます。そのために、フランク・ハーバートの小説の文章、そして関連書籍であるデューンの”百科事典“からデューンという惑星の情報をかき集めました。

3d-visual-simulation-of-dune-001
Image: A. Farnsworth, M. Farnsworth, S. Steinig / The Conversation

デューンに人は住めるのか

そうした調査・研究のなかで、地球とデューンとで明確な違いを見つけました。それは大気です。デューンの大気は地球と似ていますが、二酸化炭素濃度は地球より薄く、一方でオゾンの量が多いのだそうです。大気中のオゾンは地球では約0.000001%なのに対し、デューンでは0.5%にも及ぶのです。

オゾンは温室効果ガスの一種として知られています。つまり、地球よりも二酸化炭素が少なくても、オゾンによってはるかに大気が暖かいのです。また、オゾンが大気下層に存在することで、致命的といえるほどに人体には有毒であるともいえるわけです。

温度については、デューンの熱帯地域で最も暑い月に約45℃、最も寒い月でも約15℃に達するといいます。さらに、最も暑い場所では70℃に達することもあり、極地では-75℃まで下がります。

こうした過酷な気候に対して、フィクションであることは前提としながらも、デューンに住む人々やこの星に降り立つ主人公たちは、有毒である大気中のオゾンの除去技術が必要となるといいます。また、原作や映画にも登場するハイテクノロジーの「スティルスーツを常に着用する必要があるとも指摘しています。

つまり、過酷な気候・環境ではありますが、高度な技術があることを前提とすれば居住は可能であると制作者たちは結論づけています。あ、あと大量の食料や水を運べれば、だと思いますが。

『デューン』の世界と物理法則が一致しない点

Farnsworth氏ら制作チームは、小説で書かれていることシミュレートしたモデルや実際の物理法則に基づいて起こることに相違がある点も指摘しています。

まず、この惑星では「雨が降らない」と書かれています。が、シミュレーションでは一部の地域において雲が生成され、高緯度の山や高原といった地域では夏や秋に非常に少量ではありますが、降雨が発生することを示しているそうです。

一方で、小説で言及されている「北半球の極地に古くから存在する氷床」については、極地に氷があったとしても夏の気温によって溶けて、冬に十分に氷が生成されるほどの降雪はないとしています。

さらに、Science Newsは砂漠の惑星に住む人々の最大の脅威として描かれるサンドワームについても専門家に話を聞きつつ言及しています。

デューンに存在するサンドワームが無脊椎動物の線虫だと仮定した場合に、この巨体で生命を維持するためには吸収する酸素が足りないだろう、としています。

一方で、サンドワームはミミズトカゲのような手足のない爬虫類とも考えられ、その場合は、巨体に成長するには、重力に耐えられるほどの大きくて強い骨と筋肉がなければ潰れてしまうだろうとしています。

いずれの仮説を基にしても、サンドワームがデューンに生息できる可能性はほぼゼロと考えられるようです。それは残念…いや、住む人にとっては嬉しいことですね。

フランク・ハーバートの小説、そして映画としての『デューン 砂の惑星』は当然フィクションです。しかし、その一方で砂漠の惑星という考えにおいて理にかなった環境の創造を行なっていることも事実です。後に多くのSFやファンタジーに影響を与えたこの作品を現代の技術で視覚化して科学的に解明していく、というのは非常におもしろい試みといえます。

ぜひ一度シミュレーターを観てほしいと思います。こうした知識にも触れながら新たな『デューン 砂の惑星 Part2』を観るとより一層楽しめる…はずです!

source: Climate Archive, The Conversation 1, 2, Science News

タイトルとURLをコピーしました