欧州宇宙機関(ESA)は先日、映画『スター・ウォーズ』シリーズに出てくる戦闘機タイ・ファイターにそっくりなシルエットで宇宙を漂流する物体の画像を公開。
その正体は、数十年の時を経て故郷の星に戻る道中にあった地球観測衛星「ヨーロッパリモートセンシング衛星(ERS-2)」でした。
トップの画像は1月から2月頭にかけてのERS-2の姿で、宇宙企業HEOが他の衛星に積載されているカメラを使って撮影したものです。
ESAは2月の上旬からERS-2の再突入に向けて準備を行なっていました。2011年に同衛星の運用を停止した後は、他の衛星との衝突を避けるためERS-2の高度の低下と残る燃料の枯渇を要する、数年がかりの軌道離脱プロセスに着手していたのです。
ERS-2 spotted! 📸🛰️
The ESA satellite is on a tumbling descent that will lead to its atmospheric reentry and break up this week.
These images of ERS-2 were captured by @heospace for @spacegovuk using cameras on board other satellites.#ERS2reentrypic.twitter.com/GTuubP6apJ
— ESA Operations (@esaoperations) February 19, 2024
北太平洋上空で大気圏再突入
2月21日(水)、重さ2トンのERS-2は、地球の上空80kmあたりで大気抵抗によってバラバラに分解しはじめ、制御されない状態での大気圏再突入をついに果たしました。同衛星はアラスカとハワイの間の北太平洋に落下したとESAは報じており、被害はなかったとのこと。
ESAオペレーションズは同衛星の落下地点を確認した後、Xにこんな投稿をしています。
「おやすみ皆さん。おやすみERS-2」
ERS-2はどんな人工衛星?
1995年に打ち上げられたERS-2は、これまでに欧州が開発した最も洗練された地球観測衛星の1つでした。海面温度、海の風、大気中のオゾンを測定する機器類の数々が搭載されていました。
何よりERS-2は、気候変動への理解を前進させる、極めて重要なデータを収集したとESAは述べています。ERS-2及び姉妹衛星「ERS-1」からのデータは、何千もの科学論文に役立ちました。
衛星たちは、「Envisat(エンビサット)」のような地球観測の後継ミッションの基盤も築いたのです。Envisatは重さ8トンと、これまでに開発された地球観測衛星としては最大級で、5万回以上も地球を周回したとか。
ESA地球観測プログラムディレクターのシモネッタ・チェリ氏は、ERS衛星2基がもたらした知見と新たな研究機会を強調するコメントを同機関のリリースに寄せています。
「ERS衛星は私たちの生きる世界についての見方を変える、膨大なデータを提供してくれました」