さよならユニバーサルミュージック。TikTokとの楽曲使用契約を解除

アーティストへの搾取が理由。でもそういうユニバーサルはどうなの?

ユニバーサル ミュージック グループ(UMG)がTikTokから全楽曲の削除を開始しました。

Bloombergによると、ユニバーサルは1月30日付の公開書簡TikTokはアーティストに正当な報酬を支払っておらず、またアーティストをAIから保護していないと非難しています。アーティストの搾取をすることで知られる音楽業界、そしてそのトップにいる世界最大のレコードレーベルがTikTokを非難したというのはなかなか衝撃的なことです。

ユニバーサルは公開書簡で、

TikTokは音楽ベースのビジネスを構築しようとしていますが、その音楽に適正な対価を支払っていません。TikTokの戦術は明らかです。プラットフォームの力を使って、アーティストを傷つけ、音楽の価値を過小評価し、アーティストや作曲家、そしてファンに対して不利な契約に屈するよう脅しているのです。

と述べています。

テイラー・スウィフトやバッド・バニーを削除

ユニーバーサルは、テイラー・スウィフト、バッド・バニーなどの有名アーティストの楽曲をTikTokから削除しています。ユニバーサルの楽曲をフィーチャーした動画は、ユニバーサルとTikTokが新しい契約が結ぶまではミュートとなります。

ユニバーサルは、この措置はアーティストにとっての最善策だと主張しています。しかし、TikTokが新しいアーティストを発掘するきっかけ作りをしていることについて、音楽レーベルよりも多くのことを成し遂げてきたと考えている人もいます。

オリビア・ロドリゴやスティーブ・レイシーなど、ユニバーサル ミュージックの有名アーティストの多くがTikTokを通じてバズり地位を獲得したという経緯もあります。

でもユニバーサルも同じことしてるじゃん?

ユニバーサルが苦言を呈したTikTokへの書簡ですが、ユニバーサルは同じことをアーティストにしているんですよね。なのでまるで自分たちのことを非難しているような文章という印象さえあります。

レコードレーベルは、若いアーティストと低賃金で搾取的な契約を結ぶとよく言われています。テイラー・スウィフトがすべてのアルバムを「テイラーズ・バージョン」として再録して再リリースしているのは、若いときの搾取的な契約が理由。大ヒットしたテイラーの過去の楽曲の権利が同意なしに売却されているからなんです。

なのに、同じことをしているTikTokに対してレコードレーベルが非難するというなんともおかしな構図ができあがっているわけです。

米国作曲家作詞家出版者協会によるとレコードレーベルは通常、その曲の売上1ドルに対して10〜25セントをアーティストに支払うとのこと。かなり低価格ですが、Motown Records(現在はユニバーサル所有)は、ジャクソン・ファイブなどのアーティストに対してたった3%未満の支払いしかしていなかったそうです。

ユニバーサルはTikTokを「AIによって生成された録音でプラットフォームをいっぱいにしている。これはAIとアーティストを置き換えることを後押ししている」と指摘しています。しかし、ユニバーサルはYouTubeと提携して、アーティストの曲のAI生成バージョンを作成しているのです。ユニバーサルは自社アーティストの声をAIにライセンス供与もしています。

本当にアーティストのため?

ユニバーサルがTikTokから引き揚げるというのは、アーティストを守るための正義ではないのかもしれません。単に報酬を得たいと考えるゆえの行動なのかもしれません。

もちろんTikTokは音楽を使用することでしっかりとその曲の所有者に報酬を支払うべきですが、ユニバーサルのTikTokに対する主張は、自分たちが音楽業界のやっていることそのものとしか思えないですよね。

アーティストの搾取は今に始まったことではありません。R&BグループのTLCは、国際的に大ヒットとなったアルバムで年間5万ドル以下しか報酬をもらっておらず、結果的に破産申請しています。

また最近のテック企業もアーティストにしっかりと報酬を支払っていないのが現状。Spotifyは1回のストリーミングあたり平均0.004ドルの報酬しかアーティストに支払っていないとのことですしね…。

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