あ、これ、ずっと欲しかったSteam Deckだ。そう思いました。
Valveの新しいSteam Deck HDR OLED版は、ディスプレイもバッテリー持ちも軽さも、何もかもがよくなっています。一度触ってしまったら、もう暗くて狭い初代のSteam Deck(新名称「Steam Deck LCD」)には戻れません。全不満解消です。
Steam Deck OLED
これは何?:HDR OLEDディスプレイ搭載、長時間バッテリーの最新Steam Deck。価格:12GB SSDモデル 549ドル(税込8万4800円)、1TB SSDモデル 649ドル(9万9800円)、米カナダ限定の1TB SSDスペシャルエディション(透明ボディ) 679ドル。日本はKOMODOより11月17日発売。満足なところ:ビビッドなHDR OLEDディスプレイ、バッテリー持ちが改善、排熱性能も向上、便利なキャリングケース付き、新デザインのサムスティック、修理しやすい。残念なところ:ゲーム処理性能はLCD版Steam Deckと変わらない、ごついフォルムも同じ。
デザイン:「Steam Deck 2じゃないからね!」
並べてみるとOLED版も昨年発売されたLCD版もほぼ同じです。オレンジ色の電源ボタン、オール黒のサムスティック、やや画面領域が広くなったところを除けば、初代のフォルムをそのまま継承しています。
OLEDはLCDより薄いので、バッテリーは前の40Whrより大きい50Whrを搭載できました。それでいて重さは30g近く減って約640gに抑えています。
たかが30gですが侮れません。Steam Deck LCDは重いので、しばらく使えば違いはわかります。
シアトルのValveで初めて見たときには「まだ”Steam Deck 2”じゃないからね」と念押しされました。担当のLawrence Yangさん曰く、OLED版は「初代の完全版」なのだとか。また1から初代Steam Deckをやり直すとしたら、こういうの作るってことでした。
あ、あと、忘れちゃならないのが新しいキャリングケースで、マトリョーシカみたいにミニケースが入れ子になってて、マジックテープでひっついてるすね。
べリッとはがして取り出せば、かばんにすっぽり収まるサイズ感。場所をとりません。よく機内でSteam Deckやってる自分も、これならバックパックの半分がゲーム機なんてことにならないので助かります。
ディスプレイ:今あるポータブルゲーム機では最高レベル
HDR OLEDのタッチディスプレイはマジでいいです。画質も目に見えて明るくなりました。ピーク輝度は1000ニト。しかもリフレッシュレートは90Hzで、前モデルの60Hzよりがんばってます。ベゼルは細くなったので、前と同じ本体サイズでありながら画面領域は広め。
さっそく『Cult of the Lamb』をやってみたら色が目に飛び込んでくる感じがして、Steam Deck LCDの比じゃありませんでした。 黒はどこまでも深くてリッチ。画素を光らせないことで真のブラックを実現するOLEDのなせる業だなって実感しました。
同じゲームをSteam DeckのOLED版とLCD版で比べると違いは圧倒的です。昼と夜ほどの差があります。
ポータブルゲーム機なのにHDR対応というのも考えてみればワイルドなことですよね。
『サイバーパンク 2077』をHDRで延々遊んでみたら感動でした。ネイティブでHDRに対応しているゲームはシームレスに動作する、デベロッパー側で特に何もしなくても、というのがValveの説明です。
画面がこれだけ明るいと、野外のプレイ環境も最高です。11月の陽気に誘われてパティオの日なたで『Resident Evil 4』のMercenariesモード(画面が暗いんで有名)やっちゃったりしたけど、目をしょぼしょぼさせなくても大丈夫でした。
ゲーム性能:前と同じだけど、熱と音は抑えられている
ただゲームの処理性能については特筆することはありません。中のAMDのAPU(AMD製のCPUとGPUを合成・統合させた製品)は大幅改善したので排熱とバッテリー持ちはよくなってますが、ことゲーム性能に関しては、前のLCD版と基本的に同じです。
強いて一番の違いを述べるとするなら、重いゲームをやってる最中に前ほどオーバーヒートしなくなったことかな。
ゲームの起動、SteamOSの操作は前より速くなって、UXはキビキビです。トラックパッドも粗がとれて、妙な反応をすることもなくなりました。さらにBluetoothには専用アンテナがついて、ヘッドセットなんかの周辺機器との接続も安定しました。LCD版(少なくとも自分が持ってる個体)はそこが課題だったので、またひとつ問題解決です。
細かい改善点を並べたらキリがないのでこれぐらいにしておきますが、ひとつはっきり言えるのは、スピーカーのボリュームからジョイスティックの感触まで初代のあらゆる面にValveがきめ細かく対応したってことでしょう。
バッテリー駆動時間:理想のポータブル性
ディスプレイの次に感動だったのが、バッテリー持ちです。
ゲームの内容にもよりますが、「だいたい30~50%も駆動時間が伸びている」(Valve)とのこと。 テストしてみたら25~40%程度の伸びでしたが、まあ、明るさを最大にして(自分の好み)これですからね。
テストしたなかでバッテリーの減りが一番激しいゲームは『サイバーパンク 2077』でしたが、それでも何セッションかやって2時間くらい持ちました。前のLCD版は30~45分しかもたなかったので立派なもんです。
アクションRPG『Hades』(ハデス)は約6時間(LCD版より約90分伸びた)。
アクションゲーム『Armored Core V: Fires of Rubicon』は約2時間半(LCD版より約35分長く遊べる)。バッテリー長持ちになって何がうれしいって、やっぱり『Stardew Valley』なんかも何セッションも遊べることでしょう。6時間半やっても、バッテリー残量23%でした。いちいち電源ケーブル気にしなくてもいいの。
Steam Deck OLEDは買い?
すっかりSteam Deck OLEDの虜になりながらも、これのミニ版が欲しいなと思ってる自分もいます。軽くなったのはいいんだけど、初代見て「デカッ!」「重っ!」とのけぞった人はOLED版見ても同じ反応になると思います。
もうSteam Deckを持っている人は、たった1年でまた549ドル以上も払うのは痛い出費ですよね、いくらあれこれ改善されてても先立つものが…。
という制約はあるけど、Steam Deck OLEDはNintendo Switch OLEDと肩を並べる最高のポータブルゲーム機です。ディスプレイがいいのでどのゲームもかつてない美しさ。バッテリーもいいので時間を気にせずゲームを心の底から楽しめます。