爆速だけど目新しさはなし。新MacBook Proは買う価値あるか?

激速には違いないけど、新しいところはなく…。

Apple(アップル)からM3シリーズ搭載のMacBook Proが発表され、11月7日から発売されてます。

米GizmodoのKyle Barr記者は一足早くレビューして、M2版やM1版とどう違うのか?も含めてまとめてくれました。

なお、この記事執筆時点ではまだバッテリー持ち具合と画面輝度について、完全に検証が終わってなかったので、追々補足しますね。では、以下どうぞ!


テック記者の自分にとって、パワフルなコンピューターを立ち上げるときほど気持ちの良い瞬間はなかなかありません。ロケットエンジンのスイッチを入れる瞬間ってこんな感じなのかなと思います。

M3 Maxチップ、48GBメモリ搭載の16インチ新MacBook Proを立ち上げるのは、『スタートレック』のエンタープライズ号の船長席に着いてるようなもので、立ち上げも個々の操作も夢のようです。パワフルなMacBook Proの中でも、M3シリーズ搭載マシンは最上位に位置するし、今回加わった黒モデルも美しいです。

でも、ロケットもそうですが、性能云々より打ち上げる目的のほうが大事だったりします。MacBook ProはGPUやメモリに負荷をかける作業のために作られていますが、そうじゃないタスクにはオーバーキルにもなりえます。ゲーミング能力も相当に高いんですが、Mac対応ゲームが少ないために、それを発揮しきれきずにいます。

M3 Max搭載16インチMacBook Pro

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Image: Angel Fajardo – Gizmodo US

これは何?:M3 Maxチップを搭載した、Apple史上最強の16インチMacBook Pro

価格:3,499ドル(日本価格55万4800円)、レビュー機は3,999ドル(同64万4800円)

好きなところ:負荷の高いプログラムでも快適に動かせる

好きじゃないところ:M3以外は特に新しい要素がない、ゲーミング推しなのに対応ゲームタイトルが少ない

AppleはM3搭載プロダクトを「恐ろしいほど速い(Scary Fast)」と言い、発表イベントの名前にしてさえいました。その性能はベンチマークでも証明されてるし、M3は当然ながらM2より強力です。ただ、ユーザーによっては、M3とM2くらいの違いはほとんど(または全然)使い方に影響しないのです。

僕の新MacBook Proへの第一印象は、「まだIntel版MacBook Proを使ってるユーザー向けかな」でしたが、それを訂正したいです。AppleはこのMacBook Proを、上質のワークステーションかつゲーミングPCであるという見せ方をしてるんです。ゲームの重要性が急上昇したんですね。

問題は、まだ多くのゲームメーカーがMacに対応していないことです。Steamのライブラリをスクロールしても、対応ゲームは数えるほどしかなく、しかもほとんどが数年前のものです。

今年最初に出たM2版MacBook Proの問題点は、M3になっても継続です。ノッチはまだあるし、タッチスクリーンでもないし、ディスプレイ関係の目立った進化もありません。

つまり新MacBook Proは、2021年のM1版MacBook Proから普通に性能が上がっただけなんです。今年はMacBook Proが2回も発表されましたが、次はもっと時間をかけてもいいから新鮮なものをと願ってしまいます。

黒い以外は見た目も音もほぼ同じ

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ノッチはまだあります
Image: Angel Fajardo – Gizmodo US

外見面でいうと、「スペースブラック」はAppleらしい良色です。

シルバーやグレーも良いですが、時間が経つとあまりに普通に見えてくるし、このスペースブラックはサイドと背面がアノダイズ加工で、指紋が付くのを防いでくれるそうです。

たしかにあちこち持ち歩いていても、指の跡が付いてたことは1回もありませんでした。きれいな状態がどれくらい持つかはわかりませんが、この加工は良いと思います。

この黒モデルがなければ、M3版MacBook ProはM2版とまったく同じに見えます。スクリーンはAppleのLiquid Retinaディスプレイで、ただSDR輝度が従来の500ニトから600ニトに上がりました。最大120Hzの可変リフレッシュレート「ProMotion」によってNetflixやYouTubeも快適に見られますが、これもM2版と同じです。

とはいえ。輝度の自動調節機能は、やっぱりAppleのものがベストだと感じます。音楽動画の視聴も快適です。Appleの空間オーディオ対応6スピーカーシステムの音と他メーカーのものを比べると、細かいけれど歴然とした違いがやっぱりあります。

ちなみに輝度とバッテリーライフに関しては、まだテストが終わっていません。

Appleいわく動画再生は18時間、ブラウジングは12時間可能だそうです。M3 Maxじゃなく、M3とかM3 Proだともう少しずつバッテリー持ちは改善します。ただし画像処理とかゲームといった高負荷なタスクでは、数時間でバッテリーを使い切ってしまいます。

ノッチはいまだに画面上部に鎮座しています。iPhone 14 Proでノッチに代わって登場したDynamic Island。最初こそあまり支持されませんでしたが、僕自身は最近気に入ってきました。

MacBook ProにもDynamic Island的なものが採用されればと思うくらいですが、それにはまずタッチスクリーン化が必要になり、すぐには難しいんでしょうね。

1080pのWebカムはほぼ変化なしですが、M3になったことでホワイトバランスやノイズの調整ができるそうです。キーボードとトラックパッドもほぼ同じ。

M2 MacBook ProでHDMI 2.1対応になりましたが、それも変わらずです。USB-Cポートも2つと、もっと安いモデルと同じです。ただ140Wの充電アダプタとケーブルが同梱されてて、それを使うとゼロからフル充電まで1時間くらいでできました。

最強のベンチマーク

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動画編集でもゲームでも、M3 MaxはMシリーズ内最強
Image: Angel Fajardo – Gizmodo US

ハイエンドな生産性・クリエイティブタスク用に作られたMacBook Proに搭載されたチップの中でも、M3 Maxは最高レベルです。

レビュー機はメモリが48GB、M3 Maxチップには16コアのCPUと40コアのGPUが載っていてます。レビュー機より500ドル(日本では9万円)安いモデルだと、RAMは36GBになり、CPUは14コア、GPUは30コアになります。

M3 Maxのスコアは、ベンチマークツールのBlender 3.6では上位20%に十分入ります。M2チップの最強のものが今手元にないので、M3 Maxと直接比較できないんですが、BMWの画像を処理するBlenderの古いベンチマークでは、M3 Maxが要した時間はたった30秒に対し、M2では2分30秒、M1 Maxでは4分以上かかりました。HandBrakeを使ったテストでも、4K動画の1,080pへの変換にかかった時間は、M3 Maxが40秒に対し、M2は2分22秒でした。

最新のCinebenchでは、M3 MaxはM1のベストラップトップとしてのスコアを簡単に超えました。Geekbench 6では、M3 Maxは他のメジャーなゲーミングラップトップと拮抗し、M2版13インチMacBook Proを上回りました。

要するにM3 Max搭載MacBook Proはモンスターで、ラップトップなのにデスクトップ級のタスクを処理できるんです。しかも今回のベンチマークで使ったのは48GBメモリのモデルでしたが、追加しようと思えば128GBまで拡張できます。

ゲーミングは肩すかし

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『Lies of P』がプロモーションされてますが、最新大作系タイトルはそんなに期待しないほうがいいです
Image: Angel Fajardo – Gizmodo US

Appleは今回、新MacBook Proのゲーミング機能をすごく推してます。最新のmacOS Sonomaにも「ゲームモード」が加わり、不要なタスクをスケールバックすることでゲームのFPSを高められるようになってます。

ただWindowsには前から同様の機能があり、ゲームに使うOSの標準にmacOSがキャッチアップしたような感じです。

Appleのゲーミング推しの中でプロモーションされてるのが、『Baldur’s Gate III』と『Lies of P』です。『Baldur’s Gate III』はハイ設定にすると、特にゲーム後半ではそこそこハイエンドなPCでもかなりストレスがかかるので、ベンチマークとして有効です。

新MacBook Proの場合、Act 1では最大130FPSが出ていたし、画面上のキャラクターがはるかに増えたAct 3でも70台前半くらいにしか落ちませんでした。

一方『Lies of P』は、極力最高の設定にしても、アウトドアの場面でなんとか平均70FPSでした。

ただ、『Lies of P』のゲーム自体は問題ないんですが、ハードウェアの性能を試すのには最適じゃないです。リアルタイムリフレクションがないし、M3で新たに対応したハードウェアアクセラレーテッド・レイトレーシングを試す場面もありません。

Mac対応ゲームは本当にレアで、最近のヘビーなゲーム、例えば『Cyberpunk: 2077』などもMac版はありません。『バイオハザード ヴィレッジ』とか『Death Stranding: Director’s Cut』みたいな旧作はあるんですが、プレイしたかった人はもう他でやってるはずです。

でも、『Total War: Warhammer II』や『Total War: Three Kingdom』といったタイトルはプレイでき、これで設定をガンガン上げてみたところ、どちらも簡単に最高設定にできました。といっても、この2つに関しては、M3向けに最適化してるとは明確に言われてません。

4,000ドルもするM3 Max搭載MacBook Proは、Razer Blade 16とかAcer Helios 18といったフルパワーなWindowsゲーミングラップトップと真っ向から競合しますが、MacはまだゲーミングPC市場に足を踏み入れ始めたばかりです。

いつかコンソール、Windows、Macそれぞれにいろんなタイトルが同時リリースされるようになればと思いますが、今はそうじゃないんです。

買うべき?

今もIntelチップのMacBook Proを使ってる人なら、M3版MacBook ProはMシリーズにスイッチする一番魅力的な理由になります。

でも、M1搭載ラップトップを持ってる人なら、55万円払ってもっと速いものに買い替えるのが妥当かどうか、答えはその人のコンピューターの使い方やお財布事情によってだいぶ違います。ただ、ゲーミングに期待してMacBook Proを買おうとしてるなら、プレイできるタイトルにはだいぶ制約があることに要注意です。

最新MacBook Proは、AppleのMシリーズとは何なのか知りたいという人には、ちゃんとお勧めできるマシンです。でも、今までのMacBook Proのデザインからの劇的な変化を望んでる人は、有機ELモデルが出るのを待ったほうがいいかもしれません。

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