現在も入手可能なレトロゲームは1割程度。アーカイブが困難すぎるゲーム業界

レトロゲーム人気が再燃中です。

古いセガサターンを修理してみたり、ネットオークションで昔のソフトを大枚はたいて競り落としてみたり、レトロゲーム愛好家は趣味を邁進するために相当な苦労をしています。

古い映画はVHSテープからDVD、そしてストリーミング配信と形を変えて、いつの時代も見ることができるのに、ゲームは時代を越えられないという問題があるからです。ゲームを文化の歴史と考えると、その大部分は保存されずに消えてしまうかもしれません。

ゲームの歴史を保存することの意義

ゲームをゲーム史として記録・保存しようというNPO団体「Video Game History Foundation(VGHF)」が、ソフトウェアの保存団体「Software Preservation Network」と協力したリサーチレポートを公開

いわく1970年代から2009年までのゲームタイトルの大部分は、一般ゲーマーはもちろん、歴史的保存を望む人ですらほぼ入手不可能だといいます。

ゲームデジタル移行前に米国でリリースされたゲームタイトルで、今も合法的に市販されているものはたったの13%。残りの87%は博物館で保存(場合によってはプレイ可能)、または海賊版しかないのが現状です。

つまり、レトロゲーム愛好家はもちろん、ゲーム史を保存しようと思ったら、タイトル収集に莫大なコストと時間がかかるということ。

この状況について、米Gizmodoの電話インタビューに応じてくれたVGHFのPhil Salvador氏は、映画業界と比較してこうコメントしています。

映画『タイタニック』がVHSでしか手に入らないようなものです。

もし、博物館のガラスケースの中で再生されている状態でしか『タイタニック』を見る術がないとしたらどう思いますか?

2010年以前の4,000タイトルを調査

VGHFの調査対象となったのは、2010年以前にリリースされたゲーム4,000タイトル。現在も正規の権利者から入手可能な状態にあるかを調べました。

これには、コモドール64からPS 2など、さまざまなコンソールのタイトルが含まれています。PS 2はPS 3リリース後も健在で多くの人に長い間使われた人気ゲーム機ですが、そのゲームタイトルですら現在入手できるのは12%程度。

2010年以前の5年間は、タイトル入手可能率が20%を超える期間はなし。1985年以前のゲームになると、入手できるのはたった3%にまで落ちました。

Salvador氏も、かなり人気のあった有名タイトルですら手に入らないことにはさすがに驚いたといいます。あの『メタルギアソリッド4 ガンズ・オブ・ザ・パトリオット』ですら、PS 3で今も頑張るか、パソコンのエミュレーターでしかプレイできない状況です。

VGHFのレポートでは、他のメディアと比較すると、ゲーム史の現状は第二次世界大戦前の音声記録(10%)やサイレント映画(14%)と同等。「レトロゲームへの関心が高まっていても、入手可能率が3割を超えるのは難しいでしょう」とSalvador氏はいいます。

ゲーム博物館(ニューヨーク州のStrong Museum of Playは有名)は存在していますが、ゲーム史を研究しようと思ったら、現地まで行ってプレイする必要があり、多くのリサーチャーにとって現実的ではありません。

稀に期間限定で過去ゲームが公式から公開されることもありますが、結局は個人や小さな企業が作る改造コンソールに頼るしかなく…。

Digital Eclipseのように、過去ゲームの現代版エミュレーターを開発するところもありますが、それも稀であり、多くの場合は著作権で保護されています。ゲーム界の王様である任天堂は特に厳しく、過去の大量の名作ゲームを保存団体ですらアーカイブすることが難しい状況です。

企業の歩み寄りも必要

ゲーム歴史家Frank Cifaldi氏が設立したVGHFは、現在の著作権、特にデジタルミレニアム著作権法によって、アーカイブ目的での利用からも一部の企業が知的財産を隔離していることに不満を表しています。

VGHFが特に問題視しているのは、レトロゲームも十分提供できていると主張するエンターテインメントソフトウェア協会(ESA)。任天堂、ソニー、エレクトロニック・アーツ、アクティビジョン・ブリザードなどは十分提供しているといいますが、その主張の例として挙げられているのは、タイトル20本入りのプレイステーション クラシックなので、やはりVGHFとしては十分とは思えないでしょうね。

米GizmodoがESAに取材したところ、以下のコメントがありました。

ビデオゲーム業界の創造性と経済力は、強固な著作権保護によって成り立っています。

ESAとその会員企業は、これからのクリエイティブ、未来の作品の経済機会を損わない方法で、ゲームを保護していくよう積極的に支援しています。

一見、真っ向対決の姿勢に見えるVGHFとESAですが、Salvador氏はいわく敵対してはいないといいます。

問題は、ゲームの歴史を保護し、学術的に利用できるようにするのがどれだけ大切かをわかってもらるためのデータがまだ十分ではないということ。ゲームによっては権利が複雑でリリースされないものもあり、一方研究者たちも著作権保護の観点から許可なしでは手が出せないのが現状です。

Salvador氏は、カートリッジでゲームを出さないことは経済面から理解できるものの、業界全体の持続可能性を高める必要があると語っています。

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