「こんにちは、皆さん、ここでの調子はどう?」という投稿は、インスタグラムから新しくリリースされたアプリのスレッズ(Threads)で、7月5日のリリース直後にセレーナ・ゴメス氏のレアビューティ(Rare Beauty)が最初に投稿したものだ。
スレッズに殺到した美容・ファッションブランド
Twitterの競合相手であるスレッズは、7月5日の午後7時(米国東部夏時間)に一般公開された。スレッズは既存のインスタグラムアカウントですぐ登録できたため、マーク・ザッカーバーグ氏によると翌朝までに3000万人が登録したという。インスタグラムのユーザーでスレッズに登録した人には多くのセレブやインフルエンサー、そしてもちろんブランドが含まれている。
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美容分野では多くのブランドが7月5日の夜にすぐにアカウントをオンにした。最速でスレッズを導入した企業には、レアビューティのほかに、クリニーク(Clinique)、ラネージュ(Laneige)、E.l.f.ビューティ(E.l.f. Beauty)、メイベリン(Maybelline)、タルト(Tarte)、セフォラ(Sephora)、アルタビューティ(Ulta Beauty)、フェンティビューティ(Fenty Beauty)、ブリオジオ(Briogeo)、ジットスティッカ(ZitSticka)、ミルクメイクアップ(Milk Makeup)、ケイトソマービル(Kate Somerville)、そして、Z世代向けのスタートアップ企業ではエクスペリメント(Experiment)、スターフェイス(Starface)、AMスキンケア(4AM Skincare)、トゥードビューティ(TooD Beauty)などがある。
7月6日の午後までには膨大な数の主要美容ブランドがスレッズに加わったため、新規登録者は自分たちが早かったとはもはや考えていない。
エスティ ローダー(Estée Lauder)は、スレッドのリリースから24時間も経っていない7月6日午前5時44分(米国東部夏時間)に次のような投稿を行った。「スタイリッシュに遅刻。偉大なアイコンのように✨」。
今のところ、スレッズへの投稿の第1のルールは、スレッズについて話さなければならないということのようである。ほとんどの投稿は、挨拶やジョーク、ミーム、また、機能をもっと求める意見でスレッズのローンチを祝っている。
レアビューティのCMO、ケイティ・ウェルチ氏はスレッズに「楽しかったTwitterの初期の頃みたいだ!」と投稿した。
「これは自分たちが中学の頃のソーシャルメディアと同じ雰囲気。大爆笑。大好き」とインフルエンサーのスニッチェリーは投稿した。
「別のフォロー中タブが必要だ、できるだけ早く! 」と述べたのは、Twitter上で活発に活動しているスキンフルエンサーのショーン・ギャレット氏だ。インスタグラム責任者のアダム・モセリ氏は、それは将来登場すると約束した。
これまでスレッズに登場したセレブには、オリビア・ロドリゴ氏、ジェニファー・ロペス氏、キム、クロエ、コートニーのカーダシアン姉妹、クリス・ジェンナー氏、シモーネ・バイルズ氏、セレーナ・ゴメス氏、ファレル氏らがいる。
また、新規登録者らは、インフルエンサーが多く、写真と動画中心のプラットフォームの美的感覚を重視するユーザーベースに対して、Twitterのテキストベース形式を取り込むアプリではどのようなコミュニティが生まれるかについてコメントしている。
4AMスキンケアの共同創業者、ジェイド・ベグリン氏は、(画像中心対テキスト中心という)二分法を用いて、スレッズではどのようなタイプのインフルエンサーが目立つかを示した表を作成した。
ベグリン氏は、4AMスキンケアについて「さらに別のソーシャルアプリを管理しなければと思うと気が遠くなる」ものの、スレッズは「少なくとも現時点では、当社のブランドボイスに忠実でありながら、もう少しカジュアルで楽しくいられる場所のように思える」。
この新しいアプリには、Twitterよりもインスタグラムにこれまで多くマーケティング投資を行ってきた美容ブランドを惹きつける可能性がある。
メイクアップブランド、LYSビューティ(LYS Beauty)の創業者、ティシャ・トンプソン氏は、「当社のオーディエンスはものすごくビジュアルに刺激を受けているので、ブランドとして我々はTwitterには投資していなかった。インスタグラムとTikTokはビジュアルに対応している」と語った。しかし、LYSビューティはスレッズにアカウントを開設しており、それを使って「顧客からの意見をもとに、自信、自己愛、モチベーション、美容トレンドなどのトピック」について投稿するつもりだとトンプソン氏は述べている。
Twitterやほかのプラットフォームの現状
イーロン・マスク氏が2022年10月にTwitterを買収して以来、その代替としてマストドン(Mastodon)やTwitterを創設したジャック・ドーシー氏のブルースカイ(BlueSky)といった競合他社が台頭したが、複雑なサインアッププロセスや招待制のためユーザー数は限られていた。Twitterはユーザーが1日に閲覧できるツイート数を制限するとマスク氏が発表したことを受けて、登録が殺到したブルースカイは、7月1日、新規登録の一時停止を発表している。
「小規模なコミュニティではあるが、当社はTwitterを使うことが重要だと感じたので、これからも使い続けるつもりだ。だが、ダウンロード数が増えるにつれ、スレッズに注力するだろう」と述べているのは、アットウォータースキン(Atwater Skin)の創業者、クリス・サルガード氏だ。
買収をめぐる論争を受けて、広告主らはTwitterへの支出を減らした。また、マスク氏の政治的発言はブランドに対して抑止力にもなっている。
オーガスト(August)の共同創業者兼CEO、ナディア・オカモト氏は次のように述べている。「最近のTwitterの展開の一部には非常に失望している。当社は生理関連ブランドとしてジェンダーインクルーシブであることを誇りに思っており、『シス(ジェンダー)』を中傷とみなすイーロン・マスク氏のコメントは不正確なだけではなく、Twitterでのトランスフォビアを助長し、多くのコミュニティにとって安全ではない場所になっている。私は時事問題や真実の情報源としてTwitterを利用して育ったが、認証済みユーザーは、自分がフォローしているのは誰かを確認して、国民の1人として誤った情報を確実に避けられることもできた方法のひとつだった」。
ビジュアル重視のソーシャルメディアに依存している美容ブランドにとって、Twitterは優先度が低くなっていた。
たとえば、アーバンスキンRX(UrbanSkin RX)は2022年の第3四半期以降、Twitterで活動していない、とマーケティング担当ディレクターのケラン・ルック・リオイ氏は述べている。「これは意図的であり、もっと戦略的なソーシャルチャネル、特に(製品の)ビフォアアフターや使用方法を示せるTikTokとインスタグラムに注力するためのものだった」。
カスタムヘアケアのスタートアップ、アワX(OurX)は、CEOのメーガン・モーピン氏によると、スレッズのコンテンツをプロのヘアスタイリストによるアドバイスのある「インスタグラムに似た」ものにする予定だというが、同社のTwitterは「ソートリーダーシップとブランド価値に重点を置いており」、投稿はたまにしか行われないという。
現時点ではスレッズは実験段階
招待のみのスタートアップとは異なり、ブランドには最初から一斉にスレッズに参加する機会がある。だが、Twitterと同じように、企業に友好的な投稿に対して皮肉や批判が起きるという長年の伝統は健在である。
ワシントンポスト紙のコラムニスト、テイラー・ロレンツ氏は、「早期に、かつ頻繁にブランドを批判してスレッズから追い出す必要がある」と書いている。
しかし、ファッションと美容ブランドの巨大な存在はインスタグラムですでに確立されているため、ブランドらはすぐにスレッズで居場所を確保した。7月6日午前2時(米国東部夏時間)までに、レアビューティのフォロワーは4万800人を超え、同日の午後5時には18万1000人に達した。同じ時間内で、グロシエ(Glossier)は1万5700人からから8万2600人に、セフォラは4万4800人から34万3000人に、アルタビューティは1万5700人から10万5000人に増加した。
ユーザー数が急増しているにもかかわらず、スレッズは、いまのところブランドにとっては実験にとどまっている。
「当社は今日スレッズに参加したばかりで、スレッズでアクティベーションするかどうか、またその方法についてはブレインストーミングをしているところだ」とオカモト氏は述べた。
[原文:Instagram’s Threads is here — and so are the brands]
LIZ FLORA(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)