美容業界の ゲーム 進出が本格化。女性プレイヤーのためのライブゲームトーナメントが開催へ【ビューティ&ウェルネスブリーフィング】

DIGIDAY

今回は、ベネフィット・コスメティックス(Benefit Cosmetics)がどのようにして女性ゲーマーをサポートしようとしているのかを紹介する。そのほかに以下の話題も取り上げる。

・ヘレン・オブ・トロイ、カールスミスを買収
・リバイブのネクストドアを使った広告実験

ベネフィットは女性参加者のみを対象にゲームトーナメントを主催

美容業界のゲームに対する関心が高まり、製品コラボレーションやアクティベーションが増え、広く存在感が増すにつれて、ブランドはコミットメントを柔軟に発揮する大きなチャンスを求めている。

5月7日、ベネフィット・コスメティックス(Benefit Cosmetics)は、ゲームプラットフォームのRivslで2022年を通して開催される、9つのビデオゲームトーナメントを開始。9つのトーナメントの賞金総額は2万5500ドル(約331万円)。美容ブランドが主催する初の女性向けゲームトーナメントであり、参加者は女性に限定されている。そのうち3つのトーナメントはビデオゲーム会社のエレクトロニック・アーツ(Electronic Arts)と提携しており、女性参加者48人が招待され、主にゲームのエーペックスレジェンズ(Apex Legends)をプレイする。ほかの6つのゲームはアマチュアやカジュアルゲーマーを歓迎しており、ベネフィットでは50人から100人のプレイヤーを想定している。また、トーナメントはEAスポーツ(EA Sports)とライバルゲーミング(Rival Gaming)のほか、ふたつのゲーミンググループと共同で開催される。そのゲーミンググループとはブラックガールゲーマー(Black Girl Gamers)とザ・ゲームハーズ(The GameHers)で、招待制ゲームの参加者としてそれぞれのコミュニティのメンバーを勧誘するという責任を担っている。

このトーナメントシリーズは、2020年に開始したベネフィットのゲーム・フェイス(Game Face)プログラムの延長線上にある。このイニシアチブは、Twitch(ツイッチ)のストリーマーが無料の製品を受け取ったり、ベネフィットのTwitchチャンネルに出演したり、そのほかの特典を楽しんだりといった、継続的なインフルエンサープログラムだ。2021年にベネフィットは独自のTwitchライブストリーミングチャンネルを開設し、サンフランシスコの本社にゲームのライブストリーミングを行う専用スペースを立ち上げている。

「Twitchのライブストリーミングは、インスタグラムやTikTokにすらない親密さをもたらすフォーマットだということを悟った。ストリーマーとして、自分のファンとつねに会話をすることができる」とベネフィット・コスメティックスのマーケティングおよびコミュニケーション・シニアバイスプレジデントのトト・ハバ氏は語る。

Z世代にとってビデオゲームは人気娯楽の第1位

ハバ氏によれば、ベネフィットの参入を促したのは、ゲームが若い消費者に人気のある社会的活動だという事実だ。ストリーミングとゲームに関する2021年のデロイト(Deloitte)のレポートによると、Z世代の回答者の26%が、ビデオゲームをすることがお気に入りのエンターテインメント活動第1位であると答えたのに対し、ミレニアル世代でそう回答したのは10%だった。ハバ氏とベネフィットのチームは、このトーナメントシリーズへの関与を、女性ゲーマーのために「大きな変化をもたらす」チャンスとしてとらえ、個々のスポンサーシップを超えてより積極的に活動する機会とみなしている。

ベネフィットが関わっているゲーミングプラットフォームはTwitchだけではない。2020年以降、ベネフィットはFacebookのライブストリームゲームとYouTubeのゲーミングプラットフォームで独占的に配信しているゲーマーと連携している。そして中国では動画プラットフォームのビリビリ(BiliBili)を利用している。ベネフィットは、インスタグラム、TikTok、Twitterの各チャネルで、このトーナメントをクロスプロモーションする計画だ。トーナメントで優勝した人は、ベネフィットがソーシャルメディア上で再活用できるように、その体験のベストクリップを提出するよう求められる。

ゲームでの取り組みを製品販売につなげるブランドも

ベネフィットは、ゲームの取り組みをオフラインや製品中心の販売機会に直接結びつけてはいないが、ほかのブランドはそうしている。1月には、ネイルポリッシュブランドのOPIがXboxと提携してネイルポリッシュコレクションを発売、2019年にはMACコスメティックス(MAC Cosmetics)がTwitchConのスポンサーとなった。MACは2021年に、Xboxのゲーム「HALO」、「Sea of Thieves」、「Psychonauts」のキャラクターをもとにした4つのルックを作るためにメイクアップアーティストを参加させている。

「子どもたちにとって、仮想世界に住み、買い物をし、自分の宇宙を持ち、そこで誕生日パーティをするというのはまったく自然なことなのだろう」とMACコスメティックスのチーフグローバルマーケティングオフィサーであるエイダ・ムーダシュル=ルボワ氏は、過去のインタビューで語っている。「(ゲーミングは)創造性、自己表現、なりたい自分になるためのエンパワメント、そしてコミュニティの形成に最適な領域なのだ。これはMACが支持することであり、だからこそ私たちは興味を持っている」。

e.l.f.コスメティックス(e.l.f. Cosmetics)も2021年に独自の専用Twitchチャンネルを開設し、TikTokでのデジタルアクティベーションを活用してそのチャンネルを告知した。シャーロット・ティルベリー(Charlotte Tilbury)とニックス・プロフェッショナル・コスメティックス(NYX Professional Cosmetics)は、2021年にそれぞれガールゲーマー・eスポーツフェスティバル(Girlgamer Esports Festival)とeスポーツ団体ディグニタス(Dignitas)のスポンサーとなった。

デロイトは2022年のデジタルメディアトレンドレポートで、ゲーム内のライブイベントはブランドに独特な機会を提供すると指摘している。米国のゲーマーの25%近くが、昨年1年間でゲーム内イベントに参加したと回答しているが、参加者の最大のデモグラフィックはミレニアル世代と男性だった。さらにゲーム内ライブイベントに参加した人の82%が、そのイベントをきっかけになんらかの購入を行っている。65%がデジタルグッズを、34%が物理的な商品を購入した、とレポートには記されている。

コミュニティの構築に力を入れる

しかしベネフィットが主に注力しているのは、コミュニティの構築だ。ハバ氏はゲーミングコラボレーションには大きな機会があると述べ、同ブランドは2020年にゲーム「どうぶつの森」のカスタムマーチャンダイズを制作している。グロシエ(Glossier)、P&G傘下のシェイビングブランドのヴィーナス(Venus)、ユニリーバ(Unilever)傘下のタッチャ(Tatcha)も、2020年に「どうぶつの森」のゲーム内プロモーションを行っている。「どうぶつの森」は2020年4月にゲームの最新版が発売され、ブランドが文化的に重要な瞬間に参入する機会をそこに見出したことから、2020年のパンデミックで注目に値すべきヒットとなった。

とくにライブストリーミングゲームプラットフォームは、インスタグラムやFacebookと同じ方法でエンゲージメントを測定しないため、ハバ氏はTwitchやゲーム空間における同ブランドの成功を評価する測定ツールは比較的新しいものだと認めている。エンゲージメントのレベルを解釈する手段としてベネフィットが実際に見ているのは、とくにそのチャンネルの視聴時間だ。トーナメントでは重要なパフォーマンス指標として、ローンチ時間だけでなく、視聴レベルにも注力する。

クリエイティブな方法で女性ゲーマーを支援

ベネフィットは、今回のトーナメントシリーズを主催するだけでなく、よりクリエイティブな方法で女性ゲーマーへの支援を表明することを目指している。Twitchのユーザーは、お金を払ってストリーマーと契約し、限定コンテンツやそのほかの特典にアクセスすることができる。またサブスクリプションを購入し、他人にプレゼントすることも可能だ。ベネフィットではそれを念頭に置き、公式なパートナーシップを結んでいないTwitchストリーマーのサブスクリプションを購入して、それらのストリーマーが自分のフォロワーに無料で配れるようにするという方法を取った。ハバ氏いわく、それはTwitchストリーマーに収入を得ながらフォロワーを増やしてもらい、ベネフィットのゲーミング分野へのコミットメントを認識してもらうための施策だという。

「この分野にいればいるほど、これらのクリエイターとそのキャリアをサポートすることの意味を学ぶことができる。メイクアップの枠の外側にある、こうしたユニークな事柄に我々はメリットがあるとみている」とハバ氏は語る。「私が(このトーナメントに)大いに望んでいることは、参加する人々や見ている人々に、女性でもこんなことができるスペースが存在するのだということを知ってもらうことだ。彼女たちはゲームをすることを愛し、それをキャリアにすることができるのだ」。

ヘレン・オブ・トロイ、カールスミスを買収

4月25日、ヘレン・オブ・トロイ(Helen of Troy)は、ドライバー(DryBar)、レブロン(Revlon)のホットツール、スタイリングツールのベッドヘッド(Bed Head)がすでに含まれている同社の美容ポートフォリオにヘアケアラインのカールスミス(Curlsmith)を追加した。

ヘレン・オブ・トロイのCEOジュリアン・R・ミニンバーグ氏は、「カールスミスは、戦略的にも財務的にもヘレン・オブ・トロイと非常に相性がよいと考えている」と書面で述べている。「この取引は、当社が価値を付加でき、拡張性のある事業プラットフォームを活用できるカテゴリーにおいて利益ある成長を加速させられるビジネスに投資するという、ヘレン・オブ・トロイの戦略を推進するものである」。

今回の9桁の取引は、カーリーでテクスチャーのある髪のケアという注目のカテゴリーにおける最新の動向である。ほかの最近の出来事としては、ミエルオーガニックス(Mielle Organics)、ナイアラズナチュラルズ(Nyalah’s Naturals)、カールズ(Curls)など、テクスチャーのあるヘアに特化したブランドの幅広い資金調達があり、すべて2021年に行われている。オージー(Aussie)やオールドスパイス(Old Spice)といった昔から存在するマスブランドも、2022年1月からテクスチャーヘアに進出している。

注目すべきは、創業5年のカールスミスが、2021年1月に投資会社BFGパートナーズ(BFG partners)が主導するシリーズAの資金調達を発表しただけという点だ。カールスミスの創業者でCEOを務める大株主のマイケル・バースキー氏は、次に何をする計画なのかをまだ明らかにしていない。

リバイブがネクストドアと広告で実験

2021年12月から2022年1月にかけて、ラグジュアリースキンケアブランドのリバイブ(RéVive)はマルチチャネルのブランドアウェアネス・キャンペーンを実施したが、ターゲット広告の新たな実験パートナーに、ネクストドア(Nextdoor)が含まれていた。

ネクストドアは、近隣住民のために設計されたハイパーローカル・ソーシャルネットワーキング・アプリである。米国、英国、フランスなど11カ国、28万5000以上の地域に6600万人のユーザーを抱えている。リバイブのCEOエラナ・ドレル・サイファー氏によると、同ブランドの米国での卸売チャネルビジネスの50%は、ニューヨーク、ニュージャージー、コネチカットのトライステートエリアで行われているという。リバイブの冬の広告キャンペーンは、ワイルドポスティング(屋外でのポスターなど)、デジタル地下鉄広告、ダイレクトメールやeメールによるジオターゲット広告キャンペーン、そしてネクストドアのアプリで構成されていた。ネクストドアのアプリ内では、地域名や店舗所在地などで広告をカスタマイズすることもできる。広告掲載は、トップ記事の要約を見ている近所の人にリーチするためのアプリ内のメインフィードと、購入意思の高いユーザーがよく訪れるネクストドアのローカルマーケットプレイスである「Finds」というセクションで行われた。

ドレル・サイファー氏によると、リバイブの多面的なキャンペーンに関与した人の97%は、リバイブにとって新規顧客だったという。ネクストドアは、モバイル広告を見た人と、地元の小売パートナーを訪問した人の重複を追跡することができた。ネクストドアによれば、このアプリは、ユーザーがリバイブの広告を見た後、2021年12月と2022年1月にノードストローム(Nordstrom)、ブルーミングデールズ(Bloomingdale’s)、ニーマンマーカス(Neiman Marcus)、ブルーマーキュリー(Blue Mercury)といった小売店への来店を9万2000件増加させることができたという。

「ネクストドアのテクノロジーと郵便番号による特定性によって、売上が好調な地域や新しい消費者を開拓しようとしている地域など、あわせて10の地域に焦点を当て、全国的に広告を出すことができた。どちらのシナリオでも、ブランドの認知度を高めることが目標だった」とドレル・サイファー氏は語った。

いくつかの限界はある。ネクストドアは、それらの広告から発生した店頭での購入による売上を追跡することはできなかった。しかしリバイブは、広告のアプリ内エンゲージメントを追跡した。ネクストドアによれば、オラクル(Oracle)傘下の広告分析会社モート(Moat)のデータを引用すると、リバイブのD2Cウェブトラフィックビューはベンチマークよりも29%高く、アプリ内ビューはベンチマークよりも34%高かったという。ウェブとアプリ内の両方の環境において、リバイブのキャンペーンは合計で露出時間が4時間となった。

[原文:Beauty & Wellness Briefing: Benefit Cosmetics hosts live-gaming tournament for female players]

EMMA SANDLER(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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