Amazon 出品者、7月プライムデーの焦点は「収益性」:利益減少と不透明な景気から学んだもの

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Amazonの出品者は、今年のプライムデー(Prime Day)がより普通のものであることを願い、どの特典を提供するかを決定するうえで収益性を優先している。

過去2回のプライムデーはサプライチェーンの問題、激しいインフレ、Amazonからの割増料金によって何度も邪魔された。そして、これらの課題のすべてが緩和されたわけではないが、出品者は過去2年間に需要計画をより的確に行えるようになった。これらの出品者は従来ほど多くの過剰在庫を抱えているわけではなく、パンデミックの制約が薄れたことで、サプライチェーンにも余裕が生まれた。一方で、配送コストは国内外ともに劇的に低下した。

しかし、プライムデーを控えた消費者の需要は引き続き懸念材料であり、出品者はいまだ人々がお金を何に使いたがっているかを見極めようとしている。一部のブランドはプライムデーにセールを行わず、プライムデーまでの数日間に割引のプロモーションを行うことで、自社が目立つことを狙っている。ほかのブランドは、プライムデーに向けて、特定の商品のマージン構造をより精査しているブランドもある。

配送コストの管理に注力

Amazonは2023年のプライムデーの日付を公表していない(*)が、この2日間のショッピングの祭典は通常、7月に行われる。昨年のプライムデーは7月12日と13日に行われ、スナックやペーパータオルなど家庭用必需品が特によく売れた。

* この記事公開後に、プライムデーの開催日時は7月11・12日に開催することが発表された。

粉末スーパーフードブランドのアップリフトフローラ(Uplift Florae)の創業者で、収益促進代理店のクランチグロース(Crunchgrowth)のCEOを務めるフィル・マシエロ氏によると、パンデミックによってAmazonの出品者は在庫のフローを的確に管理することと、配送コストの管理に注力するようになった。これが、今年のプライムデーに向けた出品者の準備に役立っている。

「この数年間は、出品者にとって厳しい時期で、利幅は縮小された。まずパンデミックがあり、人々は利益を出すために苦労してきた。燃料費、課税、そのほかあらゆる種類の料金が課された。その多くがなくなった」と、マシエロ氏は語る。

Amazonは昨年4月、3P(サードパーティー)の出品者に対して、それまでの料金に加えて燃料とインフレのコストとして5%の追加料金を課し、FBA(フルフィルメントby Amazon)が高価になったことへの懸念をさらにつのらせた。マーケットプレイスパルス(Marketplace Pulse)のデータによると、Amazonは2020年からフルフィルメント手数料を30%以上も引き上げてきた。しかしマシエロ氏から見ると、出品者は次のプライムデーについて前向きな心境になっているようだ。

「人々はコスト設計ができるようになった。時間がとれれば配送料は安くすることができるからだ。このため、前もって計画すれば、商品について大きな割引を行い、セルスルーできる。そして、今年はこれまでと比べて、準備が整っている出品者が多いようだ」と、マシエロ氏は語る。

昨年よりも積極的なプロモーションを計画

今年も大幅な割引が予測される。大手から中堅の1P(ファーストパーティー)ベンダー63社を対象とした出品者調査によると、その65%は今年のプライムデーで昨年よりも積極的なプロモーションを行う予定だ。CPG(消費者向けパッケージ商品)および一般雑貨の販売業者を対象としたこの調査は、eコマースに特化した調査企業であるストラタブリィ(Stratably)が5月半ばに実施する週次の投票結果である。

しかし、ストラタブリィの創業者兼CEOのラッセル・ディーリンガー氏によると、ほとんどのブランドはすでに、今年後半にさらに積極的なプロモーションを行うための準備を行っているという。「これらの企業は、値上げによって、今年は昨年よりもより積極的な活動を行うための十分なマージンを確保しており、今年後半がより競争が激しくなることを予測している」と同氏は述べている。同氏は、現状が一般雑貨のブランドにとってより厳しい環境であり、これらのブランドはプライムデーを、「どんな形であれ成長する素晴らしいチャンス」と見ていると付け加えている。

データ分析ツール開発のプロフィテロ(Profitero)で最高マーケティング責任者を務めるマイク・ブラック氏によると、1Pベンダーは特に、利益を維持しなくてはいけないという非常に強いプレッシャーのもとにいる。「これらのベンダーは、割引を行うことと、プライムデーに参加することを両立するという難事を成し遂げようとしている。これに商品の収益性を維持することが加わる。これは、この1年半に製造コストの激しいインフレがあり、今でも問題になっていることから困難だ」と、同氏は付け加えている。1Pの出品者は、市場に価格戦争を引き起こさないよう、プライムデーにプロモーションする商品を慎重に選択すると、同氏は予測している。

また同氏は、ブランドのオウンドチャネルや、ソーシャルメディアによる、早期プロモーションのトレンドも予測している。

セールを一切しないブランドも

あるペットケアカテゴリーの1Pおよび3Pベンダーは、自社ブランドが、プライムデーに先駆けてサードパーティーマーケットプレイスで割引を行うだけで、プライムデーにはセールやプロモーションをいっさい行わないと、匿名で語った。その経営幹部によると、プライムデーが成功するには多くの場合にプロモーションや広告に多額の投資が必要とされるため、「プライムデーは常に損失で終わり、利益が出たことはなかった」のだという。

「我々は、自社のポートフォリオにおいて、どのアイテムがプロモーションでよい結果になり、そこからハロー効果が生まれるかについて、優れたデータを保有している。そのため、そのポートフォリオの中からアイテムを選択し、プライムデーまでの約1週間のあいだは、正確に的を絞ったプロモーションを行う」と、その幹部は語った。また、このブランドは、自社の事業の新しい部分から、いくつかのアイテムをプロモーションするかもしれないという。

「ベンダーセントラルについては、当社はかなり控えめに行動する。特別なセット商品や特殊な商品は出品するが、自社でもっとも売れている商品をプロモーションすることはない。トラフィックにまかせるだけで、十分に結果が得られる。しかし、知名度と認知度を高めるために、イベント前後には広告宣伝費を増やすつもりだ」とその幹部は述べた。

需要への対応とビジネスを両立

大まかに言えば、出品者はプライムデーに適切なマージンを得るための最良の方法を習熟してきたと、マシエロ氏は述べている。同氏は、プライムデーにシーツや枕ケースを売り出そうとしているホームテキスタイル業界のクライアントの例を挙げた。「この会社は、パッケージの変更、配送の変更、または大量の買い付けを行うことで、配送料を10〜15%下げ、コストの一部を削減した」と、同氏は述べている。

マシエロ氏によると、小売業者は、顧客がプライムデーのお買い得品に使う余剰資金があるかどうかを懸念しているという。「インフレか、景気後退か、または株式市場で損失を出す懸念か、どのような理由にせよ、人々はこのようなセールを利用するほど十分な可処分所得がないかもしれない」と、同氏は付け加えている。

究極的に、ブランドは「顧客をインフレから解放し、顧客が望んでいるものを提供することと、ビジネスと収益性も実現しようとすること」をうまく両立しようとするだろうと、ブラック氏は述べている。

[原文:Amazon Briefing: Facing a profit crunch and uncertain economy, sellers are shaking up their Prime Day strategies]

Vidhi Choudhary(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)

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