ロサンゼルス市警察が職務質問で市民のSNSアカウントを収集していたと判明

GIGAZINE
2021年09月09日 14時00分
メモ


by Chris Yarzab

ロサンゼルス市警察(LAPD)が、逮捕や犯罪で告発されていない一般市民に職務質問を行った際に、TwitterやInstagramなどのSNSのアカウントについて書類に記入させていたと、イギリスの大手一般紙・The Guardianが報じています。

Revealed: LAPD officers told to collect social media data on every civilian they stop | Los Angeles | The Guardian
https://www.theguardian.com/us-news/2021/sep/08/revealed-los-angeles-police-officers-gathering-social-media

LAPDの警察官が一般市民に職務質問を行う際に記入する書類のコピーによれば、警察官は一般市民のFacebook、Instagram、TwitterなどのSNSアカウントを、市民の経歴情報とともに記録するよう指示されていることが明らかになりました。さらに内部メモによれば、LAPD警察長であるマイケル・ムーア氏は「捜査・逮捕・起訴に使用するためにデータ収集が重要である」として、調書に完全に書き込まれたかどうかを確認するように指導していたそうです。

書類のコピーを入手した非営利団体のBrennan Center for Justiceは、「警察が正当な理由なく大規模な監視を行い、市民の自由を脅かしている可能性」を指摘し、懸念を表明しました。Brennan Center for Justiceの副代表であるレイチェル・レヴィンソン=ウォルドマン氏は「警察がこうしたSNS上の個人識別情報を手にすることは本当に危険なことです。集められた情報はおそらく、広範な目的に用いられるデータベースに保存されていることでしょう」とコメントしました。

by Chris Yarzab

前警察長であるチャーリー・ベック氏のメモによれば、職務質問の書類にSNSアカウントの記入欄が追加されたのは2015年のこと。メモには「ニックネームや通名と同じように、SNSでその人物が使っているオンライン上のペルソナやアイデンティティは(中略)捜査に大いに役立つことがある」と書かれていたそうです。

2020年10月、検察当局は、「職務質問の書類を基にして、一般人をギャングのメンバーと誤認した」と非難し、LAPDの警備部本部中隊所属の警察官3人を刑事告発しました。警備部本部中隊は黒人のドライバーを停車させる割合が不自然に高いといわれており、停車させた黒人やラテン系住民が特に職務質問カードに記入させられていると考えられます。レヴィンソン=ウォルドマン氏は「人種差別を行っていると批判が集まっている部署が一般市民のSNSアカウントを大々的に収集しているという事実は問題です」と述べました。

また、警察がSNSのユーザー名を基に、個人のオンライン上の友人も監視対象に入れることができるため、プライバシーに関する懸念はさらに高まります。LAPDの情報収集を危険視する団体「Stop LAPD Spying Coalition」のハミッド・カーン氏は、警察官がニセのSNSアカウントを作成し、捜査対象となるグループに潜入する可能性も指摘しました。

by shay sowden

さらに、職務質問の書類には社会保障番号を記入する欄もあったとのこと。この社会保障番号はアメリカ国民各人に割り当てられるIDナンバーで、個人情報に直結するもの。Brennan Center for Justiceによれば、警察官は「連邦法に基づいて、市民は社会保障番号を含む情報を提供しなければなりません」と職務質問の対象に説明しているとのこと。これについて、ロヨラ大学法学部のキャスリーン・キム教授は「個人が地元の警察に社会保障番号を開示することを義務付けるような法律があるとは知らなかった」と述べています。

Brennan Center for Justiceは、職務質問の書類でSNSアカウントや社会保障番号まで記録するのは、黒人差別への抗議運動「ブラック・ライヴズ・マター」のデモを監視するためだと指摘。LAPDが民間のSNS分析企業「Geofeedia」を通じてブラック・ライヴズ・マターや左派系抗議活動に関連するツイートやハッシュタグをチェックしていたと、Brennan Center for Justiceは主張しています。

by Chris Yarzab

加えて、Brennan Center for Justiceは「LAPDが2021年から、SNSの追跡などを行う企業・Media Sonarのソフトウェアを購入するために7万3000ドル(約800万円)の予算を計上した」と報告しています。レヴィンソン=ウォルドマン氏は「麻薬や暴力、武器のスラングを検索して把握するため、Media Sonarのシステムを使うのでしょう。しかしSNS上で使われているスラングが誤解されたり、現地のグループや言語に関する情報が欠けているのではないでしょうか」と危惧しています。

LAPDはThe Guardianの取材に対して「職務質問の書類の方針は更新中です」と答えたそうですが、詳細は明らかになりませんでした。また、The GuardianはLAPDとの関係について、Media Sonarにも問い合わせましたが、回答は得られなかったそうです。

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