2023年の「最優先事項」、進化を続ける TikTok がさらに台頭か:エージェンシー各社がフォーカスするのは?

DIGIDAY

不安的な経済による不透明感のなかで、2023年のスタートが切られた。そうしたなか、マーケターたちが今年の優先事項として目を向けているのが、デジタル動画、リテールメディア、ソーシャルメディア、そしてメタバースだ。

各種予測によれば、ストリーミングとデジタル動画と同じく、ソーシャルメディア、とりわけTikTokの成長が見込まれている。総合的に見て、ソーシャルメディアも回復が期待されており、たとえわずかではあっても激動の2022年から脱しつつある。

今回、米DIGIDAYが取材を行った5人の専門家によれば、メディアバイヤーが関心を寄せているのは、やはり新興チャネル(メタバースおよびソーシャルメディアや、そのほかのコマースプラットフォームでのライブショッピングなど)だという。メタバース進出の試みは依然として実験的である一方、それがリテールに対して持つポテンシャルや、その没入型ストーリーテリングが消費者の心をつかむ可能性は十分にあると、一部のマーケターやプランナーは楽観視している。

WPP傘下・グループエム(GroupM)のデジタルおよびAI部門であるザクシス(Xaxis)でグローバルCEOを務めるジョン・ウィテセール氏は、次のように語る。「グループエムの年末リポートは、2023年における広告の成長率を5.9%と予測している。なかでも強いのがコネクテッドTV(CTV)とリテールメディアで、後者は米国内において最速で成長するデジタル要素となっている」

それではここからは、マーケターが今年注目する各チャネルを見ていこう。

成長維持を期待されるストリーミングとデジタル動画

ソーシャルプラットフォームをまたに掛けるCTVとデジタル動画は、今後も引き続き市場の成長を促す見込みだ。グループエムとマグナ(Magna)が立てる2023年の見通しは総じてポジティブで、その最大の成長要因はデジタル広告だ。2022年は一部のプラットフォーム(TikTok)が規制当局の調査に直面し、年末にはテック大手が大規模な人員削減を行ったが、2023年はソーシャルの復活が期待されている。

そうした不安要素の影はあるものの、世界全体のデジタル広告は8%成長して、5570億ドル(約73兆4100億円)に達すると、マグナは予測している。2023年の総広告売上の実に65%に相当する額だ。そして、この成長をけん引するのが、eコマースとメディア消費のデジタル動画へのシフトであり、2023年にこの急成長を遂げる広告フォーマットは、650億ドル(約8兆5700億円)の売上を達成すると期待されている。マグナは、CTVの利用とストリーミングの消費が継続していることを、「ロングフォームストリーミングの成長を促す追い風」だと指摘している

AI広告企業のアドルディオ(Adludio)でCTO兼データサイエンス部門の責任者を務めるイアン・リディコート氏も、この指摘に賛同する。「(CTVは)ストリーミングプラットフォームによるコンテンツ開発と消費者との直接的な関係を持ち続けることで、マーケターの関心もいっそう高まっていくだろう」

とりわけストリーミングサービスに関しては、広告主が業績拡大を見込める余地がいまなお残っている。「Netflixやディズニープラス(Disney+)の広告付きプランのローンチが示しているように、飽和からほど遠い状態にあるのが、現在のCTV市場なのではないか」と、マーケティング企業のRTBハウス(RTB House)でアッパーファネルソリューション部門の責任者を務めるマテウシュ・イェンドローカ氏は話す。同氏によれば、オンデマンドコンテンツへのこの切望は今後も大きくなっていく見込みだという。

「マーケターは以前から、モバイルだけでなくCTVのOTT(インターネット配信)動画にも注目してきた」と、イェンドローカ氏は語る。「このプレミアム体験が提供するのは、リニアTVバイイングに代わる、より測定可能でアドレサブルな手段だ。これに大規模投資を行うブランドが増えているのも当然だろう」

ソーシャルメディアチャネルはどこへ向かうのか?

ソーシャルプラットフォームに注がれる広告費に関しては、2023年もTikTokへシフトしていく傾向は続くと、専門家たちは確信している。インフルエンサーエージェンシーのビレッジ・マーケティング(Village Marketing)創業者であるビッキー・シーガー氏にいわせれば、クライアントはいまも広告費の大部分をインスタグラム(Instagram)とFacebookに投じている。しかし一方では、TikTokでの実験が終わり、ほかのプラットフォームからTikTokへの広告費の転換というシフトも起こりつつあると指摘する。

「全クライアントのデータを見て感じるのは、インスタグラムから引き揚げられた広告費がTikTokに投入されているということだ。これが最大のシフトだ」と、シーガー氏は語る。「これが最もわかりやすい答えだ」

YouTubeやPinterest(ピンタレスト)といったほかのプラットフォームへの支出も安定を維持しているが、とりわけクリエイターコンテンツへの支出という点では、成長の速度でTikTokにはかなわない。「2023年は12カ月間の戦略にコミットし、(ビレッジ・マーケティングが)行っていることを実際に拡大する1年になる。インスタグラムにも見切りをつけたわけではない。とくにリールは、インスタグラム戦略の一角として、その重要さを増しつつある」と、同氏は付け加える。

マグナによる2023年の予測にも、TikTokの目覚ましい勢いは表れている。ソーシャルメディアの広告売上は2022年、かつてなかった逆風に見舞われた。そうしたなかにあって、広告売上の横ばいや減少を記録する競合他社を尻目に、成長を遂げた唯一のプラットフォームがTikTokだった。

TikTokがさらに台頭する年になるか

小売に対して持つポテンシャルも、TikTok台頭の追い風になっているといえるかもしれない。TikTokは近年、ショッパブル広告や「ショップ・ディス・トレンド」といった新機能、クリエイターやコマース向けのソリューションを次々に導入してきた。かつてFacebookとインスタグラムに依存していたブランドが、2023年はTikTok広告で大成功を収めるといった光景を、目の当たりにするかもしれない。マーケティングエージェンシーのEcommerceIntelligence.com創業者であるライアン・ターナー氏は、そう話す。

「2023年は大規模なシフトが起きて、ソーシャルメディア広告費がそのほかのチャネルやネットワークからTikTokへと移動すると、我々はにらんでいる。とくにその確率が高いのが、eコマースブランドだ」と、ターナー氏は話す。「低価格とコンテンツのバイラル性により、購入時のCPMとCPAはかなり低くなる可能性がある(中略)TikTokの広告情勢はまだ初期段階にある。そのため、かつて広告主がFacebookやインスタグラムの最初の数年に享受した利益を数多く提供してくれる」

広告パーソナライゼーションプラットフォームのクリンチ(Clinch)でCEOを務めるオズ・エツィオーニ氏は、ソーシャルメディアは2023年も、アドテクサービスを拡大しながら、プログラマティック広告への進化を続けるだろうと話す。「ソーシャルメディアのプランニングおよび購入プロセスは、プログラマティック化がいっそう進むのではないだろうか」と同氏はいう。「サードパーティ・ソリューションは基礎となる構成要素を構築し、ソーシャルメディアプラットフォーム間の標準的な分類法を定義する。そうすれば、ワークフローが統一されて、全当事者にとってプロセス全体がもっと容易になるのではないだろうか」

メタバース、ライブショッピングが軌道に乗る可能性は?

メタバースや没入型コンテンツ、加えてライブショッピングなどのコマーストレンドが軌道に乗る年が2023年かどうかということについて、答えを出すのは時期尚早だ。とりわけライブショッピングについては、ここ何年かで中国で人気になったが、米国におけるポテンシャルに対しては入り混じった感情が露呈されている。2022年、ブランドはライブショッピングブームの到来を確信し、各社がその実験を望んだが、彼らの期待に反して、ライブショッピングはソーシャル戦略の一角を占める存在へはまだ進化していないと、シーガー氏は話す。

「アジアが先行していること、米国がその後に続くことは、見ていてわかった」と、シーガー氏はいう。「そしてホリデーシーズンを迎えるころには、どこのギフトガイドもライブで行われると予測していた(中略)ところが、どこもライブショッピングを当たり前のようにソーシャル戦略に取り入れているかというと、そんなことはまったくない」

理由のひとつに、クリエイターが(テレビショッピングの)QVC的な販売アプローチを好んでいないことが挙げられ、その結果、採用に時間がかかっていると、シーガー氏は付け加える。TikTokライブ(TikTok Live)とYouTubeライブ(YouTube Live)がライブショッピングへ進化するのではと、同氏はにらんでいたが、いまのところ、どちらもその方向には進んでいない。

メタバースは現在のOOH広告の用途を拡大する一手段にも

ところが、パフォーマンスマーケティングエージェンシーのワンダーカインド(Wunderkind)で最高売上責任者を務めるリチャード・ジョーンズ氏の見方は違う。ライブコマースにはまだポテンシャルが残っていると、同氏は確信している。ライブコマースは、「オンラインやソーシャルメディアでショッピングしている消費者や、メタバースに高い関心を示している消費者をブランドがマネタイズできる、最も手っ取り早い方法」になり得ると、ジョーンズ氏はいう。

メタバースといえば、2022年は、仮想現実(VR)プラットフォームにキャンパスを建てたり、消費者向けの没入型体験でブランドと提携したりといったように、多くの大手持株会社やメディア企業がメタバースでさまざまなコンテンツのテストを行なった年だった。なかにはこれを、クライアントをメタバースに誘導しやすくする一手段と見ているエージェンシーもあるが、今後のそのかたちについては、いまも議論が交わされている。

電通のソリューションおよびイノベーション担当バイスプレジデントを務めるバル・バカンテ氏は以前、各クライアントに適した体験を創出することが電通の目標だと語っている。「私は実験の必要性を固く信じている」と、同氏はDIGIDAYに述べている。「我々自身が遊び、探り、試し、成功し、失敗する。これをせずして、クライアントにアドバイスなどできるはずがないではないか」

メディアエージェンシーであるエイジェンシ(Eidgensi)の共同創業者で、戦略担当ディレクターのポール・ディモック氏は、メタバースは現在のOOH広告の用途を拡大する一手段になるかもしれないと話す。たとえば、没入型ストーリーテリングと結合するデジタルオーディオなどのデジタルOOHキャンペーンもそのひとつだ。

「萌芽期であるメタバース環境内で、DOOHスクリーンがユーザーをエンゲージできることがすでにわかっている。現実世界では、埋め込みQRコードや、ビジュアルが魅力的なクリエイティブによってDOOHスクリーンを活用すればNFTを活性化できる」と、ディモック氏は語る。「こうした環境のクリエイティブの果てしない可能性が意味するのは、全チャネル間の密接したカスタマージャーニーの創出に役立つインタラクティブな没入型コンテンツで、オーディエンスをエンゲージできるということだ」

[原文:Agencies plan to focus on TikTok, among other channels, in 2023

Antoinette Siu(翻訳:ガリレオ、編集:島田涼平)

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