EC事業者の リテールメディア 参入を牽引する「Rokt」とは何者か:Rokt クレイグ・ガルヴィン氏×電通グループ 青木圭吾氏

DIGIDAY

データプライバシー規制やサードパーティCookieの問題など、デジタル広告が大きな転換期を迎えているなかで、小売業者やEC事業者などが自社の持つファーストパーティデータを活用し広告を配信する「リテールメディア」が存在感を高めている。とくに、アメリカでは大手リテーラーの新たな収益源とされており、広告主およびエージェンシーからも注目を集める。

そんなリテールメディアの成長を支え、グローバルで参入企業を支援してきたのが、eコマーステクノロジーのソートリーダーであるRokt(ロクト)だ。同社は現在、日本市場においてもEC事業者のリテールメディア参入を推進、リテールメディアの浸透・構築に取り組んでいる。

「ブランドが理解すべきなのは消費者の心の変化であり、何を求めているのかを踏まえた施策。データプライバシー規制があろうがなかろうが、今の時代においては、興味や関心が高まる瞬間に、その興味関心にしっかりと合った広告を届けることが必要だ」と、Roktとのパートナーシップを推進してきた電通グループの青木圭吾氏は、同社と提携する理由を語る。

本記事では青木氏と、Roktのチーフ・レベニュー・オフィサーを務め、グローバルパートナーシップを担当するクレイグ・ガルヴィン氏の対談を通して、リテールメディア戦略の重要性をひもといていく。

価値ある広告はライトタイミング・ライトプレイス・ライトパーソンが揃ったときに生まれる

DIGIDAY編集部(以下、DD):この数年、データプライバシー規制に対する動きが活発化しています。デジタル広告の現状をどう見ていますか?

青木圭吾(以下、青木):電通グループに在籍して25年ほど経ちますが、この10年ほどのあいだで、我々は非常に大きな問いを突きつけられていると感じています。それは「デジタル広告において最適なターゲティングとは何か」ということです。

「広告」というプロダクトは本来、広告主やユーザーにとって非常に有益なものであるはずです。しかし、現在のデジタル広告においては、パブリッシャーおよび広告主とユーザーとのあいだで、広告の受け止め方に明らかな温度差がある。広告を発信者側の意図に沿って正しく届け、それをユーザーが好意的に受けとる方法、そこに大きなチャレンジがあると考えています。

青木 圭吾/株式会社電通グループ 電通イノベーションイニシアティブ エクゼクティブ・ディレクター。1998年入社。2012年より、海外の優れたマーケティングテクノロジー企業とのパートナシップを通じて、日本市場の顧客に対する新しい価値を提供する事業開発・パートナーシップ開発を行う。Roktとは2017年に出会い、それ以来パートナーシップを継続中。

DD:それは何故なのでしょう。また、どんな打ち手が考えられますか?

青木:これはデジタルに限らずですが、最も広告価値の高い状況が生まれるためには、「ライトタイミング、ライトプレイス、ライトパーソン」を、しっかり見定めることが必要だと考えています。それを外してしまうと、広告は情報ではなくノイズになってしまう。

とくに、デジタル広告の主戦場となるPCやモバイルのディスプレイというのは、とてもパーソナルなスペースです。そうなると私自身もそうですが、ユーザーとしてはより自分に最適化された情報であってほしいと感じるものです。

そのような意識の変化を受けて、一律的な情報を広告というフォーマットで押しつけるのではなく、ユーザーの情報受容度が高まっているモーメントで、そのユーザーの興味や関心に沿う広告を出し分けることが、とくに求められていくはずです。

個人情報保護法の厳格化に伴い、テクノロジーにおける「データプライバシー」にかかわる議論は大きなトピックスになっていますが、それにかかわらず、我々がマーケターとして把握しなければいけないのはユーザーの心の変化だと感じています。その変化に対応し、広告主にとってもユーザーにとっても価値のある情報伝達の手法を実現するためのテクノロジー、デジタル施策が必要になってくると考えています。

クレイグ・ガルヴィン(以下、クレイグ):大いに同意します。重要なのは「ユーザーにとってメリットがあるかどうか」。世界的に「リテールメディア」への関心が高まっているのは、まさにこういった背景からだと言えます。

ECサイトにおけるユーザーのモーメントをどう捉えるかが重要

クレイグ:リテールメディアの代表的な例として、顧客との直接の接点であるECサイトを広告の配信面として使用する「EC系リテールメディア」が挙げられますが、ユーザーがショッピングしているということは「買おう」という気持ちがあるわけで、購買意欲が高まっている瞬間です。

同時にリテールが持つファーストパーティデータをうまく活用することで、個々のユーザーに対してレレバンシー(関連性)の高い広告を見極めて提示する、ということが実現できるのが特徴です。ユーザーの買いたい気持ちに寄り添うように、ユーザーにとってメリットのある情報を広告として表示できれば、結果としてその広告は受け入れられやすいというわけです。

我々Roktでは、EC事業者の持つファーストパーティデータを活用し、ECにおけるカスタマージャーニーの最終段階である購入完了画面、つまりユーザーの購入意欲が最も高まっているタイミングに、機械学習を用いて買い物客についての分析をリアルタイムで行い、一人ひとりの消費者にとって関連性の高い広告を提示します。こうして、ユーザーが広告に好感を持つ瞬間を作り出しています。

青木:ブランディングにおいては、マーケティング・サイエンスの教授であるバイロン・シャープ氏が著書で紹介している「メンタルアベイラビリティ(思い出してもらいやすさ)」「フィジカルアベイラビリティ(買い求めやすさ)」といった概念があります。

ECサイトで買い物をしているユーザーの心理、モーメントを捉えることによって、「フィジカルアベイラビリティ」は大きく引き上げることが可能です。広告の提示をよいタイミングで行うことで、単純に認知をとるだけではなく、商品のトライアルをしていただくなど、ユーザーがブランドに対してより深くエンゲージするきっかけを創ることもできるのです。

たとえば、Roktの広告フォーマットがピザのデリバリー注文アプリでよいパフォーマンスを出していると聞き、非常に面白いと思いました。そもそも我々がピザを注文するときを考えてみても、悲しい気持ちでオーダーする人はいないと思うんです。家族や親しい誰かと楽しい時間を過ごすために注文する、そんな風に気持ちが高揚するようなシーンで、自分自身にとって最適な情報(広告)の提示があると、そのオファーに対する好感が高くなる。これは、毎日購入する日用品などの消費財の購入時には生まれませんよね。

チケット販売においても同様で、大好きなアーティストのチケットを購入したら、その瞬間から非常にワクワクする気持ちが沸き立ってくるものです。そこに、たとえばコンサート会場付近のホテルの宿泊割引に関する広告を提示すると、やはり受け入れられやすい。Roktは、ユーザーの幸せを倍増させるようなタイミングを捉えて、広告主からの情報の提示が可能になるわけです。

DD:リテールメディアの市場の動向はいかがですか?

クレイグ:堅調ですし、さらに加速しています。ユーザーメリットのある、受け入れられる広告であるということは、それだけ高い広告パフォーマンスを発揮できるということでもあります。つまり、最適なオファーを受けることができる消費者、広告収益を得たいリテール、高い広告効果を得たい広告主にとってメリットが大きい。三方良しの広告プラットフォームといえるのです。

リテールメディアにおいてグローバルでとくに強力なプレーヤーはAmazonですが、Walmart(ウォルマート)なども台頭しています。日本などにおいても、リテールメディアは影響力が増しており、多くの事業者が参入を進めています。もし私が広告主で、より広告の効率化を進め、ROIを改善したいと思うなら間違いなくリテールメディアに投資するでしょう。これは、世界的に見ても同様のトレンドなので、今後さらに拡大していくと踏んでいます。

クレイグ・ガルヴィン/Rokt チーフ・レベニュー・オフィサー。1997年、Yahoo!オーストラリア・ニュージランドに立ち上げから関わる。その後、オーストラリアでデジタルエージェンシーを設立し、大手飲料メーカーや自動車メーカーなどを顧客に持った。Roktには2022年1月から参加。

DD:Roktはとくにクライアントのどんな課題に対応できますか?

青木:今、広告の領域でマスメディア4媒体以外を「below the line」と呼びますが、この領域においてはデジタルやOOHなど、お客様に対する価値をどう作れるかが、大きな課題になっています。そこに対して、Roktは価値を出せるでしょう。

クレイグ:我々の強みは、まず「ファーストパーティデータの最適な活用」ができること。自社の持つファーストパーティデータのポテンシャルや活用価値を十分に認識できていない企業も少なくありません。有効にデータを活用すれば、企業・組織はUXを改善でき、ユーザーにとってよりよいサービスを提供できると同時に、ブランド価値を損なわずに広告収入を得られ、収益性の改善に貢献できるでしょう。

現在のデジタルマーケティング業界は、データプライバシー保護を重視する動きや、サードパーティCookieの利用制限など、ユーザーのプライバシーに配慮しながらマーケティング活動を行う必要があります。Roktを導入いただくことで、これらの難題にも適切に対処しつつ、ユーザーはもちろん、EC事業者、広告主にとっても最善の利益になっていく、という世界を実現しています。

デジタルリテールへの参入で拡大、今後は日本市場に強くコミット

DD:電通グループは、なぜRoktに注目したのでしょうか?

青木:Roktを初めて知ったのは、2017年でした。知り合いから紹介されて担当者の方とお会いすることとなったのですが、コンセプトが非常に面白かった。これは、リテールにおけるコンテンツディスカバリー広告だ、と。ユーザーがECサイト上で何かしらの購買活動を終えた段階で、最適な広告を提示するわけです。これは、既存の広告チャネルにはなかった非常に新しいアプローチでした。

当時のRoktは、日本ではまだ黎明期でしたので、パブリッシャーとのネットワーク作りを進めていく段階でしたが、むしろそのタイミングから一緒に取り組むことで、我々もクライアント様の成長をさらに支援できると考えました。そこでパートナーシップを組み、ビジネス開発からお手伝いするようになったのです。Roktのパブリッシャーとは「ECサイト」を指しますが、国内の有力ECサイト事業者を、電通グループのネットワークを通じて開拓していきました。

クレイグ:やはり、パートナーシップの鍵は、信頼できることに尽きます。我々が電通グループに抱いている信頼性はもちろんですが、同社には素晴らしいクライアント、パートナーがいる。広告主やEC系リテールメディアの運営会社は、電通グループに絶大な信頼を寄せているので、パートナーシップが組めるのはとても心強く感じます。我々は創業10年ほどの会社で、まだまだ若いため、電通グループとのパートナーシップはとても重要です。

DD:Roktは創業10年ほどになりますが、これまでの過程をどう振り返りますか?

クレイグ:創業以来、多くの変動がありました。たとえば、コロナ前にとくに注力していたのは旅行サイトやエンターテイメントにおけるチケット販売業の領域。しかし、コロナによってこれらの業界は大きな影響を受けました。それを機にデジタルリテールの領域を多角的に進めた結果、現在は多様な業界のECサイトとパートナーシップを構築でき、ビジネスを大きく拡大できています。

最近だと、Uberとのパートナーシップ締結が大きなイベントとなりました。この締結によって、UberのWebサイトおよびモバイルアプリにおける購入の瞬間に、さらなる収益性をもたらしています。Uberは広告事業の成長を、戦略的優先事項のひとつに位置づけており、Roktを導入いただいたことで収益向上に寄与できたと考えています。

DD:今後、日本ではどのような展開を想定していますか?

青木:電通グループ内では現在、リテールメディアの専門プロジェクトチームも組成され、実店舗の店舗データなど、さまざまなデータの活用に注力しています。リテール領域のクライアント様に対し、Roktの重要な立ち位置を示しつつ、多様なメディア広告施策とRoktのソリューションをいかに組み合わせ、全体のマーケティング戦略としてご提案していけるかが、電通グループにとっても大きなチャレンジになると考えています。

Roktのソリューションは、コンセプトだけでなく、結果も伴っている。これは、EC事業者や広告主に対しての一番の説得材料になります。

また、今後は日本国内でRoktがどのようにクライアント様のビジネスに貢献したかというケーススタディやノウハウを、Roktのグローバル側にも知見として還元して行くことができるのではないかと考えています。グローバル全体としてRoktのブランド価値を高めることも、電通グループの貢献できるポイントになりうると思っています。

クレイグ:我々は今、日本市場に強くコミットしようとしています。アメリカではある程度のポジションを確立しつつありますが、日本ではこれから大きな拡大を見据えている段階です。電通グループをはじめとしたパートナーとの協力関係を強化することはもちろんのこと、日本のチーム、リソースに関してもさらなる投資を続けています。

そのなかで試行錯誤しつつ、日本のEC市場に受け入れられる、さらによいプロダクトに成長させたいと考えていますし、各パートナー様と一緒に、短期的ではなく長期的な投資をしていきたいです。

青木:そうですね。米国と同様に日本国内でも大きく成長してもらえるよう、引き続き協働していきたいと思います。

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Written by DIGIDAY Brand STUDIO(海達亮弥)
Photo by 渡部幸和

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