Z世代 は自己表現を優先ではなく、最先端のトレンドに乗りたいだけだった【ファッションブリーフィング】

DIGIDAY

私たちはZ世代を誤解しているのだろうか?

Z世代のファストファッション中毒が話題になると、こうした疑問がよく生じる。この層はサステナビリティ志向のブランドを支援するなど、いわゆる価値観重視の買い物習慣を持っているにもかかわらず、ファストファッションブランドの中でもいち早く成功したブランド、シーイン(Shein)の数十億ドル規模の成功を支えているのもこの層なのだ。

一方、5月31日から6月2日かけて開催されたGlossyのファッション&ラグジュアリーサミットの参加者によると、個性と自己表現を優先するというZ世代の評判には誇張があるという。それ以前のあらゆる世代がそうだったように、今の10代や20代の若者たちの多くも、ただ流行の最先端を追い求めている。

その理由の一部にはTikTokの影響があるかもしれない。共通の認識として、毎日このプラットフォームをスクロールしていればつねに話題に参加することになる。そのTikTokからいったん離れるというのは、そのとき話題になっていることやハッシュタグ、サウンドなどを「知る」ことから疎外されるということだ。逆にTikTokのトレンドに乗れば、「いいね!」やフォロー、その他のエンゲージメントによって人気を得られる。

今回のイベントのスピーカーセッションや「新しいマーケティングの時代」に関するワーキンググループのディスカッションでは、ファッション、ラグジュアリー、美容ブランドのマーケターが、若い買い物客の間で何が売り上げを牽引しているのかについて議論した。話題の中心となったのは、TikTokのトレンドやポップカルチャーへの言及だったが、手頃な商品価格や現実世界でのショッピングチャネルも購買意欲を高める要因の上位に挙げられている。さらに、早い段階から新興プラットフォームでの存在感を示すことが、若い層を取り込む上で有効だという意見もあった。

販売数が購買意欲に影響

「『TikTokでおなじみの』というフレーズを活用して、買い物客を自社サイトに引き込んでいる」と、ある美容ブランドの統合マーケティング責任者はオフレコで語った。「その商品はバイラルである必要はないし、多少はそういうふりができる。クールでありたいという願望が強い人は棚やメールでその商品を目にして、すぐにもっと詳しく知りたくなる」。

一方、ワーキンググループの参加者によると、ブランドのTikTokショップ(TikTok Shop)で商品を見る際に、販売数を目にすることが購買に影響を及ぼしている。「顧客に対応するコンバージョンは有効だ」とあるブランドマーケターは言う。「(TikTokの)視聴者を引きつける。視聴者は『なぜひとつしか売れてないのか?』といった質問をコメントしている。そして売れているアイテムに関しては『私もほしい』となる」。

当然ながら若い買い物客も、お気に入りのTikToker(マイクロインフルエンサーを含む)が宣伝しているものを手に入れたいと考えている。あるコンテンポラリーファッションブランドでは、TikTokに特化したUGCプラットフォーム、ケールカード(Kale Card)に投資して成功していると、同社でグローバルヘッドを務める参加者は指摘した。仕組みを簡単に説明すると、ブランドは予算を設定し「このブランドでお気に入りのアイテムについて教えて」といった課題を定義する。ブランドのファンがそれに応じて課題に関連する動画を作成して投稿すると、各動画のエンゲージメントの度合いに基づいて予算が分配される。

プロダクト・プレイスメントがSNSで話題になり購買を牽引

再販の未来に関するセッションでは、ファッションファイル(Fashionphile)の創業者兼プレジデントであるサラ・デイヴィス氏は、今日のトレンドを作り出すTikTokerの力について次のように語った。「14歳のちょっと変わった子が最低価格でファッションファイルを検索し、ボロボロの古いフェンディ(Fendi)のバッグ、スパイ(Spy)を300ドル(約4万2000円)で見つけることができる。彼女はそれをTikTokで身につけて、それがポップになり、価格が手頃なので多くの人々が自分もほしいと思うようになる」。

従来のセレブリティやチャネルも、Z世代を購買に向かわせる牽引力となっている。だがそれはソーシャルメディア上の投稿によって後押しされることが多い。たとえば、あるサミットのエグゼクティブは、自分のブランドのタンクトップがドラマ『アウターバンクス(Outerbanks)』で着用され、そのスタイルについて複数のTikTokで話題になったことで最終的に売り切れたと語っている。また別の参加者は、自社ブランドのイヤリングがリアリティ番組『ラブアイランド(Love Island)』で着用されて同じことが起きたと述べた。こうしたプロダクト・プレイスメントには、リアリティ番組の出場者や番組のスタイリストがアイテムを選ぶなど、有機的に発生するものもあれば、何年もかけて築き上げた関係から派生することもある。ある美容エグゼクティブは、自社ブランドとNetflixとの現在の関係は、番組に関する「現物の」コンテンツの投稿から始まったと語っている。

こうした努力は効果を生む。あるPR担当者は、自社ブランドの商品を取り上げたモーニングショーのコーナーが、結果的に売上につながり、「その月を救った」と述べた。

D2Cのラグジュアリーシューズブランド、エムジェミ(M.Gemi)は、ポップアップを通じてポップカルチャーを活用していると、同ブランドのクリエイティブディレクター、レイチェル・ソーキン氏は述べている。たとえば、ドラマ『ホワイト・ロータス/諸事情だらけのリゾート(The White Lotus)』」のシーズン2の後、同ブランドはシチリア島で「顧客が見たいスタイルで、顧客がいる場所で顧客に会う」ことができたという。また、F1のためにマイアミにも出店している。

手に取りやすい価格帯と実店舗の重要性

Glossyサミットのスピーカーによると、Z世代の消費者を獲得するには手頃な価格であることが重要だという。アンソロポロジー(Anthropologie)のプレジデントであるアヌ・ナラヤナン氏は、「多世代の消費者にアピールする」ための同社の戦略に関する議論で、さまざまな価格帯の商品を提供することの重要性を指摘し、入手しやすい価格の選択肢が若い買い物客を引き付けるのに有効だと指摘した。同様にパクサン(Pacsun)のマーケティング・バイスプレジデントであるクリスティーナ・セレソーリ氏は、14歳から26歳の同社の「セルフショッパー」について述べた。これらの若い顧客は自分自身のために購入するため、同社における手に取りやすい価格帯がわかるという。最後にデイヴィス氏が、Z世代がファッションファイルのウェブサイトにて「最安値で」購入する習慣について語った。

「Z世代が気にするのは、それが本物であること、そしてそれを買う余裕があることだ」とデイヴィス氏は述べた。

さらにセレソーリ氏は、若い買い物客の心をつかむ上で実店舗の重要性について指摘した。「Z世代は店内で買い物をするのが好きだと耳にするが、それは真実だ」と彼女は語り、パクサンは400店舗を展開していると付け加えた。「多くのZ世代がやってきて、かなり興味を持ってくれる」。それだけではない。店舗で毎週開催しているTikTokのライブストリームにもっとも積極的に参加しているのは、パクサンの店舗が家の近くにない若い買い物客だ。「この層はその機会を利用して私たちのブランドにアクセスし、店内にあるほかのものを見せてほしいとリクエストしてくることも多い」とセレソーリ氏は話す。

チコズFAS(Chico’s FAS)のプレジデント兼CEOのモリー・ランゲンスタイン氏も、家の近くに店舗がない買い物客と現実世界でつながることに取り組んでいると語る。パンデミックが始まって以降、同社は100人の地域ソーシャルスタイリストを雇用し、それぞれの都市で定期的にショッピングイベントを開催している。チコズFASは1300店舗を展開し、買い物客の年齢層は3年前より10歳若い45歳となった。

店舗の価値についてナラヤナン氏は、アンソロポロジーの特徴である「ライフスタイル」手法のマーチャンダイジング(たとえば旅行に特化したディスプレイなど)が発見を容易にし、利便性を提供し、AOVを向上させると述べた。店舗での成功を確実にするために、ランゲンスタイン氏とスカンランセオドラ・アメリカズ(Scanlan Theodore Americas)CEOのメリンダ・ロバートソン氏は、ブランドの価値観を反映している従業員に十分な投資をすることの重要性を強調した。

「最高クラスの新人研修と(従業員のための)継続的なトレーニングを毎週提供することが必要不可欠だ」と、ロバートソン氏は言う。「誰かがスカンランセオドラの店舗で嫌な経験をしたという話を耳にすることほど、私にとって悩ましいものはない。店舗は私たちそのものだからだ。したがって、そこに多くのリソースを投入する必要がある」。

Z世代がいる場所でのアプローチ

最後に、Z世代がいる場所でZ世代に会うという最適なアプローチに関して、特に小規模なマーケティングチームで活動する場合にさまざまな考え方がみられた。サミットの参加者は「Z世代がいる場所」がデジタルプラットフォームであることに同意している。前述のコンテンポラリーブランドのマーケターは、チームはひとつのプラットフォームに焦点を合わせ、「何が有効かを把握して」から、新しいプラットフォームへと注力を拡大すると述べている。一方でパクサンはZ世代のペースに追いつくため、あるいはそれに打ち勝つために、新興プラットフォームにすばやく飛び込むという戦略を取る。Robloxの同社のワールドには1日に7万人のユニークユーザーがおり、平均24分から29分滞在している。

「先行者利益というものがある」とセレソーリ氏は言う。「要するに、より自由なやり方で活動できるし、リスクを取れる会社だと知られるようになるので、すばらしいチャンスとなる。他社が手をつけていない機会の数は、驚くほど多い」。

[原文:Fashion Briefing: So much for self-expression — Gen Z just wants in on the trend]

JILL MANOFF(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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