この夏、ブランドが「 顧客と出会う 」のは、空港やホテル、ビーチ:リベンジ旅行が盛ん【ファッションブリーフィング】

DIGIDAY

この夏、ブランドマーケターが好む目標である「消費者がいる場所で消費者に出会う」ことが意味するのは、旅に出ることだ。あるいは少なくとも「旅行に行きたい」という気持ちに寄り添うことである。

パンデミックのピーク後のリベンジ旅行がいまも盛んに行われており、ファッションブランドは、パッキングリストをチェックする消費者をサポートし、行楽客の贅沢なショッピング習慣を利用する機会、さらには旅行者向けの独自のサービスを増やしている観光局と提携する機会を探し求めている。近年ブランドは、ホテルをオープンしたり、リゾート地に店舗を構えたりする傾向にあるが、一部のブランドの旅行関連の最新の動きはさらに創意工夫に満ちている。

旅行は回復傾向にある

経済が低迷していても、旅行は依然として人気が高い。現時点での今年のメモリアルデー(5月の最終月曜日)の週末の旅行予測や集計結果を見ても、その傾向は明らかだ。たとえば、米運輸保安局は、5月25日に全米の検問所で2019年の数字を上回る270万人を検問したと報告した。またAAAによると、空港は2005年以来もっとも混雑したメモリアルデーの週末となる可能性があり、340万人が飛行機を利用すると予想されている

全体的に旅行は回復傾向にあり、世界の旅行・観光業は2021年に前年比21%増、2023年には22%増となっている。世界旅行ツーリズム協議会(World Travel & Tourism Council)は、2023年には9.5兆ドル(約1300兆円)に達し、2024年には中国人観光客が戻って完全に回復するだろうと予測している。

4月にGlossyとサックス(Saks)が3900人以上のラグジュアリー購入者を対象に行った調査では、回答者の65%が、今後1年間でもっとも投資すると思われる3つのカテゴリーのうちのひとつが旅行だと回答した。もっとも人気があった回答となる旅行の次点を選んだのは、回答者のわずか37%だった。このデータの完全な要約は、6月上旬のGlossyのラグジュアリー・ブリーフィングで紹介する。

旅行関連と提携する美容やファッションブランド

2023年に復活が予想されているトラベルリテールは、以前から美容ブランドなどにとって強力な収益源となっている。またブランドマーケティングやブランディングの機会として、空港や航空会社がさらに注目されつつある。5月25日には、カタールのドーハにあるハマド国際空港にルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)がラウンジとレストランをオープンしたことが報道された。また複数のブランドが、富裕層の旅行者向けの機内アメニティキットに新たに採用されている。6月頭に発表される短期間のコラボレーションの一環として、某ファッションブランドのパジャマがまもなくビジネスクラスの旅行者に提供される予定だ。4月からは美容ブランドのスキンプラウド(Skin Proud)のキットが、ジェットブルー(JetBlue)の大西洋横断便に搭乗する旅行者に配布されている。

各ブランドはトイレタリーや施設内での販売にとどまらず、ホテルでの機会にも目を向けている。4月、Glossyのフリーランス記者であるエイプリル・カッツ氏が「美容のミニバー」についての記事で、ドクター・ララ・デブガン(Dr. Lara Devgan)やハウスオブグロー(House of Grō)などのブランドの美容製品がエクイノックスホテル(Equinox Hotel)といった施設の客室内で販売されていることを紹介した。この記事はGlossyでその月にもっとも読まれ、この記事に関するソーシャルポストには「天才的」で「すばらしい」流通のアイデアに関するコメントが殺到した。

ブランドが新たな収益源を旅行やホスピタリティに求めているのと同様に、旅行会社はファッションブランドと連携して顧客に正面から取り組もうとしている。4月、ルイ・ヴィトンは、ソウルへの観光客誘致を目的とした韓国観光公社とソウル市との契約を発表した。同ブランドはコンテンツとイベントを中心とするその提携のキックオフとして、4月29日にソウルにてファッションショーを開催、このパートナーシップは今年の年末まで継続する。また、ヨルダン観光局は同国への若い旅行者の誘致を意図して、3月にファストファッションブランドのシーイン(Shein)と提携している。同地域の観光名所を背景にした動画や画像は、のちにテレビコマーシャルやshein.comで使用された。

夏に向けて旅行関連コンテンツを発信

当然ながら旅行者向けのファッションはブランドにとって身近な分野だが、多くのブランドが日焼け止めからスーツケースまで、あらゆるものを販売するチャンスに身を投じている。サックスのCMOエミリー・エスナー氏によると、高級品の消費者がスケジュールを旅行でぎっしり埋めて「失われた時間を取り戻す」のは、小売業に打撃を与えるものではなく、むしろラゲージなどのカテゴリーの売上を牽引している。サックスはこれに合わせたマーケティングを行い、旅行に特化したコンテンツで新たなビジネスチャンスも確立している。たとえば、最近ではアリゾナ州にある市の観光局と提携して、アリゾナ旅行ガイドとパッキングリストを作成した。「顧客はこの手のコンテンツから着想を得るとわかっているので、積極的に行っている」と同氏は述べた。

アンソロポロジー(Anthropologie)も旅行関連のコンテンツを精力的に発信している。同社はポルトガルで開催したインフルエンサートリップに関するインスタグラムのストーリーを5月24日から26日にかけて展開しており、コパリ(Kopari)などのブランドの美容製品のほか、サマードレス、スイムウェア、ビーチトートなどのショッピングリンクを掲載した。これは従来のカテゴリーではなくソーシャルプランやテーマに合わせるという、アンソロポロジーの特徴的な商品マーチャンダイジングへのアプローチに即している。現在、同社の販売チャネルでは、旅行者向けに日焼け止めやサングラス、トラベルキャンドル、ビーチで読むのに最適な書籍などを紹介している。

この夏、アンソロポロジーは、ニュージャージー州ストーンハーバーのザ・リーズ・アット・シェルター・ヘブン(The Reeds at Shelter Haven)とニューヨーク州モントークのザ・サーフ・ロッジ(The Surf Lodge)でポップアップを開催し、「体験型ショッピングコンセプトを実現」する予定だと、同社のプレジデントであるアヌ・ナラヤナン氏は述べている。「私たちのコミュニティがビーチで過ごす予定なのはわかっている。それぞれのポップアップではスイムウェアやカバーアップなど、全身のルックやビーチアクセサリーを紹介、モントークではピックルボールに特化したカプセルコレクションも販売する」。

また、カリフォルニアを拠点とするアビエーターネイション(Aviator Nation)も、ハンプトンズでビーチスタイルを販売する。5月26日、同ブランドはイーストハンプトンのメインストリートに初の常設店をオープンした。また5月初めには、ジョナサンシンカイ(Jonathan Simkhai)がモンタージュ・ラグナ・ビーチ・リゾート(Montage Laguna Beach Resort)でスイムウェアとスリープウェアの限定コレクションを発表している。

ホワイトスペースのあるトラベル関連

デザイナーは、旅行の予定がない人々に向けて気分転換になるような旅先をテーマにしたコレクションを展開している。4月、ジャックムス(Jacquemus)はフレンチ・リヴィエラをイメージしたカプセル、エテ(Été)をリリースし、サックス・フィフスアベニューの旗艦店で独占販売した。そしてもちろん、ロエベ(Loewe)のイビザ(Ibiza)も、間違いなくこの夏のコレクションだ。

市場の新しいプレイヤーによると、この分野にブランドが殺到しているにもかかわらず、トラベルギアとファッションに関してはまだ埋めるべきホワイトスペースがあるという。2019年、バッグデザイナーのローラ・バンジョー氏は、トゥミ(TUMI)で売られているような商品よりもスタイリッシュなトラベルバッグを探していたが、最終的にはあきらめて自分のブランド、シルバー&ライリー(Silver & Riley)をローンチした。彼女が手がけるレザートラベルダッフルのバージョンは、800ドル(約11万2000円)から1200ドル(約16万8000円)の価格帯で、過去4年間、何度も完売している。

[原文:Fashion Briefing: This summer, brands are ‘meeting customers’ at airports, hotels and the beach]

JILL MANOFF(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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