美容業界の DE&I はどこまで到達しているのか? セフォラはどう向上している?【ビューティ&ウェルネスブリーフィング】

DIGIDAY

アクションプランに関しては2020年と比べて控えめかもしれないが、美容企業は多様性、公平性、インクルージョン(以下、DE&I)の取り組みを推進している。その好例がセフォラ(Sephora)だ。同社は10月、毎年恒例のDE&Iハートジャーニーレポート(DE&I Heart Journey Report)を発表した。これは、セフォラが組織全体の偏見に取り組むために行っている進捗状況を記録するものだ。

セフォラのDE&Iの向上度

同社のレビューでは、セフォラは多様な人材採用へいっそう尽力していることが報告されている。会社全体で雇用された黒人およびアフリカ系アメリカ人のリーダーは8%、ヒスパニック系またはラテン系のリーダーは16%増加した。従業員における多様性は全体的に改善しており、自分は有色人種であると認識している従業員は2020年の64%から70%にアップ。有色人種の45%がマネージャー以上の地位にある(2年前は39%)。セフォラのスタッフの70%は女性、障害者は3%、LGBTQIA+は9%だ。

セフォラのDE&I担当バイスプレジデント、ジョルジュ・アクセル・ブルシヨン・マチンガ氏によると、同社の進歩の多くは、セフォラの店舗環境と小売全体で人種的偏見と排他的な対応について調査した2020年の「小売業界における人種的偏見に関する調査(Racial Bias in Retail Study)」の結果によって推進されたという。

ブルシヨン・マチンガ氏は次のように述べている。「2021年に結果が発表されて、『これが調査結果、これが現実だ』と思った。有色人種の顧客が感じたネガティブな経験が見えてきた。今では我々には定量化できるデータがあり、行動計画を公開している。行動計画を公開してから、さまざまなポリシーを改善するために社内業務を開始した。研修を見直したり文化的なアライシップにフォーカスしたが、我々の作業は社外で行う必要があるということに気づいた」。

DE&Iの3つの柱:従業員・消費者・コミュニティ

セフォラは、従業員、消費者、コミュニティの3つの柱に基づいてDE&Iを考慮している。そのなかには、企業の発展、公平な報酬、サプライヤーの多様性などの問題を深く掘り下げる11のタスクフォースがある。ブルシヨン・マチンガ氏によると、それらのタスクフォースはKPIやほかのベンチマークを達成して広範囲のセフォラ組織から賛同を得られるように尽力しているという。たとえば、従業員の柱には、DE&Iの目標に参加するチームメンバー全員は仕事ぶりを表彰され、公平な褒賞を受けることがある。個人には報酬に結びつくDE&Iの目標もあるため、従業員はボーナスや昇給を受け取る場合もあると同氏は説明している。

2020年以降、企業はDE&Iへの取り組み、またはその欠如について社内に目を向けるように求められている。セフォラは黒人所有のビジネスをより多く取り扱うイニシアチブである 15%誓約(15% Pledge)に参加している。昨年には、キャリアアップを希望する従業員向けの初のセフォラタレントインキュベーター(Sephora Talent Incubator)を発表。ブルシヨン・マチンガ氏によると100人の従業員がこのプログラムに参加したという。そのような取り組みや雇用活動の改善によって多様な従業員の数は増えている。

2021年、セフォラは毎年のアクセラレートプログラムでは有色人種の創設者にのみフォーカスすると発表した。2021年のアクセラレートプログラム出身ブランドの50%は現在店頭で販売されており、あとの50%は年末までにローンチする予定だ。また、セフォラは6月にインフルエンサープログラムのセフォラスクワッド(Sephora Squad)の2022年のリストの78%がBIPOC(黒人、先住民、有色人種)のクリエイターであることを発表した。これは2019年の61%からの増加だ。また、5月には非営利団体のオープン・トゥ・オール(Open to All)との提携により「小売チャーターにおける人種的偏見の緩和(Mitigate Racial Bias in Retail Charter)」を率いた。オープン・トゥ・オールはあらゆる消費者にとってより快適な環境を確保するための組織だ。「小売チャーターにおける人種的偏見の緩和」の今夏の設立以来、(アイスクリームの)ベン&ジェリーズ(Ben & Jerry’s)、(中古車販売の)カーマックス(CarMax)、そしてヴェルサーチェ(Versace)とマイケルコース(Michael Kors)の親会社であるカプリホールディングス(Capri Holdings)を含む大手小売業者37社が参加している。

クレドやアルタの取り組み

ほかのビューティ小売業者もDE&Iプログラムを刷新している。クレド(Credo)は、6月にBIPOC創設者向けのクレド・フォー・チェンジ(Credo for Change)ワークショッププログラムを13、14人に限定せず、資格のあるすべての申請者に拡大した。また、アルタビューティ(Ulta Beauty)は5月にミューズ(Muse)という自社のアクセラレータープログラムを立ち上げた。ミューズによって8つのBIPOCビューティブランドが作成され小売環境にローンチされる。また、アルタは2021年にはダイバーシティとインクルージョンの進歩に2500万ドル(約37億円)を約束し、DE&Iイニシアチブ全体でポジティブな変化を推進する受賞者100人からなる「ミューズ100(Muse 100)」を発表した。

資金調達や店舗での人種格差の課題

しかし、この仕事はまだ終わりにはほど遠い。クランチベース(Crunchbase)の10月21日の数字によると、黒人の創業者は第3四半期に1億8700万ドル(約176億円)を調達したが、これは第3四半期に投入された1509億ドル(約22兆円)のわずか0.12%である。2021年の第3四半期には黒人の創業者は11億ドル(約1623億円)近い資金を受け取った。テッククランチ(TechCrunch)のライター、ドミニク・マドリ・デイヴィス氏は、この数字の背景について、ウィーワーク(WeWork)の創設者、アダム・ニューマン氏が彼の復帰の最新活動として1ラウンドで3億5000万ドル(約516億円)という驚くべき額を出資したことを指摘している。3億5000万ドルは、1四半期に黒人の創業者全員が調達した合計金額をはるかに超えている。

セフォラは「小売業界における人種的偏見に関する調査」を再実施する計画はないということだが、ブルシヨン・マチンガ氏は、企業は自分の仕事をサイロ内で考えるべきではないとアドバイスしている。

「我々の尽力について考えるとき、それはもちろん社内の慣行を変えることであり、業界を変えることだが、最終的には顧客が大事だ」とブルシヨン・マチンガ氏は語る。「顧客を尊重するということだ。そうすれば、顧客は、万引きしていると疑われないようにきちんとした身なりで買い物するとか、両手をポケットに入れたままにしておくというような対処メカニズムに頼る必要はない。我々が顧客に与える影響は重要だ」。

[原文:Beauty & Wellness Briefing: How far has beauty come with DE&I?

PRIYA RAO(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)

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