NYのホットガールがハマるアプリ「 ピックル 」:クローゼットの服を有効活用

DIGIDAY

「ニューヨークのホットな女の子たちがいまやっていて、あなたがまだ知らないこと」。4月23日にそんな投稿をTikTokで始めたのは、スキンケアブランド4 amの創業者でクリエイター(TikTokのフォロワー数6万7000人)のジェイド・ベグリン氏だ。自分の投稿はスポンサードではないことを約束した上で、彼女は次のように続けている。「彼女たちはピックル(Pickle)というこのアプリで服をレンタルしている。自分の服を貸したり、新しい服を借りたり。どれもトレンドのマストアイテムばかりで、即日配達してくれるので、困っているときにものすごく助かる」。そのほかにベグリン氏がホットガールの今のお気に入りとして挙げているのは、デートアプリのラヤ(Raya)と、「審美」歯科スタジオのメゾンビー(Maison Be)だ。

ショッピングコミュニティアプリから、レンタルマーケットプレイスへ

ピックルを考案したのはジュリア・オマラ氏とブライアン・マクマホン氏で、共同創業者であるふたりは投資管理会社ブラックストーン(Blackstone)の同僚として知り合った。

ピックルは、購入したものに関してユーザー同士がクラウドソースで意見を収集できる、ある種のショッピングコミュニティアプリとして2021年4月に初めてローンチした。オマラ氏は自分とマクマホン氏について「ふたりとも非常にデータドリブンな人間だ」と語る。「人々がこのプラットフォームをどのように使っているのか、どの機能がいちばん人気なのか、多くの分析を行った。そしてコメント欄には、すでにクローゼットのなかにあるものに基づいたレコメンデーションがたくさんあるということが判明した。これは私が気に入ってるワンピース、これは私の大好きなブランド、これは私も持ってるから本当におすすめ、といった具合だ」。

そこで、ふたりは方向転換をすることにした。「垣根を取り払って人々が地域のクローゼットにアクセスできるようにし、自分の個人的なクローゼットの延長線上になりうるレンタルマーケットプレイスを構築する大きなチャンスだと考えた」とオマラ氏。その結果、彼女とマクマホン氏がピックル2.0と呼ぶ現在のバージョンのアプリが誕生した。リローンチは昨年のちょうど今頃である。ピックルという名称は、TPOに合った服を持っていないと「ピンチに陥る(pickleには困った立場といった意味がある)」ことにちなんでいる。

オマラ氏はパレートの法則を引用して、人が時間の80%ものあいだ着用しているのはクローゼットのアイテムの20%だという。「(ピックルに出品されている)アイテムの多くは、かなりクオリティがよい。結婚式のゲストドレスやオケージョン用アイテムなど、誰かが気にいっているものだ。人は必ずしもそうした服を処分したいわけではなく、収益化のよいチャンスだと考えている」。

インフルエンサーの有機的な口コミが広がる

ピックルは現在資金調達中で、市場拡大と最初の正規雇用に投資する予定の400万ドル(約5億5400万円)の調達を目指している。同社はアプリを軌道に乗せるために、初期投資に約13万ドル(約1800万円)を費やしている。在庫を作るにあたっては、ニューヨークのマイクロインフルエンサーと有機的な関係を築こうとした。「ピックルに登録してクローゼットをアップロードしてもらうよう、多くの人に(DMやメールで)依頼しなくてはならなかった。供給がなければ借り手を招待できなかったからだ」とオマラ氏は振り返る。その代わりピックルは、インフルエンサーに指定のカメラマンによる無料の写真撮影を提供した。インフルエンサーは、その写真を自分のコンテンツやピックルでレンタルする服の紹介に使用できる。マディ・カーン氏(インスタグラムのフォロワー数2万2000人)、ジェシカ・ハビッチ氏(インスタグラムのフォロワー数1万3000人)、マッキンナ・フェイ氏(インスタグラムのフォロワー数7000人)、ミーガン・クリーン氏(インスタグラムのフォロワー数2万2000人)などのインフルエンサーが参加した。「インフルエンサーのコミュニティは非常に結束が固いので、そこから多くの口コミが広がり始めた」という。

2022年12月、オマラ氏はニューヨーク在住のファッションとライフスタイルのインフルエンサー、オードリー・トゥルリンガー氏(フォロワー数はインスタグラムが12万人、TikTokは150万人)にDMを送った。トゥルリンガー氏は当時カーン氏をフォローしていたため、すでにピックルについてよく知っていた。その後、ローレン・ウルフ氏(インスタグラムのフォロワー数22万4000人、TikTok97万9000人)、@acquired.styleことブリジェット・フェロング氏(インスタグラムのフォロワー数201万人、TikTokで469万人)など、多くのニューヨークのインフルエンサーたちがピックルに参加している。

オマラ氏は次のように言う。「インフルエンサーのフォロワーは、彼女たちのスタイルがお気に入りで、彼女たちが着ている服が大好きなのだ。だから、インフルエンサーが『ねえ、ところで私のアイテムを正規の小売価格で買う代わりに、レンタルして借りたいなら』と言えば、フォロワーはとても興奮する」。

クローゼットに眠っている服を有効に活用

生業としてドレスアップしてイベントに行くことが多いインフルエンサーにとって、服をレンタルすることは、つねに新しい服を必要とするストレスの軽減につながる。「ときには一度だけ着てみたいものがある。そのような場合にピックルが最適なのは、買う必要がないからだ。それに一着を複数の人に着てもらえるので、サステナブルな買い物方法としてもすばらしい」とフェロング氏は言う。「私も、自分のクローゼットにある特定のイベントのために購入したアイテムをたくさん貸し出している」。

トゥルリンガー氏の場合、このアプリは自分のクローゼットを縮小するための手段だ。「100万種類のものを持たなくてすむのは、とてもよい」と、彼女はニューヨークの自宅にある服がぎっしり詰まったクローゼットを指差して言った。「私が貸し出している服の多くはオケージョンウェアで、一度着たことのある500ドル(約7万円)のとてもステキなドレスとか。近々着る機会もないし、クローゼットの中で場所を取っちゃうな、という感じ」。

彼女はピックルを使って服もレンタルしている。今年の誕生日には、着ようと思って最初に注文したドレスがよくなかったとき、このアプリのおかげで助かった。彼女はウィズジーン(With Jean)のメッシュのドレスを注文することになった。

フェロング氏はトゥルリンガー氏からこのアプリのことを聞いてダウンロードした。やがてオマラ氏は彼女とつながり、ふたりはテキストでやりとりするようになった。ピックルのビジネスモデルは自己実現に頼っているが、ごくわずかなVIP会員(オマラ氏との関係や出張の多さなどを考慮して約5名ほど)は、オマラ氏が彼女たちの服の出入りを管理するという最高のサービスを受けている。

「このサービスを提供することで、かなり忙しいスケジュールの彼女たちと仕事をする上で非常に役立っている。彼女たちはいつも街にいるわけではないし、彼女たちのアイテムはとても人気がある。自分のアイテムのボリュームや需要を把握し続けていくことができないので、私たちがそこをサポートしている」とオマラ氏は述べている。「ピックルを軌道に乗せる上で大く貢献したのはインフルエンサーやそのフォロワーだ」。

課題はサイズ展開の拡大

有料マーケティングとしては、現在、TikTokの広告に週500ドル(約7万円)から600ドル(約8万3000円)を費やしている。そのうちのひとつは、結婚式シーズンにこのアプリを活用する事例を強調した広告だ。また、インフルエンサーが作成したコンテンツをホワイトリスト化する形の「スパーク広告」も行っている。「これは、異なるTikTokのアカウントを持っているクリエイターと協働するための方法で、かなりよい有機的な牽引力がある。クリエイターは動画を投稿して広告設定をオンにし、私たちは裏でその費用を支払ってブーストさせる」とオマラ氏は説明した。視聴者は広告の最後にアプリをダウンロードするよう促される。

ブランド拡張に向けて、課題のひとつにサイズ展開の拡大がある。現在扱われている商品の7割はXSからMサイズであり、もっとも一般的なサイズがSサイズだ。オマラ氏いわく、ピックルの最優先事項のひとつはサイズとスタイルの多様性を高めることであり、ブランドは「あらゆるサイズの人々が自分のクローゼットをアップロードして共有してくれるように、特にミッドサイズやプラスサイズのファッションコミュニティに関わるクリエイターやインフルエンサーとの提携に取り組んでいる」。まさにこのトピックにまつわるUGC(ユーザー生成コンテンツ)も見られ、関心の高さがうかがえる。

地域密着型アプリとしてNY以外の都市も視野に

現在このアプリは超地域密着型であり、ファッションの土壇場の緊急事態にサポートを提供できることが大きな魅力のひとつとなっている。「人々は『急なイベントに招待されてしまった』という土壇場のメンタリティで買い物をする。あるいは『何を着ていくのか決めるのを先延ばしにしてたけど、木曜の夜5時に注文して、それが6時に届いて、7時のディナーに間に合うようにしたい』と思っている」とオマラ氏は言う。これまでも、注文の9割はニューヨーカーによるものだ。距離にもよるが、片道4ドル(約550円)から8ドル(約1110円)程度の宅配便を利用する。宅配便を利用しない場合は、会員同士が直接スタイルの受け渡しをする。地域外の注文には、通常配送を選択することができる。レンタル料は平均45ドル(約6230円)から50ドル(約6900円)だが、15ドル(約2100円)や250ドル(約3万4600円)のアイテムもある。レンタル料金の80%がユーザーのものになり、20%をピックルが受け取る。オーナーは自分のアイテムのクリーニングに責任を持つが、オマラ氏は、「オーナーが望む通りにアイテムがクリーニングされ、借り手による不慮の破損を防止する」と述べている。ピックルでは、オーナーがレンタル料金を設定する際、クリーニング費用を考慮に入れるよう勧めている。

ユーザー生成コンテンツ(UGC)を通じたソーシャルメディアでの存在感が高まるにつれ、インスタグラムTikTokの両方で約2000人のフォロワーがいるピックルは、サインアップ数が増加し、LAとマイアミのインフルエンサーや潜在的顧客からのインバウンドの問い合わせも見られるようになった。ハッシュタグ#ShopOnPickleは、TikTokで76万5000ビューとなっている。現在、ピックルはフィラデルフィアやボストンなどの都市で顧客基盤を構築しようとしているが、その理由は「私たちとかなり隣接していて、デモグラフィックも似ているから」だという。オマラ氏は、これらの市場はニューヨークからの管理が可能であり、彼女のチームは両都市に以前からのつながりがあると指摘した。

4月30日の投稿で、TikTokerの@Madsmarcella(フォロワー数2900人)ことマデリン・ストール氏は、このアプリについて次のような見出しをつけて投稿した。「金欠のニューヨークの女の子は聞いて。UGCではない副業(笑)」。彼女はピックルを小遣いを稼ぐ簡単な方法だと指摘する。またその投稿では、ラグジュアリーアイテムをレンタルするためにアプリを使っているのではないと強調した。「外に着ていく用のベーシックなトップスをたくさん貸し出している。こうしたものを求めている人がいるとは思っていないかもしれないが、ときに人は外に着ていくためのシンプルな黒のトップスを必要とすることもある」。彼女はこのアプリで約1000ドル(約13万8000円)を稼いだと話す。

オーガニックなコンテンツとクールガールのお墨付きがカギ

ソーシャルでは多くの人が、ピックルにあるものはすべてクールだと言っている。このアプリが、投稿されたものを吟味したり、特定のブランドを拒絶したりしていない点を考えると、これは特に印象深い。アプリがやっていることは、アルゴリズムによって選択肢を絞り込み、「(ユーザーの)インタラクションに基づいて特定のアイテムを促進する」ことだとオマラ氏は言う。インタラクションには保存、共有、クリック数などすべてが含まれる。「そのおかげで、プラットフォーム上で有機的にうまくいっているアイテムをすべて盛り上げることができる」。現在、もっとも人気で需要のあるブランドは、ラット&ボア(Rat & Boa)、リボルブ(Revolve)、カルトガイア(Cult Gaia)、リアライゼーションパー(Realisation Par)、リフォーメーション(Reformation)、レトロフェット(Retrofete)、ミャウ(Miaou)、ハウスオブCB(House of CB)、ファンシークラブ(Fanci Club)、ダニエルグジオ(Danielle Guizio)、ダナ・フォーレイ(Dana Foley)などだ。

ピックルはユーザーに対してアイテムを着用した写真をアップロードし、小売サイトの写真で補足するよう勧めている。写真は2枚必要で、ほとんどの人が自分のインスタグラムのアカウントからの写真を使用していることがわかった。

ここ数カ月のアプリの成長ぶりが示すように、最近急増したオーガニックなコンテンツと一般的なクールガールのお墨付きが、このブランドによい結果をもたらしている。オマラ氏とマクマホン氏によると、ピックルは過去5カ月で、前月比平均70%の収益成長を遂げている。さらに、レンタルできるアイテムの数がこの2カ月で倍増し、2万点を超えた。注文の55%は当日または翌日配送で、ピックルユーザーの75%が4月にアクティブになっていた。ピックルは総ユーザー数の公表を避けたが、過去1カ月でユーザー数が2倍になったという。登録者の85%は、有機的な口コミに加え、ソーシャルメディアで増幅された口コミによるものだ。過去2週間では、新規ユーザーの半数がニューヨーク以外の地域に住んでいる。

「ニューヨークのユーザーは隣人から借りるための迅速で便利なオプションのために、より多くコンバージョンしている。これは、私たちが拡大市場に資金とリソースを捧げようとしている大きな理由となっている。ほかの都市のユーザーも、私たちの統合された宅配便サービスを使用してローカルに借りることができるようにする」。

ピアツーピアのレンタル衣料品会社としては、ピックルが初ではない。3年前に英国に誕生したピアツーピア・レンタルアプリ、バイローテーション(By Rotation)は、現在米国市場での展開を進めている。ワードローブ(Wardrobe)とトゥレリー(Tulerie)にも同様のモデルが存在する。

ベグリン氏は、彼女のTikTokの投稿がアプリのダウンロード数の上昇につながったため、オマラ氏から連絡が来たという。ベグリン氏の動画は、64万4000以上のビュー数と7万6000件以上の「いいね」がついている。「じつは最近、レント・ザ・ランウェイ(Rent The Runway)のサブスクリプションをキャンセルしたが、理由はセレクションが私のスタイルではなく、少し古いと思ったから」とベグリン氏は述べた。「ピックルのおかげで、街のほかの女の子たちがどんなにセンスがいいのかわかった。だって、ものすごく買いたかったけどあきらめたドレスばかりだから。スタイリッシュな女性のコミュニティのような感じで、レンタルのプロセスではみんなとてもフレンドリーだ」。

[原文:Glossy Pop Newsletter: Meet Pickle, the app powering NYC’s coolest closets this summer]

SARA SPRUCH-FEINER(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

Source

タイトルとURLをコピーしました