Metaのマスアプローチは、デジタルファッションの流行を後押しするのか?:期待外れだったアバターズストア

DIGIDAY

デジタル空間では現実世界の典型的なアイテムよりも、奇抜で実験的なスタイルが可能になる。たとえば、溶けるスーツ光るドレスを思い浮かべるといいだろう。MetaのデジタルファッションマーケットプレイスとなるドレスX(DressX)の最初のローンチは、そうしたイノベーションの先駆けになったかもしれなかった。しかし、Metaにとってのアバターのデジタル衣装とは、パーカーやミニスカートのことのようだ。なぜそうはならなかったのか。

デジタルファッションらしさに欠けるドロップ

7月18日、D2A(Direct To Avatar、アバターとダイレクトにつながること)のアイテムモデルを追求するにあたって初のデジタルオンリーのファッション提携先として発表されたのが、デジタルファッション小売業者のドレスXだ。この発表は、Metaがいまやデジタルオンリーのファッションブランドと提携することで、他のデジタルオンリーブランドにも門戸を開いていることを示した。ところが、MetaのドレスXコレクションは、パーカーやミニスカートといったアイテムを含むもので、デジタルファッション特有の奇想天外ですばらしいクリエイションとはかけ離れていた。D2Aモデルにアプローチするブランドは、これを、ウェアラブルスタイルがアバターファッションのマスアダプション(一般への普及)により有望だという確証とみるだろう。

ドレスXの創設者であるダリア・シャポヴァロヴァ氏とナタリア・モデノヴァ氏は、ドレスXのコレクションは月単位でドロップされ、個々のクリエイターのデザインが近々発表される予定だと述べている。「初めてのドロップでは、物理的なアイテムをコレクションの基礎として活用し、ユーザーにとって非常に簡単でわかりやすいものに集中することにした」とモデノヴァ氏は述べている。「もっと複雑なデザインをすぐに紹介する予定だ」。

期待外れにおわったMetaのアバターズストア

Metaは6月にアバターズストア(Avatars Store)というデジタルファッションストアを導入し、当初はトム・ブラウン(Thom Browne)、プラダ(Prada)、バレンシアガ(Balenciaga)といった3つの有名なファッションブランドを揃えた。ラグジュアリーファッションがMetaの製品に組み込まれることへの期待は大きかったが、最初の結果は期待外れに終わった。各ブランドのデジタルアイテムは、一般的なスーツやスカート、パーカーなど、ブランドで一番人気のある物理的な商品をベースにしたものだったからだ。またユーザーはMetaのアバターと、2016年に同社が買収したSnapによるBitmojiプロジェクトとの類似点をいち早く指摘している。

アバターズストアは、今後数週間のうちにインスタグラム(Instagram)、Facebook、メッセンジャー(Messenger)で展開される予定だ。購入者は、衣服を着せたアバターをFacebookやメッセンジャー、インスタグラムのストーリーやDMで表示することができる。Metaは現時点でユーザーのうち、どのくらいの人数が同社のメタバースの取り組みに関与しているかについて明らかにしていない。

シャポヴァロヴァ氏とモデノヴァ氏は、Metaの「ミュートされた」デジタルグッズの背景には、理由として新しいフォーマットと服に関するきびしいガイドラインがあると述べているが、ドレスXとMetaはともにそのガイドラインの公開を拒否している。「私たちは、MetaのストアのビジョンがドレスXのドロップに正しく反映されるよう努力してきた」とシャポヴァロヴァ氏は言う。「MetaとドレスXはどちらも、今回のコレクションが初のドロップとして完璧に見えるようにする必要があったし、フィードバックを経て、成果物を承認し、メタバースにおけるファッションのビジョンを一緒に開発した」。ドレスXの典型的な顧客は、Metaの平均的なユーザーベースよりもはるかに若い。ドレスXのターゲットはミレニアル世代とZ世代の女性だが、Metaの平均ユーザーはX世代だ。

マスマーケットに合わせたアプローチに注力するMeta

「デジタルオンリーのファッションハウスのデザインが人気を集めているのにくらべると、Metaのデジタルファッションコレクションはかなり貧相に見える。だが、ドレスXのようなWeb3ネイティブのスタートアップ企業との長期的なパートナーシップによって、D2Aデザインをさらに発展させるための新たな方向性が打ち出されることを期待している」と語るのは、デジタルファッション専門家のミカ・ラング氏だ。また、このデジタルスタイルは一般的なデジタルファッションアイテムよりも低価格で販売されている。ドレスXの典型的な製品ラインが30ドル(約4100円)から300ドル(約4万1000円)なのに対し、Metaのデジタルアイテムは2.99ドル(約407円)から8.99ドル(約1230円)で、Metaのアイテムはバーチャルの作品というより、インスタグラムのステッカーに近い。

だが、Metaはデジタルファッションネイティブを取り込むことを重視しているのではなく、アバターのパーソナライゼーションを大衆消費者向けに手頃な価格で提供し、簡単に利用してもらうことに注力しているのだと、ラング氏は言う。彼女が指摘したのは、世界で約30億人がFacebookを利用しており、Metaは普遍的な顧客ニーズとマスマーケットに合わせてオファーを調整する必要があるという点だ。「ビジネス上の計算や期待される利益という点で、汎用的なアプローチは合理的に思える。しかしそれはまた、創造性、自己表現、個人指向のプラットフォームを基礎とするWeb3の基本原則からは外れたままだ」。

オーディエンスが何を着たいのかを知ることがカギ

さらにMetaは、バーチャルリアリティゲーム『ホライゾンワールド(Horizon Worlds)』を通じて、デジタルの次元で現実世界の交流体験を再現したいと考えている。これは、これまでアバターやデジタル衣装を利用したことがないユーザーにとって簡単な入り口となるだろう。Robloxのような他のソーシャルプラットフォームは、明らかにより若いZ世代のユーザーベースを抱えており、境界線を押し広げる方法としてすでにアバターのパーソナライゼーションに注力している。

Robloxのグローバルパートナーシップ・バイスプレジデントのクリスティーナ・ウートン氏は、「このプラットフォームでは、多くの実験が起こっている」と話す。「たとえそれが現実の世界では着たくないもの、あるいは着る気にはなれないようなものであったとしても、人々はRobloxではファンタジックな服を着用している。オーディエンスを知ること、オーディエンスがどのようにデジタルファッションを身につけており、どんな服を選んでいるのかを知ることが、(ブランドにとって)重要なのだ」。

[原文:Will Meta’s mass approach help digital fashion take off?]

ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:Maya Kishida 編集:猿渡さとみ)

Source

タイトルとURLをコピーしました