マグナイト 、DSPを介さず動画在庫に直接アクセス可能なルートを発表

DIGIDAY

マグナイト(Magnite)は、メディアバイヤーがDSPを介さずに「プレミアムな動画インベントリ」にアクセスできるようにするサービス「クリアライン(ClearLine)」を発表した。

この動きは、業界最大の独立系SSPが、従来の市場参入ルートから逸脱することを検討しているという以前の報道を裏付けてもいる。

しかし、同社は通常のビジネスも継続しており、DSPは依然として主要取引先だと主張している。同社のプレスリリースによると、クリアラインのサービス開始は、アドテク分野の進化に必要なものであり、「メディア購入費への支出を大幅に増加させる」ものだという。

マグナイトのローンチパートナーとして、グループエム(GroupM)、キャメロット(Camelot)、ミック(MiQ)は揃ってこう主張している。「クリアラインの導入により、メディアバイヤーがパブリッシャーとより安全にデータを共有し、希望するオーディエンスを見つけることができる」(プライバシー関連の法律により、従来のプログラマティック取引が禁止される傾向が強まっているため、これは重要な利点となる)。

マグナイトのCROであるショーン・バックリー氏は、クリアラインの立ち上げについて、「特定のシナリオにおいてインベントリーをより直接的に調達する手段を求める、メディアエージェンシーからの直接的な要望に応えたもので、参加パブリッシャーに対してより高い柔軟性を提供する」と述べる。バックリー氏は米DIGIDAYのメール取材に応じ、サービスに関して以下のように述べている。

◆ ◆ ◆

――クリアラインは、マグナイトによるスプリングサーブ(SpringServe)買収で実現したと言う人もいるが、この点については?

そのとおりだ。動画アドサーバーであるスプリングサーブがクリアラインの基盤になっている。パブリッシャーは長年この技術を使用して、従来の直販デマンドの管理、オーディエンスの拡大、ほかのメディアオーナーとのキャリッジ契約によるインベントリー共有の管理などを行ってきた。我々は、現代のメディアオーナーが必要とする機能と、バイヤーがこれらのアプリケーションに求めるものが、高いレベルで重なっていることに気づいた。

――もしこれが、より多くの予算をメディア購入に投入するということであれば、マグナイトがクリアラインを通じて請求する平均的なテイクレートの目安は?

これまでのクリアラインのユースケースは一般的に、より多くの予算をメディア購入費に向けることに高い感度を持つという点で共通している。また、よりよいデータの有効化と共有、とくにセルサイドからの機密性の高いファーストパーティデータの有効化に関しても、いくつかの利点がある。

――エージェンシーがマグナイト経由でインベントリーにアクセスする主要な方法がDSPであることに変わりがないのであれば、クリアラインはどのようにほかの販売チャネルと協調して運用されるのか?

これは、既存のサプライサイドのテクノロジーをベースに、特定のパートナーからの機能要求に応えて開発された特注ソリューションだ。マグナイトのエコシステムのなかで、プレミアム動画の特定のユースケースに関心のあるバイヤーの一部によって使用されることを期待している。

ストリーミングの世界では、セラーとバイヤーがどのように取引したいかに応じてワークフローをカスタマイズできる高度な技術と柔軟性の両方を持つことが不可欠だ。我々は、DSPパートナーやエージェンシーが当社のプラットフォームでプレミアム動画インベントリーにアクセスするための主要な手段であり続けることを望んでいる。

グループエムは、当社の重要なローンチパートナーのひとつだ。クリアラインは、我々が米国で運営するグループエムの「プレミアムマーケットプレイス(Premium Marketplace)」へのアクセスを提供する。グループエムのプレミアムマーケットプレイスは、入札可能なインベントリーと固定価格のインベントリーの両方で運営されており、参加する広告主に対してエンドツーエンドの透明性を提供している。

――プレスリリースでは、「セラーにサービスを提供することがマグナイトの主要な使命だ」と主張している。自社固有のデマンドにアクセスするために、パブリッシャーに何らかの手数料を導入する予定があるか?

パブリッシャーに対して現在の価格体系を変更する予定はない。我々のビジネスは、何よりもまずパブリッシャーに貢献し、パブリッシャーの成功を支援することだ。クリアラインのようなサービスも含め、我々が行うことはすべてこのレンズを通して行われている。

――このような動きは、かつてエージェンシーとDSPがマーケターへのアクセスを競っていたのと同様に、「disintermediation(仲介者排除)2.0」に等しいとする意見もある。DSPはいまや「フレネミー(友達のふりをした敵)」なのか?

我々はそのようには考えてはいない。アドテクのようにダイナミックな市場において、企業がさまざまな構成要素をサポートするソリューションを持つケースは常に存在する。しかし、DSPは当社の最も重要なパートナーであり、協力者であることは間違いなく、今後もエージェンシーが当社のプラットフォームのインベントリーにアクセスするための主要な方法であり続けると期待している。

――GoogleのDV360、ザ・トレード・デスク(The Trade Desk)、Amazonといった業界最大手のDSPが、競争激化を理由にマグナイトのSSPを停止する可能性について懸念は?

業界全体が相互接続と協力の上に成り立っている。それなしには誰も生き残れない。SSPとしての我々の使命はセラーを助けること、DSPの使命はバイヤーを助けることであり、時には物事の捉え方が違っても、大半は同じ考えで、互いに依存し合って仕事を進めている。DSPパートナー企業とは、常にそのような精神で関係を築いてきた。

この分野の主要企業の多くは、セラーとバイヤーの両方にある程度貢献するソリューションを持っており、この協力の精神は今後も続くと信じている。

[原文:Magnite debuts ClearLine to offer advertisers a direct route to video inventory without a DSP

Ronan Shields(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:島田涼平)

Source

タイトルとURLをコピーしました