TikTok が広告主を安心させるため、マーケターに「通説を否定する文書」を配布

DIGIDAY

TikTokは中国に拠点を置いていると思うだろうか? そう思うなら、考えを改めてほしい。マーケターのなかには、TikTokに関する意思決定は北京でされていると信じている人もいるだろう。また、このアプリは中国政府と緊密な関係にあると思い込んでいる人もいるだろう。しかしながら、それはどちらも間違いだ。

実際のところ、TikTokがスパイウェアであるという考えそのものが、同社によると作り話にすぎないという。そして、そのことをマーケターに知ってもらいたいと考えているようだ。そのため、TikTokの幹部陣はマーケターと接触し、TikTokと中国とのつながりに関する通説を払拭しようと努めている。3月23日、CEOの周受資(ショウ・ジ・チュウ)氏が米国議会で証言したことで、これらの通説にフォーカスが当たることになった。

そこで、一種のダメージコントロールに乗り出したようだ。実際、コントロールすべき問題は数多い。議会での公聴会後、TikTokの広告担当幹部がマーケターに共有した文書のなかでは、計16件のTikTokにまつわる通説が取り上げられている。時間がない読者のために、以下にその要約を掲載する。

※当該文章のPDFは、原文記事から閲覧が可能。

所有権

TikTokの所有権については、親会社のバイトダンス(ByteDance)が中国企業であることから、その企業が中国政府とつながっているとの懸念が以前から存在している。TikTokによると、バイトダンスが中国の起業家によって創設されたのは事実だが、同社の約60%は、カーライル・グループ(The Carlyle Group)、ジェネラル・アトランティック(General Atlantic)、およびサスケハナ・インターナショナル・グループ(Susquehanna International Group)などの機関投資家によって所有されている。

すなわち現在では、主にプライベートエクイティの支援を受けた企業だということだ。また、5人の取締役のうち3人が米国在住で、残る2人はそれぞれシンガポールと香港に在住しているという。

中国政府とのつながり

中国本土でニュースや情報サービスを運営するにはメディアライセンスが必要であり、中国政府が法的にその事業体の1%を所有することはよく知られている。しかし、TikTokは中国本土では展開しておらず、その中国版に当たるドウイン(Douyin)が運営されているのみであるため、TikTokにそのようなルールは適用されない。

コンテンツ

TikTokは常に自らをエンターテインメントアプリと位置づけてきた。したがって、コンテンツは主にユーザー生成コンテンツ(UGC)であり、中国政府が作成したコンテンツではない。また、TikTokは中国国内からはアクセスできないため、当然ながらアプリのコンテンツモデレーションは中国以外の場所、すなわちTikTokが米国とアイルランドに置くトラスト&セーフティチームによって行われており、それぞれ米国と欧州のコンテンツを監視している。

データの使用(または乱用)

2020年にドナルド・トランプ前大統領が同アプリの禁止を命じて以降、TikTokはユーザーデータの管理方法に関する懸念を緩和する策として、プロジェクト・テキサス(Project Texas)という取り組みを打ち出してきた。

このほど行われた公聴会においても、プロジェクト・テキサスは議会で繰り返された多くの質問に対する答えとして用いられた。またすでに2022年6月以降、米国のデータの100%はオラクル(Oracle)と子会社であるTikTok U.S.データセキュリティ(TikTok U.S. Data Security:USDS)のインフラにルーティングされ、ご想像のとおり、米国人によって米国内で管理されている。

サーベイランス(監視)

TikTokには米国市民をスパイする機能があるという話が、引き続き信じられているようだ。それは先日、バイトダンスがTikTokを使ってフォーブス(Forbes)の記者を監視していたとして、米連邦捜査局(FBI)と米司法省が調査を進めていると報じられたことで明確になった。

ナラティブの変化を試みるTikTok

このような文書が存在すること自体が、TikTokの目下の優先事項を如実に物語っている。それはすなわち、中国政府から距離を置くことだ。なお、両者の結びつきが政治やカルチャーの観点から取り沙汰されるのは今回が初めてではない。2020年には、トランプ前大統領が米国での同アプリの新規ダウンロードの禁止を命じている。

しかし、今回は当時と事情が異なる。マーケターたちはTikTokをめぐる地政学的な問題に対して、これまで以上に警戒を強めている。そのような懸念を理由に、同アプリから広告費を引き上げるようなことになれば、すでに非常に不安定な状況がさらに悪化する可能性がある。

ただし、そうした脅威が差し迫っているわけではない。米DIGIDAYの取材に応じたほとんどのマーケターは、TikTokでの広告を継続するつもりだと答えている。とはいえ、不安は拭えない。そのため、広告を継続するというマーケターたちも事態を注視しており、今後もし状況が変わるようなことがあれば戦略や予算を変更するつもりでいる。

それだけに、TikTokの幹部陣が、このビジネスにまつわるナラティブを変えようと対策に乗り出しているのも不思議はない。ニュー・エンゲン(New Engen)のメディアサービス担当バイスプレジデントを務めるアダム・テリアン氏は、「TikTokに進出していない一部のクライアントから聞かれる懸念は、『もし禁止されるのなら、このプラットフォームに投資したくない』というものだ」と述べている。

マーケターはTikTokに対策を迫る

次に何が起こるにせよ、TikTokの広告担当幹部は今後数週間で、通説を否定する以上の対策をとることになる。マーケターもそれを要求するだろう。結局のところ、議会の公聴会でも、透明性と説明責任センター(Transparency and Accountability Center)でも、プロジェクト・テキサスでも対応できなかった多くの未解決な問題が残っているからだ。

ベイシス・テクノロジーズ(Basis Technologies)のペイドソーシャル担当バイスプレジデントであるカエラ・グリーン氏は、「こうした懸念が最初に持ち上がってから、もう3年になる」と話す。「いつまでかかるのだろう。TikTokのCEOはこれらの取り組みに約15億ドル(約1990億円)を費やし、『データはこのように保護される』と言っているが、なぜいま保護されていないのか? なぜ優先的に実施していないのか? なぜ今なお、それについて大きな自信を持って話せる状況ではないのだろうか?」。

同じように考えるマーケターは増えつつある。実際、TikTokに対する彼らの見方は、徐々に変化し始めている。ザ・ソーシャル・スタンダード(The Social Standard)の創業者兼CEOのジェス・フィリップス氏は「TikTokが長続きするという信頼が損なわれ続ければ、ブランドやクリエイターはほかのプラットフォームを使う頻度を増やすだろう」といい、「シンプルな防衛策として、実行せざるを得ない」と述べている。

[原文:As its future hangs in the balance, TikTok tries to keep advertisers on its side

Krystal Scanlon(翻訳:高橋朋子/ガリレオ、編集:島田涼平)

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