「広告とゲームが融合したもの、と言われるのは好きではない」: ロブロックス CBO クレイグ・ドナート氏

DIGIDAY

2023年3月15日、メタバースプラットフォームのロブロックス(Roblox)が新しい広告基準と方針変更を発表し、2023年オンライン広告市場参入計画を更新した。新基準の目標は、ログロックスが提供する広告の透明性を高め、子どもの安全性に対する消費者保護団体の懸念を軽減することにある。

同プラットフォームの主なプレーヤー層はもともと13歳以下のユーザーが占めてきたが、チーフビジネスオフィサーのクレイグ・ドナート氏が米DIGIDAYに話したところでは、広告主が求める17歳から24歳の層は、ロブロックスで最も急速に成長しているという。昨年2022年に開催されたロブロックス・デベロッパー・カンファレンス(Roblox Developers Conference)では、創業者でCEOのデイビット・バシュッキ氏が参加者に、ロブロックスのユーザーの半数以上が13歳以上だと話している。

「これからのコンテンツは、17歳以上のオーディエンスをターゲットにしたものになる」とドナート氏は話す。

こうしたターゲット層の変更にもかかわらず、ロブロックスは今でもまだ米国の子どものたちのあいだで広く人気を博している。一方でプラットフォーム上でブランド化が進み、一部の消費者保護団体のあいだで懸念が急激に高まってきた。彼らは、「子どもたちにはブランド化されていないロブロックス体験と、広告とゲームを融合させた、いわゆる『アドバゲーム』との違いを簡単に区別できる能力がないのではないか」と危惧しているのだ。

3月15日に発表された最新情報は、こうした懸念の一部に直接対処したものだ。事態を変えるためにロブロックスは広告に新たなAPIを導入予定で、13歳未満のユーザーには、ロブロックスの広告もデベロッパーの広告も見せないようにする。ロブロックスのデベロッパーは今後、体験が有料広告である場合は、その旨を明記しなければならない。ただし、コンテンツが広告かどうかの最終判断は、デベロッパー各社に委ねられることになる。

ロブロックスの新たな広告基準に隠された戦略について深掘りするため、米DIGIDAYはロブロックスのドナート氏に話を聞き、Q&Aにまとめた。分量と読みやすさを考慮して、このインタビューには編集を加えている。

ロブロックスとSNSプラットフォームの類似点

ドナート氏:ブランド各社は、消費者の心をつかむためにどのようにしてこの世界で存在感を構築していくのか考えるべきだ。Webが登場したときのことは今でも忘れられない。どのブランドもこぞって、「うちにはWebサイトが必要だ」と騒いでいた。まさに、お祭り騒ぎのようだった。その後、SNSが出てくると今度は突然、「インスタグラムもFacebookも始めなくては」と言い出した。

2023年1月までで、ロブロックスが利用されている時間は50億時間になる。利用者は主に若者たちだ。私たちのプラットフォームで1日2時間半を費やしている。思うに、ブランドは今、ロブロックスで消費者の心をつかむ最適な方法は何なのかを模索しているところではないか。方法は星の数ほどあるが、まったく新しいフォーマットなのだから、決して一筋縄ではいかないだろう。

DIGIDAY:メタバースプラットフォームの台頭とSNSの台頭を比較するのは有益だ。というのも、そうすることで、ゲーミングの経験がないマーケターでも、ブランドをロブロックスに参入させたい理由と方法を理解できるようになるからだ。とはいえ、ロブロックスのクリエイターなら誰でもSNSと比較したがるというわけではない。

ロブロックス開発スタジオのデュービット(Dubit)でCEOを務めるマシュー・ワーンフォード氏は、テレビ広告と比較したほうがもっとわかりやすいのではないかと考えている。同時に、「ブランドはロブロックスを無視すべきではない」という考え方にも同調する。

「ある程度の規模のブランドは、どこでも宣伝活動にテレビを利用するだろう。テレビなら、わざわざ独自のエンターテインメントコンテンツを作ろうとしなくてもすむ」と同氏はいう。「もうすでにオーディエンスが待っているからだ。ブランドも賢くなれば、『必ずしも、賞レースに勝てるようなすばらしい広告を作らなくてもいいのではないか』と気づくはずだ」。

ロブロックスにおける無許可で利用可能なブランドコンテンツ

ドナート氏:これは、私たちが常に神経を尖らせている問題だ。というのも、ロブロックスが携わっているのは、巨大なクリエイターエコノミーだからだ。クリエイターの知的財産に対する権利を尊重することは、我々にとって極めて重要である。だから、DMCA(デジタルミレニアム著作権法)の削除要請には迅速に対応しており、調査する立場として私たちがすべきことはいろいろある。この件は、真剣に取り組まなければならない問題で、ロブロックスではこれまでも常に敏感に反応してきた。

ただ、いくつかの事例から、一部のブランドには必ずしも報告しなくてもよいと感じているところがあることもわかった。たとえば、ファン系のメディアでは、コミュニティでブランドの知的財産を利用し、いろいろな交流が行なわれている。つまり、これはブランドから要請があるかないかの問題であり、おそらく知的財産の使われ方次第で決まる。

DIGIDAY:これまでのところ、ロブロックスの体験ゲームで、自社の製品やロゴが無許可で使用されることに対するブランドの反応はさまざまだ。動画配信サービスNetflixの「イカゲーム」が人気絶頂だった頃、ロブロックスではイカゲームもどきの体験ゲームが数多く見られたが、Netflixはそれを厳しく取り締まろうとはしなかった。一方、ロブロックスで「ドライビング・エンパイア」が始まると、自動車メーカーの実在する車両を模したものが登場し、車のモデルが勝手に使われているというメーカーの苦情を受けて、この1年でそうしたコピーを排除している。

ロブロックスが新たな広告基準を発表したことで、ブランド各社は自社製品の無許可使用に対して準備が可能になるのではないか。なお、無許可のブランド体験は有料広告ではないため、ロブロックスの今回の新方針では開示の対象にならない。

ロブロックス内の第三者広告ネットワーク状況

ドナート氏:ロブロックスでは約半年前、「第三者配信(3PAS)不可」という方針を打ち出している。ロブロックスにコンテンツをのせるつもりなら、それは守らなければならない。つまり、ほかの業者が提供するサーバーを介したコンテンツの配信はできないということだ。コンテンツは、ロブロックスのチェックを受ける必要があり、そのデータはロブロックス内にあり続けなければならない。この方針に関しては、再三伝えてきた。

DIGIDAY:ロブロックスが第三者広告ネットワークを取り締まる決断を下したことは、ゲーム内広告業界にとって大きな打撃だ。というのも、この業界はプレミアムゲームのインベントリー(在庫)が足りず、すでに苦境に立たされているからだ。ロブロックスやフォートナイト(Fortnite)のようなプロパティが、ゲームからメタバースプラットフォームに変化すれば、広告インベントリーを自社で管理することになる。その結果、既存のネットワークがインベントリーとして利用可能なゲーム体験の量が一段と減少する。

「アドバゲーム」という言葉について

ドナート氏:この言葉は好きではない。ブランドと関連していれば、それだけで広告だと言っているように聞こえるからだ。ここははっきりと線引きをしたい。ブランドはTikTokで動画を流し、YouTubeで動画を流し、インスタグラムに画像をあげる。こうしたコンテンツはたいていオーガニックコンテンツで、ときには広告として考えられる場合もある。はっきりさせたいのは、製品やサービスが直接、宣伝・販売されていれなければ、それは広告ではないということだ。

DIGIDAY:確かに、人気アパレルブランドのヴァンズ(Vans)と提携したヴァンズワールド(Vans World)のようなロブロックスのブランド化体験と、ロブロックス内のビルボード広告には明らかな違いがあるものの、両者とも最終的にブランドに対して親近感を持たせようとしている点では同じである。

それに、製品やサービスを直接宣伝する広告があろうとなかろうと、ロブロックスのユーザーにブランドの製品にもっと金を使わせようとしている点も変わらない。ロブロックスの新基準で、このプラットフォームにおける広告の透明性が増すことはおそらく間違いないだろう。しかしながら、今回の変更で、これまで懸念を表明してきた消費者保護団体が納得するのかどうかは、今はまだわからない。

[原文:How Roblox hopes to assuage consumer advocates’ safety concerns with its new ad standards

Alexander Lee(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)

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