メタバース と繋がる「フィットネスバイク」が登場:「仮想世界でも運動のニーズが高まっている」

DIGIDAY

フィットネスバイクを手がけるカプティ(Capti)は、フィットネスを仮想世界・メタバースにもたらそうとしている。ペロトン(Peloton)やズウィフト(Zwift)などの競合他社とは異なり、同社のゲーム化されたサイクリングプラットフォームはアンリアルエンジン(Unreal Engine)に組み込まれており、既存の仮想世界との互換性を備えている。

同社は最終的に、大規模なマルチプレイヤー機能を実装し、フィットネスバイクを本格的なゲームコントローラーにする計画だ。

パンデミックによって自宅に閉じこもりがちな消費者たちは、生活の単調さを打ち破るために、現実世界のオフィスイベントをバーチャルな世界で再現することに目を向けている。しかし、これらの仮想空間は現実世界の社会的な側面を正確に表現しているものの、現実世界に固有な肉体の動きを欠いている。結局のところ、在宅勤務者は通勤する必要がなく、デジタルコンサートで踊ることは、うなずいたり手を振ったりするだけのことだ。

ヘッドセットやハンドコントローラを使ったVR体験でさえ、ユーザーが汗をかくことは少ない。VRチャット(VRChat)のAT&T・ステーション(At&T Station)はいろいろな意味で没入型だが、プレイヤーは自分の足ではなくジョイスティックを使って操作しなければならない。

「常に悩んでいる。子どもたちには外に出て、裏庭で走り回って欲しい」と語るのは、メタバース開発スタジオのメロン(MELON)のプレジデントであるジョシュ・ニューマン氏だ。「私たちは奮闘しているが、同時にテクノロジーとソーシャルのコミュニティは、身体的に楽しめる物事に人々の興味を呼び戻すと思う」と述べ、人気のポケモンGO(Pokémon GO)を例として挙げた。「(ポケモンGOは)本当に子供たちを歩かせた」。

オープンプラットフォームを選んだ意味

10月5日にローンチされたカプティのメインプロダクトは、10年以上にわたってジムで使われてきたゲーム化されたフィットネスバイク、エクスプレッソバイク(Expresso Bike)の家庭用バージョンだ。自転車を仮想空間に持ち込んだのはカプティが初めてではなく、パンデミックの最中に遠隔フィットネスに投資したのももちろん、同社が初めてではない。ミラー(Mirror)やペロトンなどの在宅フィットネス企業は、過去18カ月で急成長している。多人数参加型のサイクリングおよびランニングプログラムであるズウィフトは、すでにメタバースプラットフォームと呼ばれている。カプティのCEOであるジェフ・ヴェルディゼン氏は2018年から2020年にかけてズウィフトで働いていたが、「そこで私はゲームとしてのフィットネスに関する理論をさらに発展させた」という。

カプティが競合他社と一線を画しているのは、ユーザーの(ゲーム)アセットとIDを複数のプラットフォーム間で転送できる、互換性だ。ズウィフトは、主に自転車愛好家向けに販売されているカスタムプログラムだ。一方、カプティのサイクリングプラットフォームは、エピックゲームズ(Epic Games)が開発し、フォートナイト(Fortnite)などのタイトルの設計に使われているのと同じエンジンであるアンリアルエンジンで作られている。このゲーム化システムと、同社とほかの人気のビデオゲームに多くの類似点があることが、ほかの家庭用フィットネスバイクよりもファミリー製品のようなものになっている。

「ペロトンであれ、ズウィフトであれ、ほかのどこであれ、ほとんどのフィットネスプラットフォームは、閉じたプラットフォームである」とヴェルディゼン氏は述べた。「しかし、私たちがオープンプラットフォームになることを選んだのは、クリエイターや開発者をフィットネスに取り込みたいからであり、彼らにSDK(ソフトウェア開発キット)を提供して、私たちが不可能だと思っていたものを発明できるようにしたいからだ」。

「自転車はコントローラーのようなもの」

現時点では、カプティユーザーは、コンピューターで生成されたトラックを自転車で走る従来型の仮想自転車体験と、コインを集めてドラゴンを追うゲーム化された体験のどちらかを選ぶことができる。これらの特徴を拡張するデザインの余地は大きく残されている。同社が進化させたエクスプレッソ(Expresso)は、ユーザーが物理的に近くにいるほかのライダーと競争することを可能にしており、彼らはこの機能を世界中のプレイヤーに開放する計画だ。エクスプレッソを長年使用しているチャド・キャター氏は、「ほかの人たちとライブで競争したいと思う。(得点上位者を掲示する)ボードは間違いなく私のモチベーションになっている」。

このマルチプレイヤー機能の実装に加えて、カプティチームはフィットネスブランド以外の企業と協力して、彼らの知的財産を仮想サイクリングプラットホームに持ち込みたいと考えている。「また、ディズニー(Disney)のような企業とも話をしている。そこでライセンスコンテンツ(たとえば、スターウォーズ[Star Wars]のポッドレーサーなど)のために提携する方法を検討している」とヴェルディゼン氏は述べた。

このIPアクティベーションの可能性は、同社の自社開発プラットフォームとほかの仮想世界の両方に適用される。カプティは、「ギアーズ・オブ・ウォー(Gears of War)」や「モトGP(MotoGP)」などの人気ビデオゲームシリーズの開発に使われたアンリアルエンジンを使って開発されているため、これらのタイトル内で動作させるためには、ほとんど変更を加える必要がない。

同社のCTOであるサンダー・ヴァン・ゾースト氏は、ゲーム開発企業がこの種のフィットネスベースのコントローラにゲームを開放し始める時期が来ていると考えている。「自転車はゲームのコントローラーのようなものだと考えることができる。本質はそこにある」とヴァン・ゾースト氏は言う。「(カプティの仮想サイクリング・マップである)ラッキー・ストリーク(Lucky Streak)を走ると、それはアンリアル(エンジンで作られた)ゲームだと分かる。フォートナイトと同じプラットフォーム上にあり、基本的には同じ種類のシステム上に構築されている」。

バーチャル世界に慣れていくなかで

計画されている機能の多くはまだカプティのプラットフォームに実装されておらず、エクササイズ・バイクの2495ドル(約28万円)というプレセール価格も、18歳から24歳のフォートナイトプレイヤーの60%には手が届かないだろう。しかし、消費者たちがバーチャル世界で時間を過ごすことにどんどんと慣れるなかで、カプティの出現はゲーム開発ツールを使ったゲーム以外のプロダクト開発が増加していること、かつ仮想空間であっても身体を動かす必要性に対する認識が高まっていることを示している。

「私は、このメタバースを通して新たな意識を生み出す機会があると考えている」とニューマン氏は言う。「この新しい意識は、身体を実際に動かすフィットネスやアクティビティへの興味を増やすだろう」。

[原文:Why an exercise bike wants to bring gamified fitness to the metaverse

ALEXANDER LEE(翻訳:塚本 紺、編集:長田真)

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