検索エンジン化が進む TikTok 、恩恵を受けるリテーラー:宣伝やPRのためのプラットフォームに

DIGIDAY

ジェシ・キャノン=ウォレス氏(ユーザー名:@benzblogger)には、TikTok戦略がない。

それでもなお、メルセデス・ベンツ・アトランタ・ノースイースト店の営業職である同氏には、試乗・ハウツー・商品紹介といった動画のオーガニック投稿を通じて、TikTokに12万人以上のフォロワーがいる。

同氏にとって、TikTokはブランドアウェアネスを高め、(ついでに言えば)車の売り上げを伸ばすための触媒となっている。自動車業界がポストコロナ禍の再生およびインフレに向かう現在は、なおさらだという。「TikTokは実際、ほかのどのプラットフォームよりも速く新規売上を伸ばす役に立ってくれている」。

加えて、「私のプラットフォームが成長するにつれて、アポの数も、車を買いに来るお客様の数も増えているとすぐに気づいた」という(売上の具体的な数字は明かさなかった)。

TikTokは方法や何かを見つける場所に

同氏だけではない。地方の自動車ディーラーや高額商品を販売するほかのブランド勢が次々にTikTokで成功を収めており、その要因が同アプリの敷居の低さ、オーセンティックなオーガニックコンテンツを好む性質、そして新たな検索機能にあるのは間違いない。なかでも検索機能は最近ますます注目度が上がっており、その変化は広告主と同プラットフォーム自身による、若者のオンライン検索行動に積極的に付いて行く姿勢への方向転換として現れている

「消費者は過去、大きな買物のリサーチには『コンシューマー・レポート』誌をあたっていたかもしれない」とエージェンシーのランドリーサービス(Laundry Service)でストラテジー部門ディレクターを務めるユニルダ・エスキベル氏は指摘する。「だが驚くなかれ、Z世代の消費者はいまやTikTokを検索エンジンとして使っている。何かをする方法や何かを見つける場所といえる。旅行に関する諸々や新たなブランド探しなどの場合は、とくにそうだ」。

BMWアラバマ州タスカルーサ店のプロダクトエキスパートであり、別名「BMWの天才」と呼ばれるマット・エルドリッジ氏は2022年、オーガニックなアプローチでTikTokを始めた。TikTokのリーチ力のおかげで、同ディーラーをより広範なオーディエンスの前に届けられ、そのおかげで少なくとも4台の高級車を販売できたと、同氏は話す。

ジェイソン・フォックス氏がブランドマネージャーを務める自動車ディーラーのロックハート・キャデラック(Lockhart Cadillac)でも同様で、フォックス氏は同店で毎日数時間、@lockhartcadillacとして141万2000人のTikTokフォロワーを相手にしている。

TikTokは投稿したコンテンツをバズらせ、より広範なオーディエンスにリーチできる機会が、インスタグラムやFacebookといったプラットフォームよりも多く、その要因は主に前者のアルゴリズムにあると、同氏は評する。「我々は常にあのプラットフォーム上でアルゴリズムという名の暗号を解き、自社の動画をなおいっそう推そうと努めている」。

35歳以上の層が最大の成長セグメント

また、人々が同アプリに費やす時間は増加の一途を辿っている。インサイダー・インテリジェンス(Insider Intelligence)の報告では、米国の大人のユーザーは2023年、1日47分という以前の予想を18.7%上回り、1時間近くTikTokに費やすとされる。言わずもがな、買物客の目がある所には必ず広告主も付いて行く。同じくインサイダー・インテリジェンスの報告では、TikTokは2023年、全デジタル広告支出に占める割合が2022年の2.4%から3.1%に増えることが予想されている。

さらに言えば、TikTokはもはやZ世代だけのアプリではない。ビジネス・オブ・アップス(Business of Apps)によれば、TikTokユーザーの34.9%が18歳から24歳だが、25歳から34歳も28.2%と大きな割合を占めている。つまり、高額商品を扱うリテーラーにしてみれば、そこに重要なオーディエンスがいることを意味すると、エージェンシー幹部らは指摘する。

「ブランドにとって、いまTikTokにおける最大の成長セグメントは、35歳以上の層にほかならない」とエージェンシーのフィグ(Fig)でパートナー/ストラテジー部門トップを務めるサマンサ・ディーヴィー氏は話す。「その層は間違いなく、高額アイテムを購入できる財力を持つ人々だ」。

2023年後半には、商品のオンライン検索にTikTokをますます頻繁に使うZ世代に付いて行く動きが進み、同アプリの検索機能がなおいっそう注目の的となるだろうと、メディアバイヤーおよびエージェンシー幹部勢は話す。実際、前述の自動車ディーラーの販売員らを含め、さまざまなブランドがすでに車購入者のより幅広い層を獲得するべく、この新機能に目を向けている。ただし、広告費に関しては、少なくとも今のところGoogleが依然、実証済の検索エンジンの座にあるのは確かだと、広告主らは話す。

バズるダンス動画からPRの拠点に

しかしながら、TikTokはバズるダンス動画の都から、好きなものをおすすめする(あるいは宣伝)ようなサービスの拠点的な場へと進化しており、とくにインフルエンサーが台頭してからはそうなっていると、エージェンシー幹部らは話す。その好例がインフルエンサーやブランド、ユーザーが最新の購入品を紹介する動画群である#TikTokMadeMeBuyItだ。これはオンラインショッピングの一般的形態の根本的変化を体現しており、現代の若い消費者にとっての簡易ピアレビューとして機能していると、幹部らは指摘する。

米DIGIDAY宛てのeメールにおいて、ブランドストラテジー/クリエイティブエージェンシーのボールド(Bald)創業者/CEOであるヒレル・ハーウィッツ氏も「最近の人々は、テレビCMや広告板といった従来の広告チャネルに頼らず、TikTokに商品の発見や吟味の場として向かっている」と話す。

[原文:As TikTok becomes a search engine, big ticket retailers, including car dealerships, reap the benefits

Kimeko McCoy(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)

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