アフィリエイトマーケティング がブランドにとって収益性の高いツールになった理由:「インフルエンサーは広告主」

DIGIDAY

美容とファッションブランドのマーケティング戦略のごく一部として始まったアフィリエイトマーケティングだが、現在ではビジネスの主要な構成要素になっている。その理由は、純粋なインフルエンサーマーケティングに比べて、低コストでROIの高い代替手段になる可能性があるからだ。最小限の投資で販売を促進できることが証明されている。「アフィリエイトマーケティングの真の価値はインフルエンサーマーケティングを強化する一手段にすぎないということだ」と述べているのは、アワーグラスコスメティクス(Hourglass Cosmetics)のグローバルコミュニケーションを統括するジュリア・カセラ氏だ。アフィリエイトマーケティングは、eコマース全体と同様に、パンデミックの最中に大成長を遂げた。アフィリエイトマーケティングプログラムの50%以上がロックダウン中に収益を増加させた。

世界のアフィリエイトマーケティング業界は170億ドル(約2.3兆円)を超える価値があり、2月の時点でパブリッシャーの31%にとってトップの収益源である。大手のアフィリエイトコマース企業では、Amazonアソシエイト(Amazon Associates)、シェアアセール(ShareASale)、LTK、ショップマイ(ShopMy)などがファッションと美容向けだ。では、アフィリエイトマーケティングとは正確には何で、また、追跡が難しいインフルエンサーマーケティングとは対照的に、それが多くのファッション・美容ブランドにとって収益性の高いツールになった理由は何か。ブランドはこの取り組みにどのようなリソースを投入しており、また、アフィリエイトマーケティングは収益の何パーセントを占めているのか。美容とファッションのトップブランドのマーケターと創業者に詳細を聞いた。

アフィリエイトマーケティングとは何か?

アフィリエイトマーケティングとは、ブランドが独立した個人または企業にアフィリエイト料を支払うパフォーマンスベースのマーケティングの一種であり、製品やサービスを宣伝し、売上やウェブサイトへのリードを促進するための手数料である。

アフィリエイトベースの戦略への移行

カセラ氏によると、アワーグラスはアフィリエイトプラットフォームのショップマイ上での最初の1カ月間に自社ウェブサイトと小売パートナーのサイトを経由したトラフィックが178%増加したという。カセラ氏がショップマイで気に入っているのは、誰がアワーグラスの小売パートナーへの売上を促進しているかがわかるという点だ。「この透明性のおかげで、さまざまな小売業者に対してクリエイターがどのような仕事をしているかが確認でき、クリエイターを小売業者とのパートナーシップに活用するのに役立つ」とカセラ氏。「既存のブランドファンと交流して有料パートナーシップを利用して、ほぼ即座にトラフィックを増やすことができた」。また、ショップマイにより、ビューやエンゲージメントといった指標を超えて、有意義な販売を促進するために誰が働いているかを確認できるようになったと語る。

「アフィリエイトプラットフォームはカスタマージャーニーの一部を追跡するのに役立っている。特にインフルエンサーのコードを使う顧客のうちウェブサイトを初めて利用した顧客とリピーターの顧客の割合など、データの抽出を支援する優秀な社内eコマースチームと連携している」とカセラ氏。

また、カセラ氏は、アフィリエイトマーケティングは厳密な科学ではないが、進化し続ける消費者ジャーニーのパズルのピースの1つだと付け加える。同氏は、カスタマージャーニーは広大で、アフィリエイトリンクだけではインフルエンサーが推進するすべての売上を得られないことは理解しており、「メイクアップ製品の大部分は顧客が店舗で購入している」と語っている。クアンティロープ(Quantilope)の統計によると、消費者の67%が化粧品をまだ店舗で購入していることが確認されている。

ショップマイのようなアフィリエイト企業は売上の一部を獲得する。ショップマイの取り分は一律15%だが、アワーグラスの担当者によると、ショップマイ上のクリエイターのコミッション率は販売ごとに10~30%の範囲だという。アフィリエイトWP(AffiliateWP)によると、標準的なアフィリエイト手数料率は5~25%だという。

アフィリエイトマーケティングが機能しない場合

カセラ氏は、アフィリエイトマーケティングをサポートする強力なインフルエンサー戦略を持つことが重要であると述べている。ジェニファー・ベット・コミュニケーションズ(Jennifer Bett Communications、以下JBC)のパートナー、メリッサ・デュレン・コナー氏は、ブランドがアフィリエイトプログラムを管理するための適切なリソースを持っていない場合、アフィリエイトマーケティングが機能しない可能性があることに同意する。「この作業には、売上と手数料を追跡し、戦略的パートナーシップを構築し、申請を承認し、日々管理するための時間と忍耐が必要だ」。同氏は、Amazonのような確立されたeコマースブランドや大手小売業者の多くが非常に競争力のあるコミッションを提供しており、そのために小規模なブランドや新興企業が競合するのが難しくなっていると付け加える。

エム・エム・ラフルー(M.M.LaFleur)のブランド・統合マーケティング担当ディレクター、マリア・コスタ氏は、同社は過去数年間有料パートナーシップやギフティングといった従来のインフルエンサー戦略活動を行ってきたと述べている。その結果、優秀なコンテンツクリエーターであるだけではなく、強力な収益源でもあるインフルエンサーについて深く理解するようになったという。「インフルエンサーは自分のオーディエンスから本当に信頼されており、当社は直接手数料戦略を通じてインフルエンサーとのパートナーシップを深めたいと考えている」。

エム・エム・ラフルーは第1四半期に、クリエイター向けのオンラインストアのフラッグシップ(Flagship)と協力して、エム・エム・ラフルーの長年のパートナーであるインフルエンサー、アン・サンドストロム氏(インスタグラムアカウントは、9to5Chic)と共にストアフロントをローンチする。「フラッグシップを通じて、サンドストロム氏は自分のお気に入りのエム・エム・ラフルースタイルのセレクションをキュレーションできる。彼女のコミュニティは当社のサイトに移動せずに彼女のサイトから直接購入できるため、検討から購入までのマーケティングファネルにおける潜在的なドロップオフの一部を排除できる」とコスタ氏。また、このストアフロントを通じて完了した販売に対して、LTKを通じた通常のものよりも高い手数料が支払われるようになるという。「サンドストロム氏に関するパフォーマンスシグナルに基づいて、年間を通じて同じような構造のパートナーシップを追加して展開する予定だ」。

エム・エム・ラフルーはまだフラッグシップでのローンチ過程であるが、これまでにサイ・デ・シルバ氏やクリッシー・ラザフォード氏といったインフルエンサーパートナーと共に エム・エム・ラフルースタイルの毎月のカプセルキュレーションのローンチで成功を収めているとコスタ氏は述べている。「そのようなカプセルで紹介されたスタイルの製品の売上は平均で10%伸びている。当社の目標はフラッグシップのストアフロントで紹介されているスタイルで売上を伸ばすことだ」。

グウェン・ステファニー氏の美容ブランドであるGXVEビューティ(GXVE Beauty)は社内で独自のアフィリエイトプログラムを構築している。GXVEビューティはメイクアップを通じて自己表現と創造性を見つけたいメイクアップ愛好家のコミュニティのために作成された。そのミッションはGXVEコミュニティの開発につながった。このコミュニティは昨年秋にローンチしている。GXVEビューティのCCOであるリンジー・ロッゲンティエン氏は、「GXVEコミュニティは、ブランド アンバサダーがグウェンと交流して、製品の教育やチュートリアルを受けたり互いにつながるための特別なハブを提供するブランド所有のデジタルプラットフォームだ」と語る。GXVEコミュニティには誰でも参加でき、申請はGXVEウェブサイトのアンバサダープログラムタブから行う。そこから、自分のソーシャルメディアアカウントへのリンクと「GXVEメンバー(Gxver)」になりたい理由について短い説明を提出する。ソーシャルプラットフォームのリンクを共有するが、アンバサダーとして考慮されるために最低限必要なフォロワー数はない。メイクアップへの情熱とポジティブな姿勢だけが求められる。承認されると、GXVEコミュニティのメンバーは自分のアンバサダーリンクを受け取り、販売する製品のコミッションを獲得できるようになる。

「また、これはコミュニティを製品開発プロセスに参加させる素晴らしい方法でもある」とロッゲンティエン氏。GXVEビューティは、コミュニティがどのように製品を使っているかや将来のリリースに何を求めているかについて学んでいるという。「このプラットフォームを作成することで、美容とメイクアップのあらゆることに対して皆に共通する愛を通して我々は学び、成長し、つながることができる」。

ジュエリーブランドのドーシー(Dorsey)の創業者兼CEOであるメグ・ストラチャン氏は次のように述べている。「従来のインフルエンサー戦略はギフティングや有料投稿に基づいていた。だが、そのどちらも、ブランドやインフルエンサーがパートナーシップによる売上高を追跡することはできなかった」。ストラチャン氏は、以前はVCが支援するD2Cブランドのグロースマーケティングに携わっていた。だが、2019年後半にドーシーをローンチした際にはこの従来のアプローチを採用しなかったが、それが同社の成功に不可欠だったと述べている。「社内ではインフルエンサーをインフルエンサーと呼んでいない。広告主と呼んでいる。実際にはそうだからだ」。アフィリエイトマーケティングの関係は(ブランドとインフルエンサーの)関係を再構成するものであり、すべての関係者が同じ目標に向かって足並みをそろえることができるとストラチャン氏は述べている。

アフィリエイトマーケティングに専念するリソースブランド

コスタ氏はエム・エム・ラフルーのアフィリエイトマーケティング戦略を拡大する絶好の機会と考えているため、同社はパフォーマンスマーケティングチームを構築し、マネージャーとアソシエイトレベル両方の人材を採用している。このチームはアフィリエイトマーケティングのチャネルの日次、週次、月次の成長とパフォーマンスの全指標を監視することになる。

ロッゲンティエン氏によると、GXVEコミュニティはサードパーティのアフィリエイトネットワークにリンクするプログラムではなく、ブランド所有・運営によるデジタルプラットフォームであるという点で独特だという。「GXVEビューティにはこのコミュニティ専用のチームがある。プログラミングと教育の開発から、ライブチュートリアルの実施、グウェンとの特別なエンゲージメントの機会への参加、コミュニティ限定のプロモーションの提供、インセンティブの販売まで担当する」と述べている。また、GXVEビューティは24時間体制で各コミュニティチームメンバーの開発や成長、サポートに専念してもいるそうだ。

「『GXVERS』として知られているアンバサダーたちのこのコミュニティは驚くほど熱心に関与しており、交流を楽しんでいる。メイクアップ、芸術性、そしてもちろんグウェンへの愛を共有して、GXVERコミュニティで関係が構築されるのを見るのは素晴らしい」と ロッゲンティエン氏。同氏によると、アンバサダーはパーソナライズリンクを通じて販売する全アイテムに対して30%の手数料を受け取るが、これは業界の標準レートの中でも最大の1つであるという。

ストラチャン氏によると、ドーシーはインスタグラムのインフルエンサーを含み人々に関連するアフィリエイトマーケティングのすべてを社内チームを通じて処理しているという。「当社は外部リソースを使い、より伝統的なパブリケーションを通じてアフィリエイトマーケティングをサポートしている」。

デュレン・コナー氏によると、JBCが社内のアフィリエイト部門を立ち上げてから約1年になるという。「2022年4月に導入して以来(アフィリエイトマーケティング)カテゴリーはJBCのメディアリレーションズの取り組みにシームレスに統合され、各ブランドのPR・アフィリエイト戦略と目標をさらに合理化している」。JBCはこの成功を「主に当社のPRチームとアフィリエイトチーム間の一貫したコミュニケーションのおかげだと考えている。アーンドメディアの機会とパブリッシャーとの有意義なアフィリエイトパートナーシップとのバランスが取れている」。

アフィリエイトマーケティングの収益

エム・エム・ラフルーのアフィリエイトマーケティングは、2022年、収益の13%を生み出した。

JBCが同社のアフィリエイトプログラムを主導し始めた際、あるクライアントの2021年第4四半期から2022年第4四半期までのアフィリエイト収益を比較するとそれは134%増加したという。また、別のクライアントはアフィリエイト業務を活用した最初の2四半期で、アフィリエイトの合計収益が15万ドル(約2000万円)を超えたとデュレン・コナー氏は述べている。

「ブランドがインスタグラムのアフィリエイト広告主とどう提携するかについてはまだ始まったばかりだと思う」とストラチャン氏。「ニッチなオーディエンスがブランドの前進にとって有意義な成長とエンゲージメントを推進することは明らかだ」。

[原文:‘Influencers are advertisers’: Fashion and beauty brands on the evolution of affiliate marketing

AMBER KATZ(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)

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