今年の Amazon プライムデー、出品者たちの胸の内は?:コスト上昇を余儀なくされるなかで

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プライムデー(Prime Day)はまだ先だが、サードパーティの出品者はすでに、Amazonの年間最大の特売イベントのひとつであるこの日のために戦略を練っているところだ。

過去のプライムデーとは異なり、出品者たちは現在、利益を圧迫するいくつかの課題に取り組んでおり、今年の特売イベントへの対応に影響を及ぼす可能性がある。Amazonは4月、これまでの手数料に燃料とインフレをまかなうための5%の割増金を追加し、さらにそのわずか数カ月前の1月、出品者はコスト関連の手数料の引き上げに直面した。さらに出品者は、サプライチェーンや労働力など、そのほかの経費の増加にも苦しんでいる。Amazonはプライムデーの正確な日付をまだ設定していないが、7月に20カ国以上で行うことを明らかにした。

コスト上昇の影響

成長マーケティング企業であるアカディア(Acadia)の小売マーケットプレイス戦略責任者を務めるキリ・マスターズ氏は、最近のコスト上昇を背景に、一部の出品者は最近、コストの増加を消費者に転嫁するか、経費を相殺する方法を見つける必要に迫られたと語っている。これは結果として今年のプライムデーにおける出品者の対応にも影響を及ぼす可能性がある。出品者のなかには、依然として失われたマージンを取り戻そうと、プライムデーに積極的な割引を行わないかもしれないと同氏は述べている。また、たとえ利益が減少するとしても、年間でもっとも売上が多くなるこの日に新規顧客を獲得しようと割引を計画している出品者もいるだろう。

マスターズ氏は次のように述べている。「さまざまな物と労働力の価格がすべて上昇している現在、多くのブランドはここしばらくにわたって、そのコスト上昇の影響を受けている。結果として利ざやが多少減少してきた」。

プライムデーは過去数年にわたり、サードパーティの出品者にとって2日間に渡る最大の特売期間として機能してきた。Amazonによれば、昨年のプロモーション期間に、顧客は中小企業による7000万点以上の商品に、19億ドル(約2510億円)以上を費やした。多くの出品者は依然として割引を行ってプライムデーに参加する予定だが、専門家によると、一部の出品者は、利ざやに打撃を受けるだろうという。

マスターズ氏は次のように述べている。「ブランドにとって価格を上げるのは重大な決定で、当社のクライアントのほとんどはそれを行ったばかりだ。値上げはすぐに行われなかったため、これらの出品者はおそらく、しばらくは利ざやの減少に耐えていただろう」。

利益より顧客獲得を優先

粉末状スーパーフードブランドのアップリフトフローラ(Uplift Florae)の創設者で、収益推進代理店のクランチグロース(CrunchGrowth)のCEOを務めるフィル・マシエロ氏にとって、プライムデーに割引を行うのは、多少金銭的に打撃を受けても、より多くの顧客に製品を試してもらうための方法だ。同氏は今年のプライムデーでは、自社ブランドの2つの商品を50%オフで、そのほかの商品を10%オフで提供すると語った。

「我々すべてが直面しているコスト増をカバーするより、むしろ少ない利益を甘受し、売上と顧客を増やし続けていきたい」と同氏は述べている。「膨大な金額を生み出すことにはまったく期待していない。それはできないだろうが、ブランドとその顧客を開拓する努力は続けたい」。

同氏は、自身のような出品者が抱えている最大の懸念は、消費者が、特に必需品ではない品物への消費を控えるかどうかということだ。消費者物価指数は商品やサービスの価格の指標となるものだが、労働統計局の最近のレポートによれば、昨年と比べてこの4月は8.3%上昇している。

同氏は次のように述べている。「消費者は依然として、衣服、食料品、パーソナルケア用の品物を買う必要がある。そこで、これらの消費者が予算に多少の柔軟性を持ち、必需品でない品物も購入してくれることを願うしかない」。

7年ぶりの赤字

ブラックランドプレイリー(Blackland Prairie)の所有者で、リバーバンドコンサルティング(Riverbend Consulting)の共同創設者であるレスリー・ハンセル氏は、依然としてプライムデーにクーポンを使用して顧客への売上の促進を計画していると語る。同氏は2010年から同プラットフォームの出品者であり、健康および美容品を販売してきた。

プライムデーには通常の販売日よりも売り上げが10〜15%伸びると、同氏は語っている。同氏は、出品者が大幅な割引を行わなくても売上が増加することから、クーポンの使用を好んでいるという。同氏は通常、1ドル(約132円)または2ドル(約264円)割引のクーポンを出しているという。

同氏は、出品者が利ざやについて懸念を抱いているとしても、プライムデーに参加することはキャッシュフローを生み出し、少なくともホリデーシーズンの前に自社ブランドへの認知を広めることができると語る。「割引によって利ざやが多少減少するとしても、ホリデーシーズンを前にして顧客の注目を集め、知名度を高める重大な機会だ。利ざやの減少はキャッシュフローにより埋め合わせできる」と同氏は述べている。

しかし同氏は、今年のプライムデーでこれまでと同じだけの売上を上げられるかどうか、出品者が心配しているとも語っている。Amazonは4月、オンラインショッピングの売上が鈍化したこともあり、2022年第1四半期(1〜3月)決算で、7年ぶりの四半期損失を計上したことを発表した。同社は昨年81億ドル(約1兆700億円)の利益を上げたのに対して、同四半期には38億ドル(約5020億ドル)の損失を出した。

「出品者はすでに、売上減少のさまざまな圧力を感じている」同氏は述べている。「経済状況から、消費者はAmazonで必需品以外の商品を購入することを控えるようになっており、多くの出品者は現在、すでに困難を感じている」。

[原文:Amazon Briefing: How third-party sellers are prepping for Prime Day]

著者:Maria Monteros(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)

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