Netflix が広告事業の再構築に着手、まずはアドテクのインハウス化か

DIGIDAY

オンラインストリーミングサービスのNetflixが2022年7月に発表したマイクロソフト(Microsoft)との提携は、数十億ドル(数千億円)の広告収入を生み出すことが期待されていた。だが、広告事業で苦しいスタートを切ったNetflixは、成果を上げるための事業運営方法として、アドテクのインハウス化など新たな選択肢を検討しているようだ。

米DIGIDAYが取材したところ、最近になって著名な専門家をアドバイザーとして迎えるなど、Netflixはアドテクに関して考えられる有効な選択肢を探り始めている。

マイクロソフトとの広告契約は2年間+更新オプション

このような動きが最終的にどのような結果をもたらすのかは定かではない。別の情報筋によれば、マイクロソフトとの広告契約は2年間で、現在の動きによっては独自のテクノロジーを構築または買収する可能性もあるという。

米DIGIDAYはマイクロソフトとNetflixの両社にアドテク契約の期間について尋ねたが、回答は得られなかった。ただし、現在の契約には2024年に契約を更新するオプションが存在するようだ。

そのあいだに、Netflixはコムキャスト(Comcast)のアドテク子会社フリーホイール(FreeWheel)で最高製品責任者を務めていたジョン・ウィッティコム氏を、広告プラットフォームのアドバイザーとして招いていたことが、我々の取材で明らかになっている。この任命は、「構築または買収」の検討に直接関係したものだと考えられている。

アドテクに関する社内の議論

Netflixの関係者は2023年に入るとすぐ、「加入者に最適なスポット広告を流す方法」についてアドバイスを求め始めた。マイクロソフトも子会社のザンダー(Xandr)を通じて同じようなテクノロジーを提供できるにもかかわらずだ。

この議論はまだ続いており、匿名を希望した情報筋によれば、「アドバイスを求める動きは独自の広告サーバーを構築して、マイクロソフトの広告製品への依存度を下げる可能性を探るためと解釈できる」という。

Netflixが取りうるもうひとつの選択肢はアドテク資産の買収だが、その可能性が活発に議論されているかどうか把握している情報筋はいなかった。とはいえ、初期段階の調査で潜在的な買収先を検討することは十分にあり得るというのが、ほとんどの情報筋の見解だった。企業開発を担当する情報筋は、たとえ何も起こらなかったとしても、(買収先を検討することは)「非常に合理的」だと述べている。

「彼らが新たに構築したいと考えているものは、多くのカスタマイズが必要になるはずだ。だがこれは、彼らが広告事業を真剣に検討している証だと思う」と、この議論の技術面に詳しい情報筋は付け加えた。「(広告事業を)真剣に検討している企業なら、インハウス化したいと考えるだろう。あれ(Netflix)ほどの規模があればなおさらだ」。

米DIGIDAYはNetflixの広報担当者に対し、この議論の内容についてコメントを求めたが、回答は得られていない。

サプライズ候補と予測されていた収入

マイクロソフトがNetflixの「グローバル広告テクノロジーおよびセールスパートナー」に選ばれた事実は、驚きを持って迎えられた。7月に最終発表が行われるまで、コムキャストかGoogleのアドテク製品が最有力候補であることを示唆する報道が続いていたからだ。

また、視聴者数が当初保証していた数を下回ったため、Netflixが初期の広告主への返金を余儀なくされたという事実は、将来の改善が必要なことを暗に示した出来事と解釈できる。

別の情報筋は、マイクロソフトのアドテク子会社ザンダーが所有する動画広告テクノロジーが当初の期待に応えられず、Netflixの幹部らが独自にパブリックコメントを発表したことで、「Netflixが注力しようとしている分野が推測できた」と述べている。

Netflixは、大きく報じられたマイクロソフトとの提携に続いてジェレミ・ゴーマン氏とピーター・ネイラー氏(ともにスナップ[Snap]から移籍)を広告部門の責任者に任命しており、インサイダー・インテリジェンス(Insider Intelligence)は2024年の広告収入が10億ドル(約1340億円)を超える可能性があると予測していた。

技術的な改善は山ほど

しかし、発表から間もなく、メディアバイヤーは驚かされることになる。11月の広告付きプランの開始に先立つ準備期間に提示されたCPMが、65ドル(約8700円)もしたからだ。

その後、複数の情報筋が米DIGIDAYに語ったところによれば、マイクロソフトはチャネルの競合がないと認識しており、そのことが売り込みに大きく反映されていたという。なお、コムキャスト傘下のNBCユニバーサル(NBCUniversal)が運営するピーコック(Peacock)と、GoogleのYouTubeはNetflixの直接的なライバルだ。

Netflixが1月に行った決算発表で同社の最高業務責任者兼最高製品責任者を務めるグレッグ・ピーターズ氏は、自社とマイクロソフトの当初の取り組みを賞賛しながらも、まだやるべきことがあると付け加えている。

シーキング・アルファ(SeekingAlpha)が公開した決算発表の書き起こしによると、ピーターズ氏は「広告配信の検証や測定に関して、技術的に改善すべき点が山ほどある」と述べていたようだ。

また、マディソン・アンド・ウォール(Madison & Wall)のブライアン・ウィーザー氏は米DIGIDAYの取材に対し、Netflixのような企業では「構築か買収か」という難しい問題を考えなければならず、どちらの選択肢にも欠点があると話す。

「構築には時間がかかるが、その一方で(完全なアドテク製品を持つ)他社を買収すれば、ほかの収益源をあきらめ、得られたはずのものにお金を払うことになる」と、ウィーザー氏は付け加えた。

[原文:Netflix is reviewing its ad strategy, considering ‘build or buy’ pivots away from Microsoft

Ronan Shields(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:島田涼平)

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