トレードデスク の好調な業績に潜む重要な注意点:依然メタとGoogleは他を寄せつけない

DIGIDAY

トレードデスク(The Trade Desk、以下TTD)は2月15日に決算発表を行い、2022年第4四半期の収益が前年同期比24%増の4億9100万ドル(約661億円)、2022年度の収益が前年比32%増の15億7800万ドル(約2126億円)超だったことを明らかにした。

大手独立系DSPの同社が現在の経済的逆境を乗り切り、競合他社より有利な状況にあることを物語る結果だが、今後の課題を示唆するいくつかのニュアンスが含まれている。

同社の声明によれば、2022年度、プラットフォームに投じられた金額は78億ドル(約1兆510億円)で、2023年第1四半期の収益は「少なくとも3億6300万ドル(約490億円)」と予測されている。これは好調が維持されると予想している証拠だ。

デュオポリーへの広告をCTVは奪えるか

CEOのジェフ・グリーン氏は決算発表後の説明会で、インサイダーインテリジェンス(Insider Intelligence)の数字を引き合いに出し、マーケターの予算がウォールドガーデンから引き上げられ、「オープンインターネット」に向かっているとほのめかした。また、グリーン氏は株式アナリストへの説明会で、2023年、「デュオポリー(複占者)」とも呼ばれるメタ(Meta)とGoogleがほぼ10年ぶりに、デジタル広告費全体に占める割合が半分を切る(48.4%)というインサイダーインテリジェンスの報告書を引用した。

さらに、CTVを「オープンインターネットのキング」と位置づけたうえで、メディアのなかでもこの部分は「断片化」しており、TTDの強みを発揮できると断言した。

TTDはとくに、ディズニープラス(Disney+)やNBCユニバーサル(NBCUniversal)のピーコック(Peacock)のようなストリーミングサービスが視聴者にとってプレミアムコンテンツ消費の主な手段となり、その後、広告費がデュオポリーからさらに離れていくことに賭けている。「CTVは完全に断片化しているが、集合体としては巨大だ。あまりに断片化しているため、単独で強硬手段に出られるほどの力は誰も持っていない」と、グリーン氏は述べたと伝えられている。

間違いなく、市場は認めている。決算発表の当日、TTDの株価は25%超上昇し、時価総額も300億ドル(約4兆420億円)を突破した。

アナリストたちはTTDの業績と実行力を褒め称えたが、一部のアナリストは重要な注意点があると補足した。つまり、ウォールドガーデンはこれからも存在し、ほぼ間違いなく、増殖するということだ。

メタやGoogleの規模は依然圧倒的

マディソン・アンド・ウォール(Madison and Wall)のブライアン・ウィーザー氏は評価リポートのなかで、TTDのサービスは(比較的)客観性があり、一部のマーケターはウォールドガーデンより好むと思うが、メタとGoogleの規模がメディアバイヤーにとって魅力的であることは変わらないと述べている。

「個々のサービスプロバイダー、テクノロジープロバイダーが限られた規模で(定義は何であれ)高いROIを実証できても、1つか2つのメディアオーナーにリソースを投じる余裕しかないマーケターが近い将来、ウォールドガーデンからそちらに移ることはないだろう」とウィーザー氏は説明する。

さらに、インサイダーインテリジェンスのデータは、広告予算に対するメタとGoogleの支配力が弱まっていることを示唆しているが、これらの数字の根拠となった最近のニュースは米国に限定されている。

「インサイダーインテリジェンスのデータは総計ではなく正味の数字によって定義されている。分数の分子については、市場支配力は総計のみで定義されるべきだ」とウィーザー氏は書いている。

「この基準では、メタとGoogleは米国のデジタル広告市場の約70%を占めていると思われる(中略)Amazonを加えると、ほぼ間違いなく80%を超え、力の集中は弱まるどころか、むしろ強くなっている」

CTVの台頭=ウォールドガーデンの増加

グループエム(GroupM)の幹部だったウィーザー氏によれば、「CTV広告費」の増加という主張にはいくらかのニュアンスが含まれている。同氏は投資家に対し、CTVの定義についてよく考えるよう助言している。

「まず、私がCTVを定義する場合、一般的なオンライン動画を含めることはない。ほとんどのブランドはCTVと聞いたとき、プレミアムコンテンツのみを指すと考えるだろう。YouTubeやプレミアム動画コンテンツと無関係なオンライン動画広告は含めないと思う」。

また、ウィーザー氏によれば、「従来の広告付きテレビのリーチ力が衰える」なか、一部のマーケターはCTVの保守的な解釈を採用するかもしれないが、市場の大部分はまだそこに到達しておらず、すぐに到達する可能性も低いという。

一方、ディズニー(Disney)、NBCU、パラマウント(Paramount)などの伝統的な放送局(TTDはこれらすべてと提携している)がサードパーティのDSPにインべントリー(在庫)へのアクセスを解放した。一部のアナリストはCTVの台頭によって、ウォールドガーデンはさらに増えると考えている。

アレート・リサーチ(Arete Research)のアナリストによれば、おなじみのプレミアムプロパティがCTV消費の70~80%を占め、それらすべて(Amazonプライム、Rokuなど)が独自の広告技術を持っているという。

複数の情報筋によれば、ほかのプレミアムプロパティもこの流れに乗る可能性が高そうだ。このようなシナリオが現実になれば、TTDは同じアドテク企業であるクリテオ(Criteo)の買い手として理想的だという説の重みが増す。

なぜなら、 独立系アドテク企業の大手2社が統合すれば、TTDのウォール街へのピッチが有利に運ぶためだ。複数の情報筋によれば、ここ2年、TTDのピッチは(主に)CTVの物語に支えられていたが、リテールメディアに関しては、明らかに不利な状況にあったという。

曖昧な関係

一方、TTDは顧客基盤の中核(メディアエージェンシー)とどのように関係を構築していくかを考えることも重要で、上場しているDSPの成長へのニーズが緊張感をもたらすという見方もある。

DIGIDAYが1月に取材した大手エージェンシーグループ関係者によれば、TTDは以前より直接的に顧客にアプローチしているという。匿名希望のある関係者はこれを直接的な脅威と捉えていた。ただし、同社の広報担当者はDIGIDAYに次のように語っている。「買い手側におけるエージェンシーとの関係や連携はかつてないほど強固になっている」。

[原文:The Trade Desk’s bumper quarter has some important caveats

Ronan Shields(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:島田涼平)

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