パタゴニアとモンクレールの中間スペースを狙う、 D2C アウターウェアブランド、ジ・アライバルズ

DIGIDAY

D2Cのアウターウェアブランド、ジ・アライバルズ(The Arrivals)は、創業から9年間のほとんどをレザージャケットで有名なニューヨークのアウターウェアブランドとして歩んできた。だが、2019年、ブランドの運営はニューヨークを拠点としたまま、共同創業者でCEOのジェフ・ジョンソン氏がサンフランシスコに移転する。それから3年間、東海岸と西海岸にわかれた体制が、ブランドの理念と美学を刷新している。

「移転後、ブランド全体で徐々に(アパレルの)技術的な面を取り入れるようになった」とジョンソン氏は言う。「トレンドやファッションを追うのをやめて、たとえばパタゴニア(Patagonia)と競合するような、パファー(羽毛や中綿入りのアウター)などのパフォーマンスアイテムへと移行していった。そうしたテクニカルなアイテムは、昨年度、当社の製品カテゴリーでもっとも優れたパフォーマンスを発揮している」。

その理念は、3月1日に発売されたブランド初のレインウェアとなる最新コレクションにも表れている。ジョンソン氏によると、社のチームは競合製品に負けない性能を確保するために、3層構造のボンディングメンブレンなどの新素材を導入したという。また、新しい工場とも連携している。アライバルズではテクニカルギアとパフォーマンスギアに関して、ジョンソン氏がもっとも技術的に進んだメーカーだと言う中国の工場を使っている。カットソーなどのファッションアイテムについては、ロサンゼルスの工場と提携している。

ねらいはハードコアなアウトドアとハイファッションの中間

ジョンソン氏は、ジ・アライバルズをアウターウェアの両極端の中間に位置づけたいと考えている。一方はパタゴニアやアークテリクス(Arc’teryx)のようなブランドで、ハードコアなハイカーやアウトドア愛好家のあいだでは信頼が厚いが、都会的なハイファッションとはあまりいえない。ジョンソン氏は、これらの企業を冗談まじりに「グラノーラブランド(健康志向でアウトドア好きなブランド)」と呼ぶ。もう一方はモンクレール(Moncler)のようなラグジュアリーブランドで、ジョンソン氏は正反対のオーディエンスがいると話す。つまりハイファッションの人たちに愛されているが、実際の登山家たちにはあまり人気がないブランドだ。ジョンソン氏は、このふたつのあいだにあるホワイトスペースをアライバルズが埋められるのではないかと期待している。

いまのところ、アライバルズのオーディエンスの70%はニューヨーク在住で、その大半は女性だ。しかし2番目に多いのは西海岸で成長しているアライバルズ愛好家のコミュニティであり、そのほとんどが男性である。このジェンダーの違いは意図的なものではなく、異なるコミュニティの興味深い偶然にすぎないとジョンソン氏は言う。だが、西海岸の消費者層のほうが大きいのは目的にあった選択だった。

パフォーマンス重視のアウトドア愛好家の層を拡大するために、西海岸および東海岸の両方でコミュニティハイキングを主催したり、アウトドアで信頼性のあるコンテンツクリエイターと連携したりするなど、ジョンソン氏は現実世界でさまざまなイベントを行ってきた。ジ・アライバルズは、17万人以上のフォロワーがいて影響力のある匿名インスタグラマーの @organiclab.zip と、写真家リアム・フルノー氏のペンネームであるアドヴァンスド・ロック氏に製品を送った。両者とも日頃から高品質なアウトドア用品を紹介しており、アライバルズについても性能面で好意的な投稿をインスタグラムで行っていた。

「こうした人々はこの分野における検証者だ」とジョンソン氏は言う。「アークテリクスやパタゴニアのようなブランドを経験していて、本格的なアウトドアギアを見きわめる目を持っている。そうした人々に受け入れられることがブランドにとって本当に有効なのだ」。

ジ・アライバルズは、広告やクリエイティブのコンテンツも変化させ始めている。たとえば、西海岸、特に太平洋岸北西部での撮影を増やし、街中のストリートではなく自然のフィールドで製品を見せるようになった。次のキャンペーンは、2月中旬にポートランドで撮影されている。

パフォーマンスブランドとの競合は容易ではない

だが、マーケティング会社パワーデジタル(Power Digital)のファッション担当シニアアカウントディレクターであるハンナ・レーン氏いわく、パフォーマンス分野に進出するのは簡単ではない。レーン氏は、アウトドア愛好家はこれまで使ってきたブランドに対して忠実な傾向があるという。またジ・アライバルズは新たな消費者セグメントに進出することは可能だし、これまでも進出してきたが、パタゴニアのようなビッグブランドを追い落とすことは容易ではない。

「アライバルズが、客観的に測定できる自社製品独自の性能を紹介することで、すでに確立されているパフォーマンスブランドと競合できるかもしれない」とレーン氏は言う。

ジ・アライバルズはローンチ以降、主にD2Cで販売されており、卸売りではバーグドルフ・グッドマン(Bergdorf Goodman)のような一部の小売店を通じてごくわずかな割合を販売している。ジョンソン氏は、卸売りは小規模にとどめ、引き続きD2Cに注力したいと語った。ブランドは昨年若干の値上げを行ったが、今年は現在の価格を維持したいと考えている。

「当社はいまもインフレに関心を寄せている」ジョンソン氏は述べた。「現在、当社のコストは少し上がっているが、単にそれはメーカーが慎重になって材料や労働力の本当のコスト以上に請求しているためだ。しかし、これが当社にとってさらに問題になるのかどうか、いまはまだ注視しているところだ」。

[原文:The Arrivals wants to claim the gap between Patagonia and Moncler]

DANNY PARISI(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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