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全社的な人員削減のさなかでも、Amazonは即日配送への投資を続けており、実店舗の小売業者までもその輪に引き入れようとしている。
ウォールストリートジャーナルは2月26日、Amazonが集中化した都市の中心部にある小規模なフルフィルメントセンターに新たに投資し、即日配送サービスを拡大すると報じた。情報筋は、Amazonが昨年発表したプログラムの一部に、この目標を追求する一環として、ほかの実店舗小売業者を即日配送の野望に取り込もうとしていると、米モダンリテールに語った。
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同社は、ほかの小売業者の物理的な店舗を利用して、商品の注文に対して数時間以内に発送を行う方法として、「Amazon Today」と呼ばれるプログラムに、より多くの小売ブランドを積極的に採用しようと試みている。これは、Amazonが昨年行ったプレス発表の延長線上にあるようだ。eコマース大手である同社が行ったこの発表によれば、指定された大都市区域のプライム(Prime)メンバーは、アパレルカジュアルのパックサン(PacSun)やサプリメント小売のGNCなど、このプログラムに参加しているブランドのアイテムの配送を即日受け取ることができる。しかしその時点で、Amazonにはこのプログラムの正式名称がなかった。同社は現在、Amazon Todayというブランド名のもと、この新しいB2B配送プログラムに参加するブランドと小売業者を積極的に採用しているようだ。これによって同社は、ゴーパフ(Gopuff)やゴリラズ(Gorillas)などの新興企業に倣おうとしている。
小売店舗を利用した配送ネットワーク
たとえばAmazonは、1月に飲料ブランドのビタココ(Vita Coco)に連絡を取り、Amazon Todayプログラムについて話し合った。ビタココは独自の店舗を保有していないが、Amazonはビタココが使用している店舗と配送センターについて詳しく知りたいと考えた。Amazonはそれらを活用してTodayに参加小売業者のリストを拡充させることに興味を持った。
「Amazonの顧客は迅速な配送を求めている。同社が説明したのは、基本的に、Amazonのフルフィルメントセンターで配送する代わりにAmazon Todayモデルを利用するということだった」と、ビタココのAmazonアクセラレーションマネージャーを務めるマエ・ウェン氏は述べる。プログラムの説明を受けたとき、同氏は「高速配送食料品店のようなモデル」だと感じたという。
「当社は、地域の小売店舗から即日配送を行う最新の配送プログラムについて、顧客やパートナーから良いフィードバックを受けたことに感激した。当社はAmazonの迅速な配送を使用し、顧客に対して、店舗内で受けられるのと同じパッケージングや、店舗固有のセレクションなどを提供できることに期待している」と、Amazonのスポークスパーソンを務めるローレン・サマハ氏は文書の声明で米モダンリテールに述べた。
小売店にとっての利点
大手の小売業者にとって、この拡大していくフルフィルメントプログラムは、ラストマイルでAmazonの労働力に依存する新しい流通チャネルとなり、一部の小売業者にとっては拠点が増えることにもなる。
この取り組みが昨年発表されたときの目標は、すでにAmazonで栄養サプリメントを購入している新規顧客とつながり、GNCブランドを紹介することだったと、最高情報責任者を務めるスコット・サーガー氏は語る。GNCが米国内に構える4800店舗がすべて登録されるわけではないが、大部分はプログラムに参加すると、同社は述べている。
サーガー氏は、Amazon Todayについて、顧客がオンラインで買い物をしている顧客にも、GNCの小売店の存在をもっと知ってもらうための方法だと表現している。「Amazonのバランスを調整している。以前は2日間以内の配送が新しいものだったが、今では誰もが2日間以内の配送を期待している。今度はAmazon Todayによって、誰もが『今日注文したのだから、今日中には届く』と期待するようになるだろう」。
GNCは当初発表された参加小売業者のひとつだが、Amazon TodayのB2Bパートナー用ページによると、Amazonは明らかにもっと多くの小売業者の加盟を求めている。Amazon Todayのページでは、「百万近いAmazonの顧客に即日到達できる」能力を目玉として、さらに多くの小売業者とブランドをこのプログラムに引き入れようとしている。
地域的なフルフィルメント
Amazonはこのプログラムにおいて、小売業者に対し、Amazonにサインアップして在庫を搭載した後、Amazonのプラットフォームで商品を販売するストアを立ち上げるよう求めている。
このプログラムの中心は、明らかに地域的なフルフィルメントであり、つまり、Amazon Todayに掲載されている商品は全国配送ができない。
ワンダーマントンプソン(Wunderman Thompson)のゴリラグループ(Gorilla Group)でコマース戦略リーダーおよびプログラムアーキテクトを務めるライアン・ダグラス氏によれば、この種のプログラムは、フルフィルメントに関してブランドが直面する共通の問題点を軽減できる可能性があるという。具体的には、Amazonのフルフィルメントセンターに商品を出荷する際、その商品がどこに送られるか、ブランドは口をはさめないということだ。
「このプログラムでは、売り手であるブランドが在庫の発送先を正確に指定することができないプログラムになっている」と、ダグラス氏は述べる。このようなプログラムは、特定の商品についての需要が高まり、Amazon Todayに参加している特定の小売店に在庫があることがわかっているブランドにとっては、助けになるかもしれない。
「各ブランドは、Amazonのフルフィルメント機能を活用したいと考えている」とダグラス氏は述べる。即日フルフィルメントのため小売業者と協力することで、「Amazonがまだ保有していないかもしれない」ホワイトスペースを埋めることができるかもしれない。
実用化の現実味
このようなプログラムが現実味を増していることは、ゴーパフ(Gopuff)のような企業の背筋を凍らせるかもしれない。過去2年間における迅速配送のコンビニエンスストアの台頭は、Amazonのフルフィルメント機能に潜むいくつかの落とし穴を示している。Amazonフレッシュにより、消費者は1日程度で食料品を注文できるようになったが、消費者が常に数時間で商品を入手できるようなサービスはまだ提供されていなかったのだ。
Amazonがコンタクトを取っていたのが、ビタココのような食料品ブランドだったことからも、同社は少なくとも、最初に公表したようなアパレルや家庭用品以外の小売業者の活用を検討しているようだ。
しかしながら、プログラムの全容はまだ明らかにされておらず、Amazonがゆっくりとテストして、最終的にお蔵入りになるテストのひとつで終わる可能性もある。
「このプログラムの結果は、どのような小売業者やブランドが参加するかに左右されるだろう」と、ダグラス氏は述べている。
[原文: Amazon Briefing: Amazon’s Today program wants to use other retail stores for same-day delivery]
Cale Guthrie Weissman、追加取材:Melissa Daniels(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Amazon