米国でギター需要増 背景にSNS – 後藤文俊

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■新型コロナウイルス感染拡大後、商品の売れ方に大きな偏りが生じていることがよく知られている。

昨年3月の国家非常事態が宣言された直後、トイレットペーパーやペーパータオル、ハンドサニタイザーなどの消毒剤がバカ売れし極端な品薄状態となった。

外出禁止令の州が増えるに伴い、売れ筋は食品カテゴリーにも及んだのだ。

パスタやコーンフレークなどのシリアルの日持ちする食品が売れ、ビタミンCリッチなオレンジジュースやニンニクも急激に品薄となった。

ストレス解消でアイスクリームやパンケーキ、スナック類に逃げる消費も目立っていた。

同時に自宅でパンを焼く人が増えキッチン家電のホームベーカリーも売れ筋になり、イースト菌も店頭から消えた。
リモートワークの急増でパソコンやノートブックパソコンも売れていた。リモートワークでは上半身だけ映すことでアパレルでもシャツが偏って売れていたのだ。

自宅にいる時間が長くなったことでフィットネス器具も売れる中、自転車ブームも起きた。自転車は1970年代に起こったオイルショック以来のバカ売れ状態となっていた。

多くはジムやスポーツクラブ、フィットネスクラブに行くことにまだ抵抗感が残っている。ポカポカ陽気の下、子供から大人まで家族全員で自転車で軽く身体を動かす人が急増していたのだ。

 これらの多くが今では売れ行きも落ち着いているが、いまだに売れ続けている商品がある。ギターなどの楽器類だ。

老舗ギターメーカーのフェンダーによるとパンデミック前の業界成長率は10%程度だった。フェンダーでは今年、35%の売上増を見込んでいるのだ。

しかもサプライチェーン問題がなければ売上が前代未聞の50%増になっていたという。これはフェンダーが行った調査にも現れている。

世界的なデータ分析企業であるユーガブ(YouGov)と共同で実施した「フェンダー・ニュー・ギタープレイヤー・ランドスケープ・アナリシス(Fender’s New Guitar Player Landscape Analysis)」によるとギターを始めたアメリカ人が過去2年間で1,600万人にも上った。

13〜64歳までの米国人口の約7%が、過去24ヵ月間にギターを始めたことが明らかになったのだ。

ギターを始めた動機として62%が新型コロナウイルスの影響を挙げ、ステイホームによって増えたオウチ時間を練習に当てたという人が77%もいたのだ。

フェンダーCEOアンディ・ムーニー氏は2年前「初心者の90%は1年目で練習を断念する」と話していた。ギターを購入してもビギナーは12ヶ月月以内で挫折するのだ。

このためフェンダーはオンラインギター学習システム「フェンダープレイ(Fender Play)」や、会員制によるアプリベースのサービスなどを提供、最近でも「ビギナーズ・ハブ(The Beginners Hub)」を立ち上げ、全くの初心者を支援している。

メーカーによるコンテンツ提供により、ギターを始める裾野が広がっている。

フェンダーの調査によると初心者の58%がスキルアップにTikTokを視聴し、48%が毎週オンライン・コンテンツを利用している。

毎日視聴している人は19%も上っており、フェンダーは新たにTikTokの公式アカウントを開設したのだ。

動画共有サイトが教材用コンテンツとして機能しているばかりではなく、ビギナーが腕前の進捗を披露する、発表の場としても使われている。

いまは誰でもかんたんにスマホで撮影でき、撮影した動画は手間もかからずSNSにアップロード可能だ。

初心者の家族や友人・知人は、通知を受け取った後、好きなときに好きなだけ演奏動画を視聴できる。

ピアノ発表会のようにきれいな格好をしたり、見る方もよそ行きの服で参加したりせず、時間も奪われず何も掛けずにかしこまる必要がない。

楽しく演奏する動画に刺激を受け、ギターなどを新たに始める人もでてくるのだ。SNSが楽器演奏の好循環を作りだし、プレーヤーが着実に増える環境となっている。

 ギター初心者の壁となるFコードを押さえられる人が増えれば、アフターコロナでもギターの売上が落ちることはないのだ。

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流通コンサルタントが弾くソロギター。ギター初心者にとって渡らなければならないキャズム(溝)の「Fコード」をちゃんと押さえている。

⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。ドリカムの中村正人さんが10月5日のブログで、新作CDの購入をファンに呼び掛けていたことが話題になっていました。売上不振でワースト記録を更新しそうだとかで、異例の懇願になったのです。ネットでは「まだCDの売り上げにこだわってるんだ」とか「アーティストからこういう呼びかけをしないといけない時代なんだね。そう考えると悲しくなってきた」など厳しい意見が飛び交っています。この嘆願で一時的に売上は伸びたようですが、もっとできることはあるのではと思っています。

その一つがイベント。ギターを弾くあいみょんの人気にオウチ時間が増えたことで、日本でもギターを始める若い女性が増えたと聞きます。ならば吉田美和さんにギターを始めてもらい、弾き語りの進捗を「次のせ〜の!で、ギター始めました」としてネット公開すればいい。YouTube等にはギターの教え方が上手い人がいるので、その方に講師になってもらって毎週、吉田美和さんが習熟度を披露するのです。めっちゃイイ歌声に発展途上のギターでバズります(笑)。

 「次のせ〜の!で」のガンバル姿に共感し、ギターを始める人が増えます。CDの歌詞にはコード譜も掲載し、落ち込む姿を映した練習動画に各楽器のプロ仕様パート譜までアクセスできる価値特典をつければいいでしょう。「商品三分に売り七分」の売りに創意工夫をすれば、ワースト記録は更新しません。

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