ブルームバーグ、大手オーディオメディアと ポッドキャスト 番組をスタート:「意思決定層にリーチする重要な存在だ」

DIGIDAY

ビジネスパブリッシャー、ブルームバーグ・メディア(Bloomberg Media)とオーディオメディア界大手、アイハートメディア(iHeartMedia)は2022年、5つのポッドキャスト新番組を開始する。両社はこの共同制作および配給契約を通じ、今後3年の内に10以上の新たなオリジナル番組を投入していく。

「オーディエンスの拡大については、以前からその手段を探っており、これは完璧だと考えた」と、ブルームバーグのデジタル部門エグゼクティブエディター、ケイティ・ボイス氏は話す。同社のポッドキャストオーディエンスは前年比11%増だったと、広報は語った。具体的な数字は明かされなかった。

この提携が発表されたのは2021年5月のことであり、新番組の第一群は2021年中に投入される予定だったが、ブルームバーグ・メディアとアイハートメディアは2022年5月27日、最初の5番組の詳細と、第一弾の登場は1ヶ月後になる旨を発表した。新番組群は日刊および週刊のニュースものと、ナラティブ(物語)形式の期間限定ものからなる。一方、20以上あるブルームバーグ・メディアの既存番組は、すでにアイハートメディア・ネットワーク(iHeartPodcast Network)で配給されており、アイハートラジオ(iHeartRadio)をはじめ、ポッドキャストが聞ける所では、どこでも耳にできる――これは同社の新番組群も然りだ。

開始が大幅に遅れた理由については、 「弊社のニュース編集室および対象範囲の幅広さを体現するポッドキャスト番組をアイハートメディアと制作したい、との強い思いがあり、さまざまなフォーマットやアイデアを掘り下げるなかで、相応の時間が必要とされた」との回答が同社の広報から得られた。

提携によって双方が得るもの

ブルームバーグ・メディアの新番組群については、アイハートメディアがマーケティングおよび配給するほか、広告営業も行なう。一方、ブルームバーグ・メディアはアイハートメディアの社内マーケティング、配給、広告営業のリソースにアクセスできるとともに、ビジネス関係者が中心の既存読者およびオーディエンスの枠に留まらない、幅広い層にリーチする機会も手にできる。

新規および既存のポッドキャスト番組の広告インベントリについては、ブルームバーグ・メディアとアイハートメディアの両社で行なうと、ブルームバーグ・メディアの広報は語った。各社が販売した広告について、その収益を両社で共有するか、といった金銭面の契約条項に関しては、明かされなかった。

「アイハートメディアには、ブルームバーグ・メディアにおそらく馴染みのない大勢の人々が付いている。だからこそ、そうした人々の耳に、我々が素晴らしいと考えるものを触れさせられれば、彼らはきっと、我々が提供するほかのものも掘り下げてくれるはずだ」と、ブルームバーグ・メディアのデジタル部門シニアエグゼクティブエディター、ジャレド・サンドバーグ氏は話す。

アイハートメディアは、リーチに関していえば、最大規模のポッドキャストネットワークであり、Podtrac(ポッドトラック)の統計によると、2022年現在、配信中の番組数は632以上、ユニーク月間リスナー数は3100万人以上、全世界のダウンロードおよびストリーミング数は4億4100万回を数える。最新の決算発表によれば、アイハートメディアの2022年度第1四半期におけるポッドキャスト収益は、前年同期比79%増の6900万ドル(約86億2500万円)だった。

最初の5番組

この提携による最初の番組『Bloomberg Crypto(ブルームバーグ・クリプト)』は、6月から配信される。これは日刊番組で、同社ニュース編集室のクリプト担当マネージングディレクター、ステイシー=マリー・イシュマエル氏がホストを務める。7月には、政治的過激主義および田舎町の暮らしをテーマにした番組『Bedrock, USA(ベッドロック、USA)』が登場する。この期間限定のシリーズ番組は、「Bloomberg CityLab(ブルームバーグ・シティラボ)」の記者ローラ・ブリス氏がホストを務める。

続いて9月に、2番組の配信を予定している――その1つ『In Trust(イン・トラスト)』は、オクラホマ州オーセージ郡屈指の裕福な一家の土地所有に関する諸々を追う。もう1つ『The Big Take(ザ・ビッグ・テイク)』はその日の注目ニュースを扱う日刊番組であり、ウェストン・コソヴァ氏がホストを務める。5つめの番組『Crash Course(クラッシュ・コース)』は10月の配信開始を予定しており、ホストは「Bloomberg Opinion(ブルームバーグ・オピニオン)」のシニアコラムニスト、ティム・オブライエン氏が務める。

「ご覧のとおり、これら5つの番組はいずれも方向性が異なる。つまり、あらゆるフォーマットを試していく、ということだ。日刊番組が2つあるが、両者の性質はまったく異なっている。長尺のナラティブな、複数のエピソードからなる番組も2つあり、こちらも両者の性質は異なっているが、我々が非常に高い関心を抱く、社会的に重要な物語である点は共通している。トークとナラティブを融合した番組も1つある」と、サンドバーグ氏は話す。

新番組群のこの多様性には、ブルームバーグ・メディアがオーディエンスを拡張するべく、これまでとは異なる視点のコンテンツを導入しようという姿勢が顕著に現れている」と、エージェンシー、ヴェリトーン・ワン(Veritone One)のポッドキャストおよびインフルエンサーマーケティング部門SVPスティーブン・スミーク氏は指摘する。「この提携はコアなファン層を越えてオーディエンスを拡大しようとするブルームバーグに興味深い視点を付与するものだと、私は見ている」。

ブルームバーグ・メディアとアイハートメディアはいずれも、これら新番組のマーケティング戦略として、番組ホストらをアイハートメディアの他のポッドキャスト番組にゲスト出演させるとともに、アイハートメディア・ポッドキャストネットワークで配信中の、ニュースシリーズやそれに近い番組で宣伝を打っていくという。

オーディエンスに発見してもらう難しさを嘆くポッドキャスター勢が少なくないなか、このような宣伝活動は今回の提携の鍵を握る点のひとつだ。「新たなコンテンツには、常に懸念が付いて回る――『マーケティングとプロモーションはどうする?』だ。日々、非常に多くの番組が登場している。そのなかで目立たせるのは、困難を極める」とスミーク氏。「登場する番組の数が増えるほど、その混雑から抜け出すためのプロモーション努力がなおいっそう必要となるだろう」。

経営意思決定者の魅力

ビジネスポッドキャストは音声広告主の間で人気が高い。「我々は常に質の高いビジネスコンテンツを探し求めている。理由は、リーチするべきオーディエンスがそこにいるからだ」とスミーク氏は話す。なかでも、経営判断を下すリーダーらへのリーチは、企業間取引(B2B)および小規模企業との取引を営む企業にとって極めて重要だと、氏は言い添える。この層へのリーチは「非常に難しく」、彼らへの「従来の」リーチ手段であったテレビ、ラジオCMおよび雑誌広告などがメディア消費形態としての人気をますます落としている今、特に難しいと、スミーク氏は話す。

スミーク氏いわく、「それゆえ、無広告のサブスクリプションサービスに走る経営意思決定者にリーチするために、ポッドキャストは極めて重要な存在だ」。

ただし、経営判断を下す者たちへのターゲティングが広告主にとって有益なのは確かだが、オーディエンスプールが「あまりに小さいと、収益化が困難になりかねないのもまた事実だ」とスミーク氏は指摘する。「アイハートを絡めることで、収益潜在力が格段に高まるとともに、供給、インベントリ管理、収益化の点において、両社には最上質なプロダクトの増産および利用が可能となる」。

[原文:Bloomberg Media will debut five new podcasts with iHeartMedia this year

(翻訳:SI Japan、編集:猿渡さとみ)

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