大手テック企業を解雇された人材が行き着く先は?:リテールメディアとインハウス化を進めるブランドが受け皿に

DIGIDAY

景気全体で起きている逆風に加えて、プライバシー対策の本格的な変革が起きているなか、デジタルメディア業界における人員削減がここ数週間激化。FacebookやGoogleのような大手テック企業でさえ例外ではなく、市場には警戒の空気が流れている。

驚異的な数のレイオフが発生したことで、何万人もの労働者が高給の雇用を求めるという状況だ。Amazon、メタ(Meta)、マイクロソフト(Microsoft)、スナップ(Snap)、Twitterを解雇された人材だけで約2万5000人が市場に放出されたことになる。さらなる経済的困難が待ち受けており、それらの人々が今後得られる職について高望みはできないだろう。

スタートアップにいくなら、仕事観を改めなければいけない

それでも、キャリアを取り戻そうとする人々には希望の印がいくつかある。複数の情報筋がDIGIDAYに語ったところによると、現在の苦難の波から新世代のスタートアップが花開く可能性がある。また、広告市場への新規参入者の野心が高まっていることも、雇用機会の源になる可能性があるという。

ただし、新しく職を得た先のスタートアップで、FacebookやGoogleのような企業に匹敵する給与を手にすることを期待している人たちは、考えを改める必要があるだろう。複数の情報筋が、これらのテック大手出身の候補者たちは独特の問題を抱えている可能性があると指摘する。

「大企業はパンデミックのなかで多くの人材を採用した。しかし、多くの人が『隠れる』ために大企業へ行ったという認識がある」とスタートアップ界のベテラン幹部であるジェイ・スティーブンズ氏は述べ、「我々は誰しも、近年の流行語である『静かな退職』(生活の中心を仕事にはせず、業務範囲における必要最低限の仕事だけをするという考え)という言葉を耳にしたことがあるだろう」と続けた。

「仕事のやり方を再調整する必要がある」

別の情報筋は、「大手テック企業では、一人ひとりの社員の創意工夫を奨励する文化を抱えていない」と指摘した。また、あるスタートアップ企業のCEOは「FacebookやGoogleのセールスパーソンは雇わない」という。

「柔軟性のないシステムで何年も過ごしてきた人は、仕事のやり方を再調整する必要がある。スタートアップでは自分に会うために人がわざわざやって来るよう役職はそうそうないし、ミーティングを設定するだけでも必死になる必要がある」。

3ピラーズ・リクルーティング(3 Pillars Recruiting)のマネージングディレクターであるダン・ゴールドスミス氏も、 「大手テックの営業担当者は、実際には何も販売をしていないという認識が世間にはある」と述べているが、彼は後に、「ほかの場所には存在しないような、途方もなく洗練されたプラットフォームと影響力を持つ(ために営業行為を必要としない)人々が世の中にはいる」と付け加えた。

しかし、スティーブンズ氏は、ビッグテックの領域で働いた人々のすべてが、新たな仕事を始めるにあたって必要なスキルを欠いているわけではないという。とくに買収によってビッグテックに行き着いた人々はそれに当たらないようだ。「そういった場所における堅苦しさを嫌って去った人々を多く知っている。私は過去にGoogleから人を雇ったことがあるが、彼らは優秀であり、我々が成長し、上場するのを助けてくれた。新しい環境になれる期間が必要であり、かつコストは高かったがね」と彼は付け加えた。

リテールメディアやCTV分野で雇用が活発となる可能性

一方、複数の情報筋は、最近の大手ハイテク企業のレイオフによって雇用市場に参入した人々は、広告への野心が急拡大している同様の大手企業に流入する可能性も指摘している。AmazonAppleがその例として指摘された。

ただし、これとは別に複数の情報筋によると、同様の求職者たちは、急速に台頭しているリテールメディア分野で最もチャンスがあるかもしれないという。さらには人気が集まるCTV業界よりも、企業の「社内業務」に参加する可能性さえあるという。

3ピラーズ・リクルーティングのゴールドスミス氏は、「業界に関係なく、デジタルメディア業務を自社内に構築しようとしている企業こそが、ビッグテック退職者に対して、賢く、かつ実質的な動きを取ることができるだろう。そのような企業にとって、GoogleやFacebookで働いていた人を雇用するチャンスは非常にまれだ」と指摘する。「小売業者たちは独自のメディア業務を構築しようとしていることは素晴らしいが、(将来の雇用回復)はメディアだけではなく、それ以上の分野や業務からもたらされると私は信じている」。

一方、ソーシャルメディア、プログラマティック、テレビの分野での経験を持つスティーブンズ氏は、CTVの分野に移行しようとしている企業が、大手企業の経歴を持つ候補者を探す可能性があると指摘した。

「CTVが難しいのは、テレビに関する伝統的な知識ベースを持つ人材が本当に必要とされているからだ。なぜなら、テレビからこそ予算を引き出さないといけないからだ」と彼は指摘した。「伝統的なテレビ業界で解雇された人がいれば、CTV参入企業はそこから雇用しようとするだろう」。

[原文:Experts tip in-house operations and retail media as the most fertile landscape for new job market entrants

Ronan Shields(翻訳:塚本 紺、編集:島田涼平)

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