TikTokやBingが台頭するも、広告主は Google にコミット:「Googleは依然として実証済みの手法だ」

DIGIDAY

デジタル広告のコストは上がり続け、オンライン広告市場は飽和状態になりつつあり、人々がインターネットで情報を探す方法は変化し、Google以外の新しい検索方法が普及しつつある。そのため、広告主は検索広告への予算をGoogleから分散させることを考えるようになっていると、エージェンシー幹部たちは言う。

マイクロソフト(Microsoft)の「Bing」の新しいAI統合やTikTokの機能など、Google以外の検索広告の選択肢を提示するプラットフォームが登場し、検索広告全体に断片化への亀裂が見え始めている。しかし、広告主は、少なくともGoogleと同程度、あるいはGoogleの代わりとして使えるくらい、ブランドの安全性と拡張性を証明されるまでは、そうした選択肢に資金を投入する準備ができていないと言う。

検索の未来が意味するもの

レイン・ザ・グロース・エージェンシー(Rain the Growth Agency)の検索広告およびYouTube担当ディレクターであるデビッド・ゲルト氏は、米DIGIDAYへの電子メールでの声明で次のように書いている。「Googleは依然として、ファネルの最下部に到達するための実証済みの手法であり、これは一夜にして変わるものではない。しかし、ユーザーが行動を変化させるにつれて、広告主が予算を他の場所に費やす機会も出てくるだろう」

マーケティングがそうであるように、広告主はオーディエンスを追いかけて、彼らが最も頻繁に移る場所に行く。その秘訣は、新興のスペースやプラットフォームにいち早く参入し、より少ない広告費で発展途上のオーディエンスを利益につなげることだ。しかし、オンラインでの消費習慣は頻繁に変化するため、オーディエンスがそこに留まることに賭けるのは容易ではない。

それでも、人々がものを探す方法は変化している。これまでは、Googleが最もよく使われる検索エンジンだった。現在では、TikTokやYouTubeが動画チュートリアルのようなものの検索プラットフォームとして機能し、検索は断片化している。Reddit(レディット)やAmazonは商品情報検索にはなくてはならない。一方、マイクロソフトの新しい「ChatGPT」とAIを用いた検索機能は、一方的な検索とは対照的に、よりニュアンスのある会話を可能にしている。いまや人々がブランドや製品を見つける方法はたくさんあり、広告主は検索の未来が広告にとって何を意味するのかを再考するようになっている。

分散するGoogleの優位性

イーマーケター(eMarketer)によると、2023年、Googleは米国の検索広告収入の半分以上を占めると予想されている。グプタ・メディア(Gupta Media)では、eコマースや小売業のクライアントは、広告予算の約30%を検索広告に費やしており、場合によっては、この数字は10%~30%に変わることもある。グプタ・メディアのアカウントディレクターであるフィル・デコトー氏は、「それでも、その予算の大部分はGoogleに支払われている」と述べる。

ティヌイティ(Tinuiti)では、新興のパフォーマンス重視のブランドは、予算の60%~70%を検索広告に費やしている。ティヌイティの検索広告担当バイスプレジデントであるアーロン・レビー氏によると、この数字はより成熟したブランドでは10%~15%と推定されるという。ここでもまた、予算の大半はGoogleに支払われている(デコトー氏もレビー氏も、正確な支出額や具体的なチャネル名を提示しなかった)。

しかし、CPCの上昇(詳細については、こちらを参照)、デジタル広告市場の飽和、検索広告スペースへの新規参入者の増加により、エージェンシー幹部たちは、これらの新しいオプションを検討している──そして、Googleから予算を移動する可能性もあると述べる。

デコトー氏は、具体名は上げなかったものの、「断片化は、マインドシェアにおけるGoogleの優位性を少しづつ分散化しており、それを利用する他のツールも出てきている。最終的にはそれがマーケットシェアの低下につながるかもしれない」と指摘する。

検索の多様化

マイクロソフトとTikTokの参入。

2023年2月初め、マイクロソフトは、Google検索の競合となりうるChatGPTを搭載した検索エンジンBingを発表した。AIを統合することで、Bingは、キーワード検索とは対照的に、ユーザーが質問できる、より会話ができる検索エンジンになると期待されている。

そして、ソーシャルメディアの現在におけるスターであるTikTokは、ここ数か月で勢いを増している。TikTokの検索広告は、Z世代の消費者にリーチするための実験的なマーケティングチャネルと見られているが、メディアバイヤーやエージェンシーの幹部は、2023年後半にはTikTokが焦点になると予想している。

TikTokは、広告費における大きなシェアを占めるようになったが、それは検索やパフォーマンスよりもむしろブランドマーケティングの問題だと広告主は言う。デコトー氏は、最終的には、予算はパフォーマンスのあるところに行くだろう、と話す。TikTokでの検索が効率的になり、Googleの優位性に挑むのに十分な規模になれば、予算もついてくるだろうとデコトー氏は付け加える。

YouTube、Reddit、Amazonはそれぞれに、Googleに対して独自の脅威を与えている。ここでも、彼らがその規模と効果を証明できれば、と広告主たちは言っている。

「我々は通常、Googleに努力のすべてを集中させている。データセットが大きく、テストが迅速に行われ、より多くを学ぶことができるからだ。そこでうまくいったことをマイクロソフトに持ち込むのが通常だ」とレビー氏は言う。「しかし、それは小規模でのことであり、重要な影響を与えることはない」(レビー氏は、広告費の詳細を明らかにしなかった)。

検索広告の選択肢が増えれば増えるほど、ブランドセーフティ、成功の指標、規模などの面で未知の部分が多くなり、すべては実験に委ねられることになる、と広告主たちは言う。すなわち、レビー氏が言うように、新たな検索オプションへの関心の高まりについて、「(広告主が)完成する前にオーブンから取り出してしまったケーキにならないことを望む」ということだ。

経済への懸念

また、経済の不確実性が高まるにつれ、テストや学習以上に実験的チャネルに費用を割く意欲が薄れていくかもしれない。そうなると当面、検索広告費の大部分はGoogleに流れ続けるだろう。

「最大の変化は、この不透明な環境下で、広告主は広告費を確実に回収するために、より厳しくなっていることだ」と、マーケティング会社プロダクト(Product)の創業者兼会長であるアーロン・シャピロ氏は言う。「追跡可能でなければ、彼らはそこで広告費を使わないだろう」

検索広告に費やす広告費よりも、検索広告の将来に関わる興味の拡大のほうが大きい。検索の機会が拡大し、より洗練されたものになり、さらにコストが下がる可能性があれば、それが変わる可能性があると広告主は言う。

いまのところそれは、検索エンジンと検索広告の勢力図が変わる可能性があると見られている、とデジタル広告エージェンシーのバーバリアン(Barbarian)で最高技術責任者を務めるローレンス・エドモンドソン氏は述べる。

「我々はみな、何が起こるか息をひそめて見守っている」とエドモンドソン氏は語った。

[原文:Advertisers remain committed to Google as TikTok and AI-powered Bing try to become search competitors

Kimeko McCoy(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:分島翔平)

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