増える TikTok ファーストのコンテンツ制作、専門チーム立ち上げも:「TikTokに全力投球しただけで、売上が3倍に」

DIGIDAY

今日もまた、TikTokが広告費を吸い上げる兆しが見える。エージェンシーは今、真っ先に、短編動画アプリTikTokの動画を制作している。

TikTokのキャンペーンが、Facebookやインスタグラムで公開されたコンテンツの焼き直しだった時代は終わった。むしろ、マーケターは増加中の若いオーディエンスを追い求め、TikTokでコンテンツを公開することをますます優先している。

広告主がこの変化に対応できるよう、エージェンシーはTikTok専門のコンテンツ制作部門やチームを立ち上げ始めている。

TikTokファーストのコンテンツ制作

デジタルマーケティングエージェンシーのランク・セキュア(Rank Secure)はその好例だ。ランク・セキュアは3カ月前、TikTokファーストのコンテンツ制作に切り替えた。つまり、ほかのタイプのチャネルではなく、TikTokのコンセプトとフォーマットに基づいて、コンテンツが開発されるようになったということだ。技術的に大きな変更はなかったが、コンテンツの企画、制作方法は変わった。通常、TikTokの動画は長くても3分なので(ただし、2月に上限が10分まで拡大)、ランク・セキュアはキャンペーンのコンセプトにこれまで以上の創意工夫を凝らしている。

ランク・セキュアのようなエージェンシーが長いあいだ、ほかのプラットフォームで公開した動画をTikTokで再利用してきた理由は容易に理解できる。TikTokはほかの有名ソーシャルネットワークの中核となっている短編動画という前提を共有しているからだ。ただし、TikTokのユーザーは異なる行動を取る。フルスクリーンの動画は音声付きで視聴され、YouTubeやインスタグラムでよく目にするものより、はるかに洗練されていない動画が多い。

ランク・セキュアのCEO、バルーク・ラブンスキー氏は、「YouTubeでは率直なメッセージを伝えるが、TikTokのメッセージにはユーモアや風刺を盛り込む」と話す。「TikTokに切り替える前はYouTubeを使っていたが、YouTubeは衰退しつつあるプラットフォームだと思う。それでもYouTubeを使い続けているのは、少し高い年齢層に合う長尺のコンテンツを提供するためだ」。

強みを活かしたマーケティング手法

ソーシャルメディア管理プラットフォームのバッファ(Buffer)によれば、Facebookの月間アクティブユーザー数は29億人、YouTubeは22億人、インスタグラムは20億人、TikTokは10億人だ。

オーディエンスが、エキゾチックな場所や完璧に編集されたスポンサーだらけの動画を見ることに慣れているYouTubeやインスタグラムと異なり、TikTokのオーディエンスはTikTokならではのはるかに自然で面白いコンテンツを評価しているようだ。

当然ながら、その強みを生かせば、マーケティングはうまくいく。

「現時点でトラフィックが約22%増加し、共有される頻度も増えているため、効果は出ているようだ」とラブンスキー氏は話す。ただし、具体的な数字は不明だ。

結果、売上が3倍になった例も

2019年にTikTokに乗り換えたマーケティングエージェンシーのソーシャルティー・プロ(Socialty Pro)でも、同様の成果が出ている。

ソーシャルティー・プロはTikTokで約62万4000人のフォロワーを獲得しており、オーガニックなマーケティング活動の結果、クライアントの75%がTikTokから直接アプローチしてくるようになった。「今年に入ってから、TikTokに全力投球しただけで、売上が3倍になった」とCEOのオースティン・アームストロング氏は話す。

これらの結果は、このような賭けを成功させるには、TikTokの制作プロセスに適応し、さまざまなニュアンスを考慮することが重要であることを物語っている。

制作・運営面で迅速な対応が必要に

M&Cサーチパフォーマンス(M&C Saatchi Performance)のマネージングパートナー、ジェニファー・スドー氏は、TikTokの台頭によって、コンテンツクリエイターの管理に多くのリソースを割くことを求められるエージェンシーが増えたと述べている。M&Cサーチパフォーマンス自身も例外ではない。

「従来、動画はひとつの制作チームで制作していたが、今はかなり状況が変わっている」とスドー氏は話す。「クリエイターたちは(TikTokの)言葉をよく知っており、それぞれ独自の方法で製品やサービスを宣伝しているため、さまざまなタイプのコンテンツを素早くテストできる」。

グラビティ・ロード(Gravity Road)のマネージングディレクター、ジャシンタ・フォール氏も同じように考えている。フォール氏によれば、制作、運営の面では、以前よりはるかに迅速な対応が必要になったという。パンデミック以前、他のプラットフォームで1カ月だった期限が、現在、TikTokでは長くて8~10日だ。

「ブリーフへの対応、クリエイティブのアイデア出しから納品、ポストプロダクションまで、従来のエージェンシーの構造はもう通用しない」とフォール氏は話す。「アイデアを生み出すという点では、従来よりはるかに分野横断的で、コラボレーションが多い。TikTokの制作はニュースルームのアプローチに近い」。

フォール氏のチームは、TikTokのエージェンシーパートナーであるという強みを持っている。つまり、新機能にいち早くアクセスできるということだ。そのため、フォール氏らはプラットフォームから離れ、スタジオにこもるのではなく、プラットフォームのトレンドサウンドを使い、可能な限りアプリ内で編集し、さらに、クリエイターと共同作業している。「最初に挙げたやり方は、インスタグラムやYouTubeの洗練された投稿で起こりがちだ」。

TikTokに賭け始めた各社

メディアエージェンシーのDDAグループ(DDA Group)も同じような動きをしている。DDAグループは5カ月前にTikTokスタジオを立ち上げ、ブランドに合ったTikTok戦略を構築したり、反応が期待できるTikTok専用コンテンツを制作したりしている。

ムーバーズ・アンド・シェイカーズ(Movers+Shakers)は早期参入者のひとつで、2019年、TikTokネイティブのブランデッドミュージックを制作するため、自社のブランド、ミュージックスタジオに新たな機能を追加した。そして、e.l.f.コスメティックス(e.l.f. Cosmetics)との初めてのTikTokキャンペーンのためにオリジナル曲を制作。この曲はその後、SpotifyとiTunesでリリースされ、合わせて2000万回ストリーミングされた。

ソーシャルファーストのクリエイティブエージェンシー、ムーバーズ+シェーカーズのCEO兼共同創業者、エバン・ホロウィッツ氏は、「e.l.f.のアイズ・リップス・フェイス(#eyeslipsface)チャレンジは、TikTokで最もバイラル化したキャンペーンの記録を樹立した」と振り返る。

このチャレンジは再生回数70億回を達成し、リゾ、エレン・デジェネレス、リース・ウィザースプーンといったセレブリティの自主参加を含め、500万本ものユーザー生成動画が投稿された。

「これをきっかけに、TikTokという新たな道がマーケターの地図に描かれた。TikTokにおけるマーケティングというプレイブックで、e.l.f.が先頭に立つ手助けを私たちが行ったためだ」とホロウィッツ氏は話す。

2019年10月、ソーシャルティー・プロもTikTokにすべてを賭けることにした。

TikTokの専門家でもあるCEOのアームストロング氏は、「私たちは常に最先端であり続け、変化を受け入れ、手本を示すことを心掛けている」と話す。「誰かの心を動かすオーガニックなコンテンツをつくる方が、はるかにやりがいがある」。

[原文:Prioritizing TikTok, agencies move away from creating content for Instagram, YouTube

Krystal Scanlon(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:黒田千聖)

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