新しい規制は サステナブル ファッション への経済の影響を相殺できるのか?:米国よりも進んでいるEUの法律

DIGIDAY

持続可能性にフォーカスしたファッションブランドは、ブランドがより循環的なモデルに移行することの重要性、それが環境に及ぼすポジティブな影響、現在の消費者からの需要について語り続けている。しかし、循環性を持つには多額の投資が必要であり、少なくとも衣服の回収とリサイクルを処理できるパートナーを確保しなければならない。

しかし、すでに循環性を取り入れている企業や、循環性を導入したい他社を支援している企業は、米国とEUでの新しい法律と政策の波がこの分野の発展に役立つことを願っている。

米国より進んでいるEUの循環経済への取り組み

たとえば、EUでは、新循環経済行動計画の一環として、3月に、ヨーロッパ製の全商品に対してデジタルパスポートの作成を含む一連の法律が提案された。このパスポートは製品のライフサイクルを示し、製品を追跡可能にするものである。したがって、顧客は標準化された方法で製品の耐久性を比較して持続可能性を評価することができるようになる。数回着たら廃棄するようなファストファッション製品は、長い耐用年数とリサイクルのしやすさを意図して製造された製品と比較して、低い評価を受けることになる。

循環材料会社、リカバー(Recover)に1億ドル(約133億円)を投資したばかりのストーリースリー・キャピタル(Story3 Capital)のマネージングパートナー、ピーター・コミサール氏は、製品の持続可能性に関する法律ではEUは米国よりも進んでいると述べている。

「プライマーク(Primark)やインディテックス(Inditex)のようなヨーロッパのブランドは、この分野についてもっと先進的だ」とコミサール氏。「また、(ヨーロッパ現地の)政府機関は循環性と持続可能性に関してもっと多くの規制を推進している。(他国の)政府から米国の関係者にもっと圧力がかけられることを願っている」。

州法、リサイクルコットン、業界団体の設立など米国の取り組み

米国の最近の法律を見ると状況はその方向に進んでいるようだ。ニューヨークで提案されているファッション持続可能性法案は、ニューヨークで事業を行うファッションブランドや小売業者に対して持続可能性のプロセスを開示し、その結果を追跡することを義務付けるというものだ。また、10月にはカリフォルニア州では、プラスチック廃棄物の発生を制限し、堆肥化やリサイクルが可能な素材に適切なラベル付けを義務付ける一連の循環性法が可決されている。

リカバーのCEO、アルフレド・フェレ氏は、ファッションブランドが使う素材に対してもっと責任を負うように義務付ける規制が再び施行されるようになれば、同社がリサイクルコットンを提供できるようになると述べている。コミッサール氏によると、リカバーは2026年までに35万メートルトンのコットンをリサイクルすることを目標に、今年の残りの期間に対してすでに5億ドル(約68億円)の受注を獲得しているという。

循環分野のほかの企業も多くの規制や法律を求めている。6月8日には、ザ・リアルリアル(The RealReal)、ファッションファイル(Fashionphile)、スレッドアップ(ThredUp)などの再販会社や、レント・ザ・ランウェイ(Rent the Runway)などのレンタル会社を含む米国の11社が、アメリカン・サーキュラー・テキスタイル・グループ(American Circular Textiles Group)を設立した。同グループが掲げる目標は、アメリカのファッション業界の持続可能と循環性を高めるのに役立つ政策提案を作成することであり、最初の提案は今年後半に発表予定だという。

レント・ザ・ランウェイのサステナビリティ責任者、メーガン・ファレル氏は次のように述べている。「我々の協働を次のレベルに引き上げるためには、服の寿命が終わったときに繊維のリサイクルと再利用を拡大できるソリューションが必要だ」。

経済状況の悪化は懸念要素

しかし、ファッション業界のあらゆる要素と同様に、悪化している米国経済状況によって循環性の問題が引き起こされるかもしれない。循環型ビジネスモデルは従来の安価な材料を使用するよりも費用がかかる可能性があり、経済的な圧力を感じるブランドは収益のためにコストの高い持続可能性の目標を断念するようなことがあるかもしれない。

しかし、コミサール氏は、循環性への推進が十分強力になり(持続可能性の目標を断念したいという)衝動に耐えられることを願っているという。この点こそが、リカバーがバージンコットンと同じかそれに近いコストでリサイクルコットンを提供することが重要な理由なのだ。

「ブランドがマージンの圧力を感じている今の環境では、コストが莫大になったり導入が困難な場合には、持続可能な行動にフォーカスするのは難しくなる」とコミサール氏。

しかし、米国の政策変更は遅いため、ブランドは何かを強制される前に行動を起こすべきだと述べているのは、サーキュラーアパレルブランド、フォーデイズ(For Days)の創業者、クリスティ・ケイラー氏である。

ケイラー氏は「政策というのは極めて効果がある」と、今月初めに開催されたGlossyファッション&ラグジュアリーサミットで語っている。「EUが行っていることはすばらしい。それは、我々がどう進んでいくべきかについての合図であり、ロードマップだ。しかし、米国ではこれまでのところ東海岸と西海岸の動きに限られている。米国では政策の変更には時間がかかる。我々が消費者の牽引力を高め、循環的で持続可能なファッションにドルが費やされていることを示せれば、それは循環性への取り組みを推進するために、政策以外で我々ができるもっとも効果的なことだ」。

[原文:Can new regulations offset the economy’s impact on sustainable fashion?

DANNY PARISI(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)

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