「男の乳首」だけじゃない一見すると無駄な人体の部位10選

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19世紀後半ごろに活躍したドイツの解剖学者であるロバート・ヴィーダーハイムは、自著「The Structure of Man」の中で、人間には86の痕跡器官があると発表しました。これ以降も科学者は人体のさまざまな部位で新しい発見をし続けており、その中から人体には不必要とみなされているものや、その有用性について専門家の間で議論が続けられているものを、科学系ニュースサイトのLive Scienceが10個選んで解説しました。

10 body parts that are useless in humans (or maybe not) | Live Science
https://www.livescience.com/useless-human-body-parts

◆01:男性の乳首
母親の胎内で発生した人間の胚は、最初全ての部位を同様に発育させますが、生後7週目ごろから男女の分岐が始まるとのこと。具体的には、性染色体であるY染色体にある「SRY」という遺伝子が働いて、男性の生殖器の発達や女性の生殖器の消失などが開始されます。


しかし、乳首が形成されるのはSRY遺伝子が活性化される前なので、子どもに授乳をする機会が全くない男性も乳首を持って生まれてきます。「とはいえ、男性の乳首も性的な刺激に反応することが多いので、全く役に立たないという意見には反対の人もいるかもしれません」とLive Scienceはコメントしました。

◆02:親知らず
人間の第3大臼歯は日本では「親知らず」として知られているほか、分別がつく時期に生えることから英語圏では「wisdom tooth(知恵の歯)」と呼ばれています。世界の22%の人が、合計4本の親知らずのうち少なくとも1本が生えてこないといわれており、仮に生えてきたとしても多くは歯茎からきちんと生えてこない「歯列不正」となります。

以前は、「親知らずがきちんと生えないのは人類の顔が小さくなってスペースがなくなったせい」と言われてきましたが、近年の研究では子どものころの食生活も大きく関係していることが分かってきました。例えば、生野菜やナッツ類など歯ごたえのあるものを食べると顎の発達が促される可能性がありますが、逆に柔らかい加工食品などを食べると顎の成長が妨げられ、親知らずが生えてくる余地がほとんどなくなってしまうとのことです。


◆03:鋤鼻器(じょびき)
「ヤコブソン器官」と呼ばれることもある鋤鼻器は、両生類、は虫類、哺乳類など多くの動物が持つ器官で、実際にフェロモンや匂いをかぐのに使われています。一方、人間にはこの器官がないか、あっても役に立てられていないとのこと。しかし、研究者の中には人間の鋤鼻器の機能について「まだ広く議論されているところです」とする人もいます。

by Fred the Oyster

4:長掌筋(ちょうしょう)
長掌筋は、二の腕に当たる上腕骨の肘の部分から手首を通り、手のひらの腱膜につながっている筋肉ですが、長掌筋を持たない人もいます。しかし、他の筋肉で代用できるのでなくても問題はないとのこと。2014年に発表された論文によると、この筋肉の力は人間を含む陸上の霊長類よりも木登りをする霊長類の方が強く、機能的にも重要とされています。


◆05:錐体筋(すいたいきん)
錐体筋は左右に分かれた恥骨がつながる恥骨結合から始まり、腹部の中央を走る結合組織である白線の両側に伸びる筋肉です。2017年の論文によると、2本の錐体筋のうち少なくとも1本がない人が10~20%いると推定されていますが、なくても特に問題はとのことです。

by Internet Archive Book Images

◆06:ダーウィン結節
ダーウィン結節とは、耳の縁にしばしば見られるこぶで、「耳介結節」とも呼ばれています。この構造は、かつて耳の上部を折りたたむために必要だった関節の名残だと考えられており、あっても問題のない無害な奇形とされています。


◆07:耳介筋
多くの動物は音に反応して耳を動かすことができますが、人間は進化の過程でこの機能をすべて、あるいはほとんど失っています。とはいえ、中には耳を動かすことができる人もいるとのこと。

◆08:尾骨
人間の尾骨はかつて尾の一部でしたが、現在では3~5個の未発達な椎骨が融合して1つの骨になってしまっており、このことから「進化の過程で本来の機能を失ってしまった遺物のひとつ」と考えられています。今でも多くの筋肉や靱帯(じんたい)などの固定点として機能しているので、完全に不必要というわけではありませんが、少なくとも尻尾としては役に立っていません。

by BodyParts3D is made by DBCLS

◆09:虫垂
進化論の提唱者であるチャールズ・ダーウィンは、「大腸から伸びる袋状の突起である虫垂は、かつて草食動物だった祖先が植物を消化するのに使った器官の名残である」と唱えました。この説は、生まれつき虫垂がない人がいることや、手術で切除しても特に影響がないことから支持されてきましたが、近年の研究で虫垂には「腸内細菌の貯蔵庫」としての役割があることが分かってきました。とはいえ、急性虫垂炎(盲腸)になったら切除したほうがいいとのことです。


◆10:第3のまぶた
は虫類や鳥類、猫などの一部の哺乳類は、目頭から目尻まで目を水平方向に横切るように動く瞬膜があり、上下のまぶたに続くまぶたであることから「第3のまぶた」とも呼ばれています。人間には瞬膜がありませんが、目頭にある「半月ひだ」と呼ばれるものが、瞬膜の名残ではないかと考えられています。


半月ひだにまぶたとしての機能はないので役に立たないように思われますが、実は眼球の回転を補助したり、涙の排出を助けたりする役割があります。また、涙の通り道である涙道が狭くなったり詰まったりした場合は、手術で半月ひだを切除する場合もあるとのことです。

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