2019年、かつては40億ドル(約5257億円)以上の収益を上げていた強力なモールブランド、フォーエバー21(Forever 21)が倒産した。この4年間における多くの小売ブランドと同様に、拡張しすぎた小売フットプリントは継続的な損失につながった。フォーエバー21が、2020年、オーセンティックブランズグループ(Authentic Brands Group、以下ABG)、サイモンプロパティグループ(Simon Property Group)、ブルックフィールドプロパティグループ(Brookfield Property Group)に共同で買収された際、Glossyはフォーエバー21の小売フットプリントをコントロールする計画があると報告した。新しい所有者らは200店舗を閉鎖して、収益性に再フォーカスした。
新CEOのもとで小規模な新店舗を展開
破産から2年半が経過したいま、フォーエバー21は2021年10月に辞任したダニエル・クル氏の後を引き継いだ新CEO、ウィニー・パーク氏の下で多くの変更を行い事業を見直している。1年以上前に同社に入社したパーク氏は、数十の新店舗の開店、バービー(Barbie)やフレデリックス・オブ・ハリウッド(Frederick’s of Hollywood)などのブランドとの注目度の高いコラボレーションのローンチ、TikTokでの同社のプレゼンスの拡大を指揮している。
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「フォーエバー21での仕事を始めて以来、私のノーススターメトリックは購入客と有意義な関係を築き、彼らがいる場所で彼らと出会うことだ」とパーク氏は述べている。「我々は顧客のレンズを通して見て、彼らの世界で起こっていること、そしてファッションを自己表現の手段として表現するライフスタイルをどのように作成できるかに注力している」。
2022年の大部分において「顧客がいる場所で顧客に会う」というのはeコマースを意味していた。だが、オンライン支出が減少するにつれて多くのブランドが実店舗の小売に再投資しており、フォーエバー21はその1社である。同社は過去の過ちを避けようとしており、新規の14店舗は、複数のフロアに及び広大な従来の店舗とは異なっている。その代わりに、eコマースのデータに基づいて地元の購買習慣に合わせて厳選された優れた商品を販売するもっと小規模な店舗が好まれている。
親会社の状況
フォーエバー21の親会社の1社であるサイモンプロパティグループは、昨年11月に390億ドル(約5.1兆円)の利益を報告した。その際に、実店舗の小売が主な原動力であり、ABGと共同所有しているブランドらのeコマースが落ち込んでいると語っていた。サイモンプロパティグループはABGとの提携により所有しているブランドらの財務データを提供していない。また、パーク氏からフォーエバー21の収益情報は共有されなかった。ブルックフィールドは2021年にフォーエバー21の株式を6300万ドル(約83億円)で売却している。
eコマースの返品の増加の影響
小売テック企業のゴーTRG(goTRG)のブランドマーケティング・コミュニケーション担当ディレクターであるファラ・アレクサンダー氏は、フォーエバー21のようなブランドが成長の機会を実店舗に求めたほうがよい理由のひとつにはeコマースの返品の増加があると語っている。
「このようなブランドにとって最大の懸念事項のひとつは、返品、特にeコマースの返品の処理コストだ」とアレクサンダー氏。「フォーエバー21のように商品の平均価格が50ドル(約6600円)未満である可能性が高い店舗の場合、小売業者は商品の価値ほぼ全部を返品の処理に費やしてしまい、再販しても回収できる余地はほとんどない」。
フォーエバー21のマーケティング戦略
マーケティング面では、フォーエバー21に対するABGの主な目標のひとつは若い消費者のあいだで同ブランドの人気を復活させることだった。パンデミック中にABGが行った買収のほとんどはミレニアル世代やそれ以上の世代に人気のあるブランドに対してであった。たとえば、ブルックス・ブラザーズ(Brooks Brothers)やリーボック(Reebok)だ。フォーエバー21は若者対象の数少ないブランドの1社であるが、倒産前にその人気は衰退していた。リサーチ企業、Yパルス(Ypulse)によると2019年に13歳〜30歳の購入客のあいだでのフォーエバー21の支持率は13%低下したという。
しかし、フォーエバー21は昨年TikTokへの多額の投資をして状況を好転させている。同社のTikTokには10万人を超えるフォロワーがおり、ステファニー・アンドレア氏(TikTokのフォロワーは17.4万人)やカーラ・ジャラ氏(同44.3万人)のようなインフルエンサーをスポンサー動画に定期的に起用して、同社のメインアカウントに再投稿している。パーク氏によると、TikTokはフォーエバー21の顧客がもっとも関心を持っているトレンド、たとえば2月に向けて推進している準備トレンドを特定する上で重要な役割を果たしているという。
同社はまた、このようなインフルエンサーを使って店舗の開店を宣伝している。たとえば、9月にTikTokのインフルエンサーであるメイ・セラフィム氏(フォロワー数6.5万人)はシカゴに新しくオープンした店の動画ツアーを投稿した。
パーク氏は次のように述べている。「TikTokを使用して、当社で起きているエキサイティングなことすべてについて話題を呼ぶことができた。これには、季節の素晴らしいコレクションや共同ブランドの限定版カプセルを紹介することから、店内やオンラインのショッピング体験を紹介する楽しいユーザー生成コンテンツでインフルエンサーと協働することまであらゆることが含まれる」。
マーケティング会社、ゼタ・グローバル(Zeta Global)の小売担当バイスプレジデント、メリッサ・タトリス氏は、フォーエバー21の実店舗戦略はZ世代のオーディエンスを取り戻すのにも役立つかもしれないと述べている。
「フォーエバー21は(シーイン(Shein)のような競合他社に)遅れをとっているが、(店舗ウィンドウを含めた)すべてのチャネル戦略を構築することが重要だ」とタトリス氏。「Z世代は『社交的な』世代であることが知られており、ショッピングの社交的な面のために店舗に戻りたいと思っている」。
コラボレーション戦略の変化
フォーエバー21のコラボレーション戦略も変化している。フォーエバー21は、ABGが関与する以前には米国郵政公社(U.S. Postal Service)やチートス(Cheetos)のような企業とコラボしていた。最新のコラボレーションパートナーはファッションの信頼性を高める目的で選ばれている。ヒップホップのスーパーグループ、マウント・ウェストモア、女性向け高級ブランドのエルベレジェ(Hervé Léger)、ランジェリーブランドのフレデリックス・オブ・ハリウッドなどと協働しており、ファッションメディアからポジティブな反応を得ている。
パーク氏は、2023年の残りの期間を通じて、さらに多様化する一連のコラボレーター(製品コラボレーションのためのブランドやデザイナー、マーケティングのためのコンテンツクリエイターの両方)がビジネスを引き続き成長させるための鍵になると語っている。
パーク氏は次のように述べている。「我々の価値観を共有し、多様な文化から支持されており、懐かしさといった感情的な共感や音楽のような本能的なつながりを持つブランドやコンテンツクリエイターとの提携が気に入っている。そのようなコラボレーションによって、当ブランドの関連性と新鮮さを維持しながら、消費者がいる場所で消費者と会うことができる」。
[原文:Forever 21 is banking on brick-and-mortar and TikTok to fuel its comeback]
DANNY PARISI(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)