ドラゴンビューティは「休止」。 ニキータ・ドラゴン 氏がOnlyFansアカウントをデビューし、新規事業スタート

DIGIDAY

近年、いくつかのYouTubeにおける美容のリーダー的存在のブランドが閉鎖されているが、ニキータ・ドラゴン氏の美容ブランド、ドラゴンビューティ(Dragun Beauty)も最近事業を停止したブランドの仲間入りを果たした。

現在、D2Cサイトやインスタグラムで販売されている製品はひとつもなく、同ブランドのパートナーのひとりによると、いまは活動休止中であり、将来も疑問視されている。11月に物議を醸した逮捕事件によって法的な騒動に直面したドラゴン氏は、新たに有料のオンリーファンズ(OnlyFans)アカウントを発表、新規事業に乗り出した。この新しいソーシャルアカウントは1月31日にデビュー、プロが制作したコマーシャルを彼女のインスタグラム、TikTok、Twitter、Snapchatのアカウントに投稿している。

「ドラゴンビューティのパートナーとして、そのビジネスが現在一般的に休止中であると認めるとともに、債務超過に陥いる前にブランドを買収してくれる人がいない限り、長くは続かないかもしれない」と述べたのは、スラッシュマネジメント(Slash Management)の共同創業者およびプレジデントで、ドラゴン氏の元タレントマネジャーだったジェイク・ウェブ氏だ。このマネジメント会社は、「パートナーの扱いに関する全体的な価値観や基準が異なる」ことを理由に、1年前にドラゴン氏と決別したとウェブ氏は述べた。ドラゴン氏からのコメントは得られなかった。

ウェブ氏によると、スラッシュマネジメントは、ドラゴン氏の以前のマネジメント会社であるセレクトマネジメントグループ(Select Management Group)と、同ブランドの「少量の株について交渉していた」。セレクトマネジメントグループは、ドラゴン氏や「いまは亡き」美容インキュベーターのフォロービューティ(Follow Beauty)とともに同ブランドの出資者だった。

売上を伸ばしたのはインフルエンサー本人ではない

トランスジェンダーの創業者が作った最初の美容ブランドのひとつとして、2019年にドラゴンビューティが鳴り物入りでローンチされた時は、新しくデビューした製品がすぐ売り切れる事態となった。当時、ドラゴン氏はGlossyに対し、セフォラ(Sephora)とアルタ・ビューティ(Ulta Beauty)の両方から同ブランドの製品の販売について打診されたと述べている。インスタグラムのライブショッピングといったソーシャルショッピング機能がまだベータ版だったころに、同ブランドは早くからそれを取り入れ、ドラゴン氏の大きなファンベースから利益を得た。

ドラゴンビューティは、トランス女性としてのドラゴン氏のメイクアップの芸術的な経験をもとに作られた。その製品には、トランスのパフォーマーが使用するものにインスパイアされたカラーコレクターなどがある。ドラゴン氏は2020年のGlossyとのインタビューで、「数百万ドル規模のブランド」だと表現している。

このブランドをよく知る関係者によると、最初の3年間で収益は急増、初年度は200万ドル(約2.6億円)、2年目は500万ドル(約6.6億円)、3年目は2500万ドル(約32.9億円)と上昇した。しかし、2021年にはその数字が100万ドル(約1.3億円)にまで縮小している。

「ドラゴンビューティが最終的に売上を伸ばしていたのはニキータからではなく、従来のマーケティング戦略とオムニチャネルアプローチによるものだった。彼女は、自分のふざけた行動でPRを危機に陥れてブランドをボコボコにし続け、最終的にはアルタ・ビューティやアーバンアウトフィッターズ(Urban Outfitters)といったパートナーとの規模拡大にも支障をきたした」とウェブ氏は述べた。

現在も同ブランドのアイテムをいくつか扱っている小売パートナーは、ビューティベイ(Beauty Bay)とモルフィ(Morphe)だが、モルフィは最近、ユーチューバーのジェイムズ・チャールズ氏とジェフリー・スター氏との儲けを狙ったコラボレーションを騒動の結果打ち切ることとなり、その後破産を申請している。またフリップ(Flip)やAmazonでも販売されているが、ほとんどのAmazonの商品リストには、在庫が残り1~5個と表示されている。

業界ではパートナーを見つけるアプローチを見直す声も

ドラゴン氏は長年にわたってさまざまな騒動に直面してきた。最近では、2022年11月にマイアミで逮捕され、ホテルで「騒ぎ」を起こした後、ウォーターボトルを振り回したと警察が主張したことが大きな話題となった。

350万人以上の登録者がいる元祖YouTubeビューティの教祖のひとりとして知られるドラゴン氏は、インスタグラム(890万人)、TikTok(1460万人)、Snapchatでも多くのファンベースを築いており、2020年から2021年のSnapchatの番組「Nikita Unfiltered」は3000万ビューを獲得している。また、最近ではNetflixのリアリティ番組「Hype House」に出演している。

2月上旬のオンリーファンズのデビュー発表では、パリス・ヒルトン氏やウィニー・ハーロウ氏といったセレブリティからインスタグラムで応援コメントやいいね!が寄せられている。

ドラゴン氏は、2021年11月に8日間強制入院したことを明かし、メンタルヘルスに関する悩みをソーシャルメディアで語っている。

ドラゴンビューティの休止は、過去2年間にタチビューティ(Tati Beauty)やメイクアップギーク(Makeup Geek)など、ほかのYouTubeの美容インフルエンサーブランドの閉鎖に続くものだ。ドラゴン氏のパートナーインキュベーターであるフォロービューティは、エヴァ・グタウスキー氏のブランドであるコースタルシチズン(Coastal Citizen)も手がけていたが、現在はドラゴンビューティと同様のデザインのD2Cサイトでは販売されていない。

論争や事件が続いたあとで複数のインフルエンサーブランドやコラボが閉鎖され、美容業界では有名なパートナーを見つけるアプローチを見直す声も一部では上がっている。

「我々はニキータのライセンスとIPからブランドをローンチすることができたが、売上のほとんどは、ブランドの理念を通じて我々が築くことができたアフィリエイトコミュニティによって牽引されていた」とウェブ氏は言う。「これは、タレントのキャリアがまたかなり浅く、自分の行動や目標、メンタリティに一貫性を示せるようになる前に、タレント主導のブランドに投資して、そのブランドを出口に向けて拡大するような類のパートナーになってしまうことへの警鐘とすべきだ。この分野は、才能あるブランドにあふれており、そのすべてを受け入れるだけの余裕も需要もないのだ」。

[原文:Dragun Beauty is ‘on hiatus’ as Nikita Dragun debuts OnlyFans account]

LIZ FLORA(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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