「未来についてあまり多くの予測を立てないようにすべきだと思っている」: オムニコム ・メディア・グループ グローバルCEO フロリアン・アダムスキー氏

DIGIDAY

オムニコム・メディア・グループ(Omnicom Media Group:以下、OMG)のグローバルCEOに就任してもうすぐ1年。フロリアン・アダムスキー氏(同僚や友人からはフローと呼ばれている)はいまだに、現代のメディアエージェンシー事業の細部と複雑化を俯瞰して眺めることを強いられている。アダムスキー氏は細部にこだわる性格を自称しているが、世界中に2万2000人の従業員を抱え、380の専門分野を統括していると、日々の細かい業務から退くことが必要になる。

直近はOMDワールドワイド(OMD Worldwide:OMGの一部)のCEO、その前はOMGドイツ法人のトップだったアダムスキー氏は現在、以前ほど経済環境について心配しておらず、2022年の残りは軟調だが、2023年にはV字回復すると予想している。

そのアダムスキー氏がマンハッタンのダウンタウンにあるOMG本社で米DIGIDAYの取材に応じ、クライアントはどのように景気後退に備えているか、従業員と上司であるオムニコム(Omnicom)のCEO、ジョン・レン氏をどのように満足させているかを語った。

なお、読みやすさと分量を考慮し、以下のインタビューには編集を加えている。

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就任1年目を振り返り、予想通りだったことと予想外だったこと

オムニコムの一員になって26年がたつ。明らかに以前と異なるのは、私たち全員にとって、世界が劇的に変化しているという事実だ。そして、これはOMG、さらにはメディア業界に限ったことではない。私たちは今、消費者との関係について、以前と全く異なる環境に対処している(中略)そして、それがメディア支出、投資、マーケティングテクノロジー支出にさらなる変化をもたらしている。

クライアントという視点から見ても、クライアントの行動は以前と大きく異なっている。クライアントのピッチの方法や頻度、投げ掛ける質問、エージェンシーパートナーに対する見方を考えると、単なるメディア支出の調整役ではなく、成長とマーケティング変革のパートナー兼コーチに近いものを求めていることがわかる。

従業員の柔軟性

リモートワーク環境の恩恵を受けている職種、そうでもない職種について、極めて明確に区別して考える必要があるだろう。誰もが、創造性は人間関係によって育まれると言うが、私もその考えに賛成だ。オフィスに人々を呼び戻し、ワークショップやブレインストーミングを行うことが、私たちにとってどれほど重要かが私にはわかる。クライアントとの打ち合わせは言うまでもない。

とはいえ(中略)リモートワークでも同じくらい効率良く、ときにはより生産的に仕事ができる状況で、どうして毎日(最大)2時間以上かけて通勤することを要求できるのだろうか? そのため、私たちはこれからも柔軟性と機敏性を維持し、未来についてあまり多くの予測を立てないようにすべきだと思っている。なぜなら、予測はすべて外れると証明されているからだ。そのことは私たちのビジネスのある部分、(まずは)不動産に関する意思決定に影響を与えるだろう。

短期的な経済情勢とクライアントの反応

最高の瞬間はまだ来ていないと思う。なぜならテクニカル・リセッション(経済成長率が2四半期連続してマイナスとなること)に突入するかもしれないためだ。すでに景気後退局面に入っていると言うこともできる。実際、GDPは2期連続で減少している。私はエコノミストではないが、第4四半期は2023年に向けて経済が軟調になると本気で信じている。広告市場に影響するかどうかはわからないが。

ただし、長期的な不況に陥るとは考えていない。私たちの経済は根本的に、極めて健全だと思っているためだ。消費者の需要は非常に安定していると私たちは見ている。人々はより安いものを買おうとしているが、食料品やガソリンが10、20、30%と高騰すれば、より安いものを買おうとするのは当然だ。企業のファンダメンタルズは問題がないため、上昇に転じると私は予想している。

(パンデミックは)私たちにいくつかの教訓を与えてくれた。ビジネス変革を本当の意味で支援できるパートナーは誰なのかをクライアントが理解する助けになったと思う。そして、彼らはその変革への投資を余儀なくされた。

2022年第1四半期と第2四半期は、企業は例外的に強気だった。私たちのクライアントも他の多くのクライアントも、潜在的な需要に対して多額の投資を行った。私たちが把握しているバーティカルのほとんどで、上半期の広告費は2桁の増加を記録した。今起きていることは、一時的な落ち込みとでも呼ぶべきものだ。構造的な危機ではない(中略)なぜなら、上半期に見られた課題の多くが今、ある程度まで和らいでいるためだ。

サプライチェーンはより強固になったように見える。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の次の波でどうなるかわからないが、少なくとも今は、中国の大部分がビジネスを行っている。

少なくとも2023年第3四半期には、成長の加速が見られると思う。第1四半期は少し軟調かもしれないが、第2四半期には安定化すると考えている。私がよく会話をする上位20~30のクライアントの中では、現時点で2023年を見て、「厳しい年になりそうだ」と言う人はほとんどいない。

ほとんどのクライアントは強気な姿勢でビジネスを行っている。多くの企業がDXに多額の資金を投じている。彼らはプロセスをデジタル化し、サプライチェーンをデジタル化している。しばしば従業員も増強している。ほとんどの企業がこの一時的な落ち込みとその後の急速な再始動に備えているように見える。

OMGの収益源

伝統的なメディアプランニングとバイイングが売上に占める割合は(中略)大幅に減少している。一方、増加しているのはコンサルティングサービス、マーケティング変革サービス、マーテク、アドテクコンサルティングだ。

クライアントは少なくとも3つの大きな課題に直面している

  • 消費者データプライバシー。間違いなく、この先は一本道だ。規制は増える一方で、減ることはない。私は自由市場を強く支持しているが、それでも、より良い消費者体験を実現したければ、ある程度の規制は実際に有効だと思う。
  • リテールメディアとコマース。(これは)クライアントが総合的な消費者体験に目を向けると同時に、支援が必要だと気付いたことだ。どうすれば市場に出回っているすべての金(カネ)を完全に可視化できるのだろうか?
  • Cookieの死。多くのクライアント企業がこの分野で次に起こることに対して準備ができていると感じていないことは、統計データを見れば明らかだ。既定路線のひとつはクリーンルームのようだが、私も反対ではない。むしろ非常に重要だと考えている。私が時々抱く疑問は、クリーンルームが互いに切り離されている場合、ウォールドガーデンの上にウォールドガーデンを構築していることになるのではないかということだ。このようなことを言うべきではないのかもしれない。私たち自身もいくつかのクリーンルームプロバイダーと非常に注目度の高いパートナーシップを結んでいるためだ。しかし、それは解決策の一部にすぎない。

複雑さはコンサルタントの友と言われているかもしれないが、(同時に)複雑さはエージェンシーの友でもある。OMG全体で最近数えてみたら、少なくとも380の専門分野を持っていることがわかった。圧倒されることもある。認証、ブランドセーフティ、プライバシーなどは皆、ほんの数年前まで存在しなかった新しいテーマだ。しかし現在、クライアントが世界各地のデータ、プライバシーに関する法律や規制を理解できるよう、コンサルティングを専門に行う部署が存在する。

[原文:Media Buying Briefing: Omnicom Media Group’s Florian Adamski on why he’s not worried about a potential recession

Michael Bürgi(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:)

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