ラグジュアリーブランドスパ が次のトレンドに:アウグスティヌス・バデールが目指すブランドエクイティの構築

DIGIDAY

独立型のラグジュアリーブランドスパが、次のトレンドになりそうだ。

つい最近、ニューヨークの高級店ザ・ウェブスター(The Webster)にオープンしたのは、アウグスティヌス・バデール(Augustinus Bader)のスキンラボ(Skin Lab)だ。米国では初となる2店舗目のスキンラボは2月22日に、そして最初の店舗であるロンドンはヘルスリゾートのランサーホフ(Lanserhof)との提携で1月にオープンしている。2018年創業のアウグスティヌス・バデールは、ドクター・バーバラ・シュトルム(Dr. Barbara Sturm)やビオロジックルシェルシュ(Biologique Recherche)といったほかのラグジュアリーブランドと同様に独自のブティックスパを立ち上げているが、これはラ・メール(La Mer)、ゲラン(Guerlain)、ラ・プレリー(La Prairie)といったブランドがホテルスパと提携する通常のやりかたとは異なっている。

「一部のブランドは小売レベルで(販売や)顧客体験を100%コントロールしようとしている。小売業者は有益であり、またそれが小売の仕事だというのが、いまの我々の考えだ」。そう述べたのは、アウグスティヌス・バデールのCEO、シャルル・ロジエ氏だ。「我々の仕事は製品を作ることであり、必ずしも小売をコントロールすることによって自分たちのブランドを表現したいとは思っていない」。

収益機会ではなく、ブランドエクイティの構築を

こうした最近のラグジュアリーの展開は、ブローアウト(ヘアトリートメントの一種)、フェイシャル、メディカルエステなど、過去に見られたサービスの切り離しを彷彿とさせる。たとえば、フェイスハウス(Face Haus)やヘイデイ(Heyday)といった企業は、通常のホテルスパやそのほかの大型施設の外にフェイシャルだけを行う専門のブティック空間を作っている。今回のケースでは、ラグジュアリーブランドはそのコンセプトを取り入れており、収益機会を求めるのではなく、ブランドエクイティを構築しようと考えている。ロジエ氏はスキンラボの店舗建設費については明らかにしておらず、2023年にはほかに新たな店舗の計画はないという。

アウグスティヌス・バデールは2018年のローンチ以降、売上を飛躍的に伸ばしてきた。フォーブス(Forbes)によると、2018年に700万ドル(約9.6億円)の売上だった同ブランドは、2020年に7000万ドル(約95.7億円)、2021年には1億2000万ドル(約164億円)となっている。CEOのロジエ氏によれば、2022年の売上は前年比50%強の伸びを示しており、それはつまり同ブランドが約2億ドル(約273.5億円)を稼いだことになる。2022年11月、アウグスティヌス・バデールは、インパラ(Impala)とジェネラルアトランティック(General Atlantic)の主導で、10億ドル(約1368億円)の評価額で2500万ドル(約34.2億円)を調達している。

ブランドの牽引力を高める旗艦店に

「我々は体験を100%コントロールしている。さらに興味深いのは、その場所に足を踏み入れたときの感覚からトリートメントを受けることにいたるまで、我々が望む形でそうした体験を新しく作り出せることだ」とロジエ氏は述べた。「我々の製品とコミュニティに対するコミットメントは有効性である。我々の製品には一定の投資が必要だが、コミュニティにはそれが自分の肌への投資であると感じてもらい、肌の健康の改善を実感してもらいたい」。

ほかのラグジュアリーブランドも独立型のブティックスパに対して同じような意見や正当性を表明している。ドクター・バーバラ・シュトルムは、2019年5月にフェイシャルサービスを提供する初の実店舗をオープンした。それまでは、ドイツのデュッセルドルフにあるクリニックしか存在しなかったが、現在はロンドン、ダラス、マイアミを含め、計6店舗を展開している。

「多くのビジネスが物理的なスペースからオンラインに逃げている時期にリテールに参入することは意識的な決断だった」と、自身の名を冠したブランドのCEOであるシュトルム医師は言う。「eコマース体験やドイツにある私のクリニックでの患者としての体験を超えた場所を、顧客やクライアントに提供したいという願望が原動力となっている」。

またフランスのヘリテージスキンケアブランド、ビオロジックルシェルシュは、2022年8月に米国初となるブランド拠点をロサンゼルスにオープンした。ビオロジックルシェルシュはそれ以外に世界の数百のスパで販売されている。ロサンゼルスの店舗では、顔や身体、頭皮のトリートメントを提供する。ビオロジックルシェルシュの米国ゼネラルマネージャーであるマーゴ・ハンバート氏は当時「完全なブランド体験を紹介したい」と語っている

「戦略的な地域においてブランドの認知度と牽引力を構築するための旗艦店となるような、より多くの(スパを)オープンしたい」と同氏は述べた。

今後はブティックスパが増加傾向に

さらに多くのラグジュアリーブランドのブティックスパがオープンするだろうという兆候もある。たとえば、ラ・プレリーは北米に2店のスパしかなく、いずれも高級ホテルで提供されている。独立型スパや店舗はないが、春にはチューリッヒに初の独立した実店舗がオープンすると噂されている。ただし、そこでフェイシャルサービスが提供されるかどうかは定かでない。ヤニス・アレクサンドリデス医師とその妻エヴァ・アレクサンドリデス氏が創業した111スキン(111Skin)は、ロンドンにある夫妻の医療クリニックに併設する形で2022年7月に独自のフェイシャルスパをオープンした。このブランドはほかにハロッズ(Harrods)などの小売店で販売されており、提携したホテルでフェイシャルサービスを提供している。また少し変わったアプローチでは、2022年にラ・メゾン・ヴァルモン(La Maison Valmont)が既存のスパがあるニューヨークのホテル、ザ・カーライル(The Carlyle)内に米国初の旗艦ブティックをオープンした。

「デパートやセフォラなど製品を購入する場所にいるとせわしなく騒がしいし、販売員と話す時間が30分もないかもしれない」とロジエ氏は言う。「(こうしたブティックスパは)非常に異なる体験であり、ブランドは違ったタッチポイントで、さまざまな方法でコミュニティと交流しようとしている」。

[原文:Augustinus Bader’s new Skin Lab is just the beginning for luxury brand spas]

EMMA SANDLER(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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