独立系アーティストが傾注する「 ドロップ 」と「予約注文」:ソーシャルメディアとの相乗効果で売上増も

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シュプリーム(Supreme)やナイキ(Nike)のようなトレンドのブランドは、何年にもわたり、宣伝効果を高める方法としてドロップを取り入れてきた。現在では、独立系アーティストが、インスタグラムやTikTokなどで話題を集めるために、希少性の高い商品のための同様の手法を採用している。

米モダンリテールと対談したアーティストのなかには、ドロップや予約注文モデルへの切り替えは、生産を合理化する必要性から生じたものだ。これらのアーティストは個人の企業オーナーとして、人々が注文を行える期間を限定することで、需要への対応が容易になることに気づいた。ドロップは、特に特定のファンダムや対象層の要求に応じる商品であるため、アーティストにとっては、自分たちの商品についての評判を全国に広めるための手段でもある。アーティストたちは、ソーシャルメディアアプリで商品を発見する人が増えている現在、宣伝効果を生み出すためにドロップモデルは極めて重要だと述べている。

欲しいものを入手する公平なチャンス

グラノーラガールポッテリー(Granola Girl Pottery)の創設者であるローズ・フランケル氏は、毎月または2カ月ごとにオンラインで行うドロップが、売上の98%を占めていると語る。同氏は、マグカップ、プランター、花瓶、ボウル、皿など、手作りまたは手描きされたさまざまな商品を販売している。

フランケル氏は十数年にわたって陶器を作り続けてきたが、同氏の「トワイライト(Twilight)」をテーマにしたいくつかのマグカップのパンデミックのあいだにTikTokで何十万回も再生されたことをきっかけに、これを事業にすることを決めた。グラノーラガールポッテリーは2021年に「経費を気にせず陶器を作れるようになった」と、同氏は説明している。現在同氏はTikTokに16万人近いフォロワーを持ち、1500万近い「いいね!」を集めている。

同氏は事業の開始からまもなくドロップの提供をはじめた。同氏は通常30〜40点を同時に販売するが、ホリデーコレクションのひとつでは、オーナメントも含めて約100点の商品を低価格で販売した。同氏の「トワイライト」をテーマにした陶器は通常数分で売り切れ、マグカップは通常1時間以内で売り切れになる。花瓶はより高価であるため、数週間で売り切れになるのが一般的だ。マグカップの最低価格は63ドル(約8250円)で、オーナメントの最低価格は15ドル(約1970円)、花瓶の最低価格は140ドル(約1万8300円)だ。

全体として、フランケル氏は、「選んでいるというよりは、必要に迫られて」ドロップを行っていると説明する。「ドロップモデルにより、写真撮影、リストへの登録、ドロップ、配送をすべて数日間で行うよう簡単にスケジュールでき、その点で楽になった。これは、生産サイクルを整理するのに役立つ」と、同氏は述べている。

また、ドロップは入手の条件を公平にするためにも役立つと、同氏は述べている。「半年にわたって同じマグカップを入手しようと試みても、非常に短時間で売り切れてしまうため入手できないという人からのメッセージを受け取っている。本当にすまなく思っている。希望するすべての人の家に商品を届けられるだけの生産力があればいいが、それは無理だ。そのため、ドロップは私が知っている限り、誰でも欲しいものを入手できるチャンスが公平にある最善の方法だ」と、同氏は述べる。

バイラル化が売上を左右する

ドリームランド・ウォーターカラー(Dreamland Watercolor)の創設者であるエマ・デプレ氏も、この考えに同意している。同氏は2020年の夏、手作業で調合した絵の具や顔料を販売するために自分の会社を設立した。

同氏の戦略は、数量よりもタイミングを重視するものだ。同氏は最初、実際に手元にあり、出荷できる絵の具の量に基づいて商品を販売していた。しかし、この10〜12カ月のあいだ同氏は予約注文モデルに移行していった。

同氏は6週間ごとに予約注文を受け付ける。ただし同氏は、もし処理時間を短縮することができれば、そのあいだに小規模なドロップを行いたいと、米モダンリテールに語った。その仕組みは、同氏は予約注文用の新しいコレクションを作成したとき、7日間の期間を設けて、顧客から特定の絵の具のコレクションの予約を受け付けるというものだ。それから同氏は絵の具を調合し、予約した顧客に対して、予約受付期間の終了後に発送する。1月のコレクションは、星座をテーマにしたもので、こと座とエリダヌス座を含む、さまざまな色に輝く8つの絵の具が揃っている。

以前は「商品があまりに早く売り切れるので、顧客は私の商品がほとんど入手不能のように感じていた」と、同氏は米モダンリテールに話す。「人々が絶望しているのが感じられた。そこで私は予約注文方式に切り替えることにした。私は注文を受けたものを作成し、準備ができたら発送する」。

デプレ氏は通常、2つの異なるサイズの絵の具を販売し、製造と発送に必要な期間に基づいて価格を設定する。大きいサイズであるハーフパンは14ドル(約1830円)から18ドル(約2360円)だ。小さいサイズであるクォーターパンは8ドル(約1050円)から12ドル(約1570円)だ。

フランケル氏と同様に、デプレ氏の売上の多くはソーシャルメディア、特にTikTokによるものだ。現在同氏はTikTokに70万3000人のフォロワーを抱え、動画は1700万回の「いいね!」を集めている。同氏が受ける予約注文の数は「その期間に動画がバイラル化するかどうかによって大きく異なる」と、同氏は説明する。バイラルな動画がなければ、注文数は1回につき400〜600件だ。昨年7月にTikTokの動画のひとつが人気になったときは1500件の予約注文を受けた。この動画は現在までに100万回も再生されている。

デプレ氏は現在、この新しいモデルのもとで、顧客は絵の具を入手するため多少長く待つことを気にしていないと語る。「何人かは、待っているあいだにますます期待が高まると語ってくれた」と、同氏は述べている。

[原文:How independent artists are using drops and preorder models to drive sales]

Julia Waldow(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Illustration by Ivy Liu

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