メタバース 広告の未来はクロスプラットフォームアクティベーションか:同じ体験を異なるプラットフォームで立ち上げる意味は?

DIGIDAY

ブランドがメタバースに参入し、複数のバーチャルプラットフォームでブランド体験を構築する企業が現れ始めている。このようなクロスプラットフォームのアクティベーションがメタバース広告の未来だと考えているマーケターもいるが、まだ皆が確信しているわけではない。

ほとんどの場合、メタバースでのアクティベーションに関心を持つブランドはこれまで、ロブロックス(Roblox)やフォートナイト(Fortnite)のような単一のプラットフォームに焦点を合わせてきた。バーチャル空間をデザインするクリエイタースタジオが特定のプラットフォームを専門としていることが多く、同時に複数のプラットフォームでアクティベーションするには、複数のクリエイターと連携する必要があったからだ。

複数のプラットフォームで同じデザインの空間が立ち上がり始めた

しかし、最近、この状況が変わり始めている。Netflix、アイハートメディア(iHeartMedia)などのブランドが複数のメタバースプラットフォームで同じような名称、デザインの空間を同時に立ち上げたのだ。たとえば、アイハートメディアはロブロックスとフォートナイトの両方に存在する。Netflixのバーチャル体験であるマインホーント・スプークタキュラー(Minehaunt Spooktacular)も同様だ。

これらの空間は名称、プログラム、ビジュアルなど、プラットフォーム間でいくつかの要素を共有しているが、真に相互運用可能なわけでも、直接つながっているわけでもない。それぞれが独立して存在し、ユーザーがそれぞれの空間で異なるアバターを同時に操作できる。同じ統一された永続的な空間を異なる形で表現しているわけではなく、よく似た枠組みで構築された全く別のバーチャル空間だ。

アイハート・デジタル・オーディオ・グループ(iHeart Digital Audio Group)のCEO、コナン・バーン氏は、「これらは全く異なるプラットフォームで、ユーザー層が全く異なる。どちらもユーザーは若いが、全く異なる若さだ」と話す。「ロブロックスの核にあるのはユーザー生成プラットフォームで、もう一方(フォートナイト)はより誘導的な真のゲームプラットフォームだ」。

各メタバース空間に設置することで、異なるオーディエンスにリーチできる

Netflixの体験はメタバース開発会社のスーパー・リーグ(Super League)が構築したもので、10月に発表したヤス島のアクティベーションでも同様の戦略を採用する。スーパー・リーグはアブダビ文化観光局と提携し、ロブロックスとザ・サンドボックス(The Sandbox)の両方でアブダビの名所であるヤス島を再現するとともに、アンリアルエンジン(Unreal Engine)を使って特注のメタバース空間を構築する。2023年3月の開設を予定しており、各プラットフォームにいるさまざまな層をターゲットに、ヤス島への関心を高めることが狙いだ。

スーパー・リーグの最高商務責任者を務めるマット・エデルマン氏によれば、このような多角化の目的は、各プラットフォームの全く異なるオーディエンスにブランドがリーチできるようにすること、そしてブランドが所有する空間をつくることで、メタバースの未来をより直接的にコントロールできるようにすることだという。

「すべての人がすべての時間を過ごす単一のメタバース環境は存在しない」とエデルマン氏は話し、「メタバースにブランドやビジネスを持ち込むことを考えるのであれば、ひとつの空間を選ぶことより、それらを没入型の3D空間に拡張する適切な方法を選ぶことの方がはるかに重要だ」と続ける。また、エデルマン氏のチームは、ブランドがメタバースでの活動に慣れてくれば、このようなクロスプラットフォームのアクティベーションが標準になると考えている。

加えて、人気バーチャルプラットフォームのオーディエンスの違いは、メタバースで消費者にリーチしたいマーケターにとって、不利益ではなくむしろ利益になるという考えもある。ほとんどのブランドは特定のターゲット層にリーチしようとしているからだ。フォートナイト、ロブロックスなどのプラットフォームによって優勢な層が異なれば、マーケターはブランドに最適なプラットフォームを選択できる。

多角化で盛り上がりの分散やユーザーが混乱するとの指摘も

しかし、すべてのメタバース専門家がそう確信しているわけではない。たとえば、複数のプラットフォームで同時に空間を立ち上げると、メタバースに不慣れなマーケターや潜在消費者を混乱させる恐れがある。

ゲーム内広告企業アンズ(Anzu)のマーケティングおよび戦略担当エグゼクティブバイスプレジデントであるナタリア・バシリエワ氏は、「マーケターとして、A/Bテストを行う際や新しいチャネルに参入する際は、オーディエンスをプラットフォームに個別に導入していくことが鉄則だ」と話す。

フォートナイト・クリエイティブ(Fortnite Creative)の制作スタジオであるクリエイターズ・コープ(Creators Corp)の創業者マーゴット・ロッド氏は、「同じ体験を2つのプラットフォームで同時に立ち上げることはない」と断言する。「私だったら、ひとつのプラットフォームでうまくやっていく。ひとつのアクティベーションで、可能な限りオーディエンスと関わって増幅させていく」。同氏は、多角化は盛り上がりを弱める危険性があると考えている。

[原文:Is the future of metaverse advertising cross-platform activations?

Alexander Lee(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:島田涼平)

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