レッドブルを超えろ。 エナジードリンク 市場に「ウェルネス」を持ち込む新興ブランド

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エナジードリンクのカテゴリーといえば、レッドブル(Red Bull)や、モンスター(Monster)、ロックスター(Rockstar)などの大手ブランドが数十年にわたって独占してきたカテゴリーだ。これらのブランドは依然として人気があるものの、近年は、より健康的なエナジードリンクも必然的に目立つようになってきた。

この10年間に新規参入したセルシウス(Celsius)やセルコアシー(Cellucor C)など、いくつかのブランドが最近では爆発的に成功しているが、もっとも人気のエナジードリンクの座をレッドブルから奪い取ることに成功したブランドは存在しなかった。2019年に上場したセルシウスは、その年の第1四半期、前年同期の1億3300万ドル(約185億円)から95%増加し、過去最高の2億6000万ドル(約361億円)の収益を記録した。かつて有望に見えたほかのブランドは苦闘している。バングエナジー(Bang Energy)の親会社は10月に連邦倒産法11章を申請し、同社は現在売りに出されている。

一方で、現在はゼビア(Zevia)ブチ(Buchi)のように実績がある飲料企業がエナジードリンクに参入しようとしている。しかし、より若い新興企業も、よりプレミアムな成分やパッケージで、この分野のシェアを獲得しようとしている。これらの新ブランドは、よりクリーンな成分表示や、より現代的なブランディングで、エナジードリンク分野にウェルネスの感覚を持ち込もうとしている。

これまでこのカテゴリーは、合成原料と砂糖を多用した大手ブランドに独占されてきたと、機能性飲料ブランドのヘイウェル(Heywell)の共同創業者であるアシュリー・セルマン氏は語る。「エナジーはそのままに、過剰にカフェインが含まれていない、より健康的な商品を求めている人々が増えている」。

その結果、これらの新興企業はさらに多くの資本を引き寄せている。マッシュルームを原料とする機能性エナジードリンクのオデッセイエリクサー(Odyssey Elixir)は、昨年の130万ドル(約1億8100万円)の投資に続いて、シリーズAファンディングで630万ドル(約8億7600万円)を調達した。フォーマットの革新も起きており、VAEラボ(VAE Labs)は、コーヒー1杯と同量のカフェインを供給するスプレー型のデバイスを売りものにしている。新興企業である同社は、2年間の開発期間を経て、2月にベンチャーキャピタルから200万ドル(約2億7800万円)を調達した

デジタルネイティブなエナジードリンクの参入

エナジードリンクへの関心は、パンデミックのあいだに再燃し、2021年4月のニールセン(Nielsen)の発表によると、エナジードリンクの売上は前年比12%増の148億ドル(約2兆572億円)に達した。さらに、米国のティーンやヤングアダルトにもっとも人気があるサプリメントはエナジードリンクで、18歳から34歳の男性の過半数が支持している。

健康的な飲料への関心と時を同じくして、エナジードリンクの新ブランドはそれぞれ、独自の成分、効能、味を組み合わせた優れた商品であることをアピールし、この分野でブランドへの認知を広めようとしている。

機能性エナジードリンクのゴーギー(Gorgie)は、ソーシャルメディア上で何カ月にもわたって話題を集めた後、1月に発売された。D2Cランジェリーブランドのライブリー(Lively)の創業者であるミシェル・コルデロ・グラント氏は昨年8月、TikTokを使ってフォロワーとともにレシピの味をテストしながら、ブランドを考案しはじめた。

「1年前、レッドブルがいまだもっとも売れているエナジードリンクであることに注目し、『エナジーとウェルネスを組み合わせて、クリーンで健康的なバージョンを作りだしたらどうだろう?』と考えた」と、同氏は述べている。ゴーギーにはL-テアニン、B6、B12、ビオチンといった人気の成分と、1缶あたり150ミリグラムのカフェインが含まれている。砂糖不使用で熱量は5キロカロリーだ。同社はブランディングにも気を配り、従来のエナジードリンクのような派手で暗い色味のパッケージは避けたという。

ゴーギーは今年初めに発売され、現在は、北東部のホールフーズ(Whole Foods)をはじめ、フェアウェイ(Fairway)やショップライト(Shoprite)などの地域チェーン店で販売されている。今夏には全国の店舗で販売される予定だ。

グラント氏は、自然食品やオーガニック食料品のチェーン店に参入するためには、原料も重要なポイントであり、それによって従来のエナジードリンクより優位性を高められると語った。たとえば、ゴーギーはホールフーズが定める「遺伝子組み換え食品不使用プロジェクト認定済み(non-GMO Project Verified)」の基準を満たしている。

グラント氏は、午後のコーヒーに代わる飲み物を探している若い女性をターゲットにしているが、味やパッケージはより幅広い層の支持を集めているという。「当社はこれまで、投資銀行員、配送ドライバー、看護師など、あらゆる人に受け入れられてきた」と、同氏は付け加えた。明るくミニマルなパッケージは、「現代の美的感覚をより的確に反映しようと考えた」アイデアだと述べる。これは、若い人々が手にするモンスターやレッドブルの派手な缶とは対照的なものだ。

ホワイトスペースを狙え

2019年後半に設立された機能性飲料ブランドのヘイウェルは2月、エナジープラスフォーカス(Energy + Focus)というドリンクを発表した。共同創業者のセルマン氏は、オーガニックコーヒーの生豆から抽出したカフェイン75ミリグラムを含んだこのエナジードリンクの開発に、1年を費やしたと語った。

「現在のところ、気分のサポートとエナジーの組み合わせはホワイトスペースだ。当社は、朝鮮人参とアシュワガンダを含むオレンジマンゴー味でこの分野に参入した」と、同氏は説明した。ヘイウェルは、レモンバームやシサンドラベリーなど、アダプトジェニック(ストレスへの適応力を高める)といわれるさまざまな原料を使用しており、顧客はその効能についてまだ知識を得ていないと、同氏は語る。

このエナジーフレイバーは、まずフォックストロット(Foxtrot)で発売されたが、売り切れが続いているとセルマン氏は語る。ヘイウェルは最近ウェグマンズ(Wegmans)、ゲルソンズ(Gelson’s)、メイヤーム(Meijerm)でも販売を開始し、コンブチャやほかの機能性スパークリング飲料と並んで売られている。同社は現在、前年比で270%成長しており、次のシリーズとなる小売業への参入支援のため、資金調達のシードラウンドを立ち上げている途中だ。

これまでのところ、ヘイウェルのポートフォリオ全体でリピート購入の傾向が強く、エナジー系のSKUは顧客のあいだで急速に人気となりつつある。「人々は、食品や飲料により多くを期待するようになってきている。この傾向は消えないだろう」と、セルマン氏は述べている。

プレミアム市場への参入

リキッドデス(Liquid Death)やダラーシェーブクラブ(Dollar Shave Club)などのCPG(消費者向けパッケージ商品)新興企業を後援してきたベンチャーファンドのサイエンスインコーポレーテッド(Science Inc.)でマネージングディレクターを務めるマイク・ジョーンズ氏は、健康的なエナジードリンクのトレンドは、飲料カテゴリー全体の変化の一部だと語る。

同氏は次のように述べている。「エナジードリンクの問題のひとつは、すべて天然であることは稀だということだ。レガシーブランドに飽きた米国の消費者をターゲットにする機会はある」。同氏は、プレバイオティクスやアダプトジェンなどのトレンドの原料と低糖質との組み合わせが、現在のトレンドのひとつであると指摘した。

大手業者も、この分野でイノベーションを進めている。C4(シーフォー)は大きなリブランドとともに、自社のスマートエナジーシリーズを発表し、ストロベリーグアバやブラッドオレンジユズなど6種類の新フレイバーを追加した。ヌートラボルト(Nutrabolt)社傘下のセルコアC4エナジー(Cellucor C4 Energy)は、植物由来のコーヒー生豆を主成分とし、エナジーブーストの元として使用している。

アメリカ人は、缶に数ドル以上を支払うのをためらうかもしれない。だが、プレミアムエナジードリンクはは通常、経済後退の際の手の届くぜいたく品として位置づけられていると、ジョーンズ氏は語る。「ストレスの強い状況で自分がリラックスしたいときに飲むクラフトコーヒーと同じようなものだ」と、同氏は説明した。

世界のレッドブルから市場シェアを奪うことについて、さまざまなブランドが競合できるだけの十分な需要が市場にあると、ヘイウェルのセルマン氏は語る。「派手なエナジーブランドも素晴らしいが、天然の原料を使用したプレミアムバージョンへの需要も存在する」と同氏は述べている。

同様に、ゴーギーのグラント氏は、自社が「新しいエナジーのカテゴリーを作りだし、普段はエナジードリンクを買わない人々をブランディングによって引き入れることをめざしている」と述べている。

[原文:New energy drink startups are hoping to give people a better buzz]

Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Gorgie

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