BuzzFeed スタジオ制作の映画、Amazonプライムで初公開 : グローバル企業の強みを映画制作に活用

DIGIDAY

BuzzFeedスタジオ(BuzzFeed Studios)による映画作品の第1弾「ブック・オブ・ラブ(Book of Love)」が先ごろAmazonプライムで公開され、BuzzFeedによる映像事業が新たな章へ突入した。

この映画の脚本は、BuzzFeedが2020年に作家のデヴィッド・カンティック氏から非公開の金額で取得したもの。ストーリーは、英国人作家の売れなかった本がスペイン語に翻訳され、その過程でエロティックな小説に書き直された結果、メキシコでベストセラーになるという筋書きだ。

BuzzFeedは脚本を買い取ったのち、カンティック氏と共同で脚本の開発と練り直しを行い、キャスティングから撮影、編集まですべてを手がけ、最終的に配信権をAmazonプライムに非公開の金額で売却したという。

同社の戦略転換

BuzzFeedは、そのスタジオ部門に常に一貫した戦略を持っていたわけではない。BuzzFeedモーション・ピクチャーズ(BuzzFeed Motion Pictures)だったころは、テレビと映画を大いに優先し、手始めとして、盗まれたiPhoneが中国に渡っていたという同社スタッフの体験談の映像化に着手した。「ブラザー・オレンジ(Brother Orange)」と題されたその映画の制作に向けたワーナー・ブラザーズ(Warner Brothers)との契約は、2017年に報じられたが、結局完成を見ることはなかった。

2019年に入って同スタジオは、BuzzFeedのCEOジョナ・ペレッティ氏いわく「ポストテレビの世界に向けて、新たなモデルを開拓する」ため、YouTube、Facebook、Snapchatといったデジタルプラットフォーム向けのコンテンツ制作に戦略を転換した。

それから3年が経ち、BuzzFeedスタジオを率いるリッチ・リード氏は、ストリーミングプラットフォーム向けのコンテンツ制作競争において、パブリッシャーのBuzzFeedが注目すべきプレイヤーになることを望んでいる。ストリーミングプラットフォームはコロナ下で人気を博し、今もなおオーディエンスをつなぎとめるために、コンテンツ制作者に積極投資する姿勢だ。

グローバルコンテンツ担当シニアバイスプレジデントを兼務するリード氏は、2020年8月からスタジオ部門を率いており、さまざまな映画スタジオでの勤務経験を経て、BuzzFeedに計6年間在籍している。

全過程を自社スタジオで

しかしリード氏は、ただストーリーの翻案権を大手スタジオに売ったり、脚本家とコンテンツを独自制作するストリーミングプラットフォームのあいだで仲介役を果たしたりすることに関心はない。同氏は、ボックス・メディア・スタジオ(Vox Media Studios)やバイス・スタジオ(Vice Studios)のように、開発からキャスティング、制作、そして最後に完成したプロジェクトを高く買ってもらうまでの全過程を、自社スタジオで手がけたい考えだ。

米DIGIDAYはこのほどリード氏に、BuzzFeedスタジオの最新プロジェクトがスタートした経緯と、自身のチームが、オーディエンスと買い手候補のどちらにもアピールする優れたプロジェクトを見極める方法について話を聞いた。

なお以下のインタビューには、若干の要約編集を加えている。

◆ ◆ ◆

――BuzzFeedのオーディエンスのニーズやコンテンツの消費傾向は、映画やテレビのプロジェクト優先だったスタジオの戦略変更にどのように影響したのか?

我々のオーディエンスは、ストリーミングプラットフォームも見れば、テレビも見るし、映画も見にいく。だから、我々のコンテンツ哲学をそれらのスクリーンに拡大することは、自然な成り行きだと考えている。我々がオーディエンスをよく知っていて、強いロイヤルティを獲得していること、そしてオーディエンスの嗜好、すなわち見たいもの、興味あるトピック、アイデンティティなどを示す、非常に意味のあるデータを持っていることで、流行やトレンドをつかむことができるため、我々のチームは彼らに合ったコンテンツを制作できると感じた。

同時に、我々はデジタルに独自のアドバンテージを持つため、業界全体が直面している発見の要素の欠如や、(プラットフォームの)断片化といった問題を解決することが可能だ。このデジタルアドバンテージによって、我々がコンテンツを制作したこと、そしてそれがどこで見られるかを(オーディエンスに)知らせることができる。つまり我々は、ひとつのIPやプロジェクトそのものについて考えているだけでなく、それを取り囲む戦略全体について考えているわけだ。コンテンツの開発について考えながら、同時にそこにオーディエンスを誘導し、そのふたつが互いに情報を提供しあうようにしている。

――脚本は、BuzzFeed傘下のブランドの独自取材のみに基づいて作成されているのか、それともストーリーのアイデアの多くは、オーディエンスインサイトから得ているのか?

ネットワーク全体にアンテナを張っている。これには今ではハフポスト(HuffPost)やコンプレックス・ネットワークス(Complex Networks)が加わり、そしてもともとBuzzFeedのポートフォリオを構成していたすべてのブランドも含まれる。そこで見込みのありそうなIPやトレンド、コミュニティ、トピックを見つけると、我々の開発チームがただちに検討し、見つけたヒントを効果的にハリウッドのクライアント向けマテリアルに仕上げる開発プロセスに着手する。

脚本に関するもっとも一般的なアプローチとしては、BuzzFeedは優れた外部ライター陣とのつながりを持っており、彼らに合ったプロジェクトであれば、我々の開発プロセスに参加してもらう。我々のチームと業界のライターたちが手を取りあい、非常に協力的なプロセスで作業を行っている。

我々が実践しているもうひとつの手法は、すでに存在する脚本に注目することだ。応募も大いに歓迎している。我々は常に、我々の創造的な野心に合致しそうな、やる意味のあるものを探しており、それをあらためて我々の開発プロセスにかけ、まるで我々のオーディエンスのために書かれたような脚本に磨き上げ、作り変える。

――「ブック・オブ・ラブ」の脚本は、どのような経緯でBuzzFeedスタジオに持ち込まれたのか?

あれは脚本の初期草稿を見て、我々が権利を取得し、大がかりな開発プロセスにかけたプロジェクトだ。

我々のオーディエンスはロマンティックコメディが大好きだから、あれは興味を引く脚本だった。我々のオーディエンスには熱烈な本好き、読書家が多い。いたって古典的なストーリーだが、映画には非常に現代的なテーマも盛り込まれている。またこの作品には(文化の衝突という)素晴らしいストーリーラインがあり、そこが我々が開発プロセスにおいて強化し、脚本で特に強調したかったところだ。

――この映画は最終的にAmazonに売却されたが、彼らは撮影や編集にはどのように関わったのか?

Amazonは本作が完成したあとに買い取ったので、開発プロセスには関与していない。

――では、BuzzFeedのほかのデジタル動画シリーズを手がけていた制作スタッフやディレクターを使って、すべて社内で撮影されたのか?

ほとんどの部分は外部パートナーとともにプロジェクトを進めたが、たとえば監督は我々が見つけてきた。我々はグローバル企業であり、また「ブック・オブ・ラブ」は非常に国際的なストーリーなので、スタジオチームは米国に拠点を置いているが、当社の国際部門とも大いに連携し、その力を活用している。

この作品は、英国人男性の物語で、舞台はメキシコだ。そのため開発プロセスにおいて、メキシコシティのBuzzFeedラテンアメリカ版に協力してもらい、メキシコ人の女性監督をプロジェクトのために見つけてきた。我々はメキシコでの伝手を頼って候補者リストを作り、そのなかから素晴らしいアナリン・カリ・マヨール氏を選んだ。キャスティングに関しては、当社のメキシコチームに力を借り、同様に英国側のストーリーについてはBuzzFeed英国版と密に協力して、ちょっとしたグローバルなプロジェクトになった。ポストプロダクションは、同社の主要パートナーの1社を通じて、スコットランドのグラスゴーで行われた。もちろん現地の技術者を起用したが、最初から最後まで全体を指揮したのは、我々のスタジオチームだ。

昨年は5本の映画を制作し、さらに複数のテレビ番組も手がけた。それだけの量の仕事をこなすために、我々はスマートなパートナーシップに頼っている。

――このプロジェクトには、全体でどれくらいの期間を要したのか?

脚本の開発とプロジェクトのパッケージング(キャストやスタッフの配置)に1年、撮影は5週間で、その下準備にも5週間ほど費やした。4月に完成し、8月末か9月に(Amazonに)納品した。すなわち実際のところ、プリプロダクションから納品まで、かなり短いスケジュールだった。

――撮影や編集のプロセスをBuzzFeedスタジオがすべて手がけない場合は、制作会社やストリーミングプラットフォームとパートナーシップを結んでいるのか?

そのとおりだ。我々はライオンズゲート(Lionsgate)と戦略的パートナーシップを結んでおり、それを通じて年内に3本の映画が公開される予定だ。いずれも彼らは最初から我々とともにプロジェクトに取り組んでいる。

しかし、それ以外にもさまざまな形で手を組んでいる。過去12カ月を振り返ると、ディスカバリープラス(Discovery+)、ピーコック(Peacock)、ユニバーサル(Universal)、ワーナー・ブラザーズ、Amazon、ライオンズゲートと提携したプロジェクトを販売してきた。

[原文:‘A bit of a global affair’: How BuzzFeed Studios is leveraging its international hubs to create films for streamers and studios

KAYLEIGH BARBER(翻訳:高橋朋子/ガリレオ、編集:黒田千聖)

Source

タイトルとURLをコピーしました