「業界への情熱と、 ピュブリシス グループの規模が武器だ」:ピュブリシス・ヘルス・メディア の成長戦略

DIGIDAY

2021年のヘルスケア広告費が210億ドル(約2兆3100億円)を超えるなか、エージェンシーグループたちがその金脈を巡って鎬を削るのは、驚くにあたらない。なかでも群を抜いて注力しているのがピュブリシスグループ(Publicis Groupe)であり、同社傘下のピュブリシス・ヘルス・メディア(Publicis Health Media)はヘルスケア業界に特化した最大のメディアエージェンシーとして知られている。

2012年に現在の形として発足したエージェンシー、ピュブリシス・ヘルス・メディアを率いるアンドレア・パーマー氏は、ピュブリシスで14年目を迎える幹部であり、2008年にピュブリシス・グループ傘下のエージェンシー、ディジタス(Digitas)に入社する以前からほかのヘルス関連エージェンシーで経験を積んでいた。パーマー氏は2021年の30%の収益増を牽引しており、2022年度にも同様の成長軌跡を見込んでいると話す。

ピュブリシス・ヘルス・メディアは毎年1回、2日にわたり開催されるエデュケーショナルマーケットプレイス、HealthFront(ヘルスフロント)の第2回を4月27~28日に予定している。ヘルスケアマーケティングの革新にフォーカスするこのイベントは、第1回が2019年に開催されたが、コロナ禍のため休止されていた。

なお、読みやすさと長さを考慮し、発言には編集を加えてある。

――ピュブリシスグループにおいて、ヘルスケア部門はどの程度中心的存在になっている?

専門知識・技術を一元化し、ヘルスケアおよびウェルネス分野に特化するエージェンシーを持つことには、多大な利点がある。ほかのエージェンシーがそもそも持たない、異なるスキルセットを有することにつながるのは言うまでもない。

これまで我々が組織化したエージェンシーをヘルス分野に専門化させてきた努力は、いまやグループ全体にとって非常にポジティブな成長および勢いとなって現れている。適切な人材、適切なインフラストラクチャーに一貫して投資を続け、ヘルスケア業界におけるフットプリントの拡大に向けて資金を投じてきた成果だ。特にメディアにおいて、我々は現在、間違いなく最大のフットプリントを有している。

――他社とのアプローチの違いとは?

この業界に対する情熱と目的を持つこと、それが出発点だ。ただ、我々にはその後ろにピュブリシスグループ傘下ならではの力と規模が控えている。つまり、我々はどちらの世界でもベストだということだ。5年ほど、私はここよりも小さなエージェンシーにいた。そうした独立系エージェンシーの場合、ヘルスケアに特化していてもメディアに完全にフォーカスはしていない。そしてそれは自動的に、ヘルスメディアの視点では能力がやや劣ることを意味する。理由は単純で、大手メディアとつながっていないからだ。

小規模の独立系は、いくつかの点で強力な大手メディアには到底適わない――パートナーシップ然り、レート然り、メディアサイドからのアクセス然りだ。一方で我々は単なる大手エージェンシーの一部門でもない。組織から人材に至るまですべてがヘルスケア業界を念頭に置いて計画実行されており、その点が一般市場を相手にするエージェンシーとはまったく異なる。彼らの場合、ヘルスケア領域において自らの行動に確信がない。つまり、ヘルスケアを既存の別領域でのやり方に置き換え、それで取り繕おうとしているに過ぎない。

――一般のエージェンシーには理解できない、ヘルスメディア分野ならではの要素とは?

大きなものとしてはまず、コンプライアンス、法規制がある。この業界ではほぼどの場面においても、動く仕組みがほかの領域と少々異なる。きっぱり「ノー」と返されることは滅多にない。返ってくるのは必ずと言っていいくらい、「イエス、ただし……それをするにはこの5つの要件を満たさないとならない。さらに、これとこれとこういうものをすべて揃える必要もある」といった言葉だ。そうしたチャネルで機能するには、ほかとは異なる相応のアプローチが求められる。データの利用についても、同様の配慮が求められる。つまり、データの入手、プライバシーポリシー、ターゲティング目的でのデータ使用の方法と場所、侵害とみなされないターゲティングの範囲、といったことだ。

クリエイティブの点で言えば、テレビCMはやや長尺だ。また、ブランデッドと非ブランデッドで言えることと言えないことも少々異なる。ヘルスケアには、ヘルスケア以外ではチャネルではないチャネルがある――たとえば、テレメディシン(遠隔医療)もそのひとつだ。それがたとえば、歯磨き粉のためのメディアやマーケティングチャネルになるとは、この業界以外の人間には思いも寄らないだろう。

――莫大な量を誇るエプシロン(Epsilon:ピュブリシスグループが有するデータプラットフォーム)のデータは、御社の業務にどう活用できる?

エプシロンは巨大なアセットであり、データの高速処理についても、商品開発についても、我々の能力を間違いなく増強してくれている。2021年8月末、ピープルクラウド・フィジシャン(PeopleCloud Physician)という商品を投入した。エプシロンを動力源とし、ヘルスケア専門家の複数のデータソースを一体化するものだ。おかげで、医師および薬剤師との真に一対一でのコミュニケーションを図ることができ、しかもそれをコンプライアンスに準じてすることができた。これは医師に対しても非常に有益な価値提案となるものだ。

[原文:Publicis Health Media president’s script for clients: Never say ‘no,’ rather ‘yes, but…’

Michael Bürgi(翻訳:SI Japan、編集:分島翔平)

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