ウィーワーク(WeWork)は世界中のコワーキングネットワークを活用し、不動産以外の新たな収益源を模索している。そして、コワーキングスペースをイベントやスポンサード製品、屋外広告の目的地に変えようとしている。
同社は現在、リセス(Recess)と提携している。リセスは消費者ブランドを新しい消費者にリーチできそうな場所やイベントと結び付けるプラットフォームだ。リセスのセルフサービスツールを使えば、販売チームは地域、年齢、関心に基づき、どのようなイベントや場所が適しているかを把握し、さらに、ターゲット層に合う広告枠を購入できる。
ウィーワークの米国、カナダにおける付帯的収益部門責任者のレベッカ・グラフ氏によれば、リセスと提携することで、コワーキングネットワークを利用する人々にリーチしたいブランドとつながることができているという。また、ウィーワークの利用者はこれまでにない方法で新製品を知ることができている。ペプシコ(PepsiCo)やシエラネバダ(Sierra Nevada)など、認知度の高いブランドもあれば、ヘルスエイド(Health-Ade)やミルク・バー(Milk Bar)といった比較的新しいブランドもある。これまでに40以上のブランドがリセスを利用し、1カ所または複数カ所のコワーキングスペースと短期、長期のパートナーシップを結んでいる。
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体験のアドネットワークでオーディエンスにリーチ
リセスの共同創業者でCEOを務めるジャック・シャノン氏は、「リセスを利用すれば、ワークアウトのスケジュール、音楽フェスティバル、ファーマーズマーケットなどのイベントに注視して、わざわざ足を運ぶ必要がなくなる」と説明する。また、同氏はリセスを「体験のアドネットワーク」と表現し、「メディアバイヤーはソーシャルメディアなどのデジタルマーケティングプラットフォームの枠を超え、オーディエンスにリーチできる」と述べている。
「多くの体験型エージェンシーがいまだに、チームメンバーの手作業に頼っている」とシャノン氏は話す。「アルバカーキのファーマーズマーケットをGoogleで検索し、手当たり次第に連絡を取り、料金はいくらか、いつ行くことができるのか、空きはあるかなどを確認している」。
ウィーワークはリセスだけでなく、何百ものブランドと直接提携している。たとえば、ヌミ(Numi)はお茶の独占パートナーで、ラバッツァ(Lavazza)はコーヒーを提供。加えて最近は、ドアダッシュ(Doordash)がフードデリバリーの独占パートナーとして発表された。ウィーワークはリセスを通じて得ている収益を明らかにしていないが、グラフ氏は、「単に収益を上げることが目的ではない」と語っている。ブランドとの協業だけでなく、同社はエージェンシーパートナーとの打ち合わせも行っており、これもリセスのビジネスモデルの一部だ。
「私たちがこのスペースで一緒に仕事をする人たちの体験が、同じくらい本物であることが重要だ」とグラフ氏は話す。「タイムズスクエアのようになることには全く興味がない。だからこそ幅広いカテゴリーのパートナーとして、非常に特殊なカテゴリーを選んでいるのだ」。
依然、製品をじかに見るマーケティング戦術は有効
コワーキングのタイムズスクエアになることを避けているからといって、ウィーワークはさまざまな場所で広告を表示することに後ろ向きというわけではない。1月第3週には、キャプティベイト(Captivate)との新たなパートナーシップを発表し、200近いコワーキングスペースにデジタル屋外広告を導入することになった。
モーニング・コンサルト(Morning Consult)の小売およびeコマース担当アナリストであるクレア・タシン氏は、「小売の終末ともいわれる悲観論が何年も続いてきたが、製品をじかに見ることが有効なマーケティング戦術であることは変わっていない」と指摘する(同社が2022年に行った調査によれば、食料品、日用品、アパレル、パーソナルケア用品などのカテゴリーでは、多くの人が依然として直接買い物することを好んでいる)。また、現在の経済環境では、製品をじかに見る機会がないと、新しいブランドに挑戦しにくいという買い物客もいる。
「顧客層が重なるだけでなく、その瞬間に意味のあるニーズを見極めることで、初めて魔法が起きる」とタシン氏は話す。「スナック菓子であれ、スキンケア用品であれ、同じターゲット層に補完的な価値を提供できれば(中略)効果的だ。そうでなければ、運任せのようなものになり、うんざりさせるだけだ」。
小規模ブランドにもリセスは魅力的な選択肢に
リセスのようなプラットフォームの利点を見出しているマーケターもいる。ソーシャルネットワークで広告枠を購入することによるコスト上昇を避けながら、地道な手作業を大幅に減らすことができるという利点だ。たとえオフラインでの認知度が高い小規模なブランドでも、すでに確立されたブランドの方が大きなイベントと契約しやすいケースもある。
小規模なブランドは従来のルートでイベントのスポンサーになろうとしたら、法外な料金に驚くかもしれないが、マーケティングコンサルタントのケビン・サイモンソン氏によれば、リセスは魅力的な選択肢になり得るという。メトリック・デジタル(Metric Digital)の共同創業者でCEOだったサイモンソン氏自身はまだリセスを利用していないが、有効に使う方法はいくつか思い付いている。たとえば、ペットブランドがスポンサーになる動物保護施設を見つける場合などだ。
「人々は実物を好む」とサイモンソン氏は話す。「人々は今も、製品を実際に触ったり、飲んだり、味わったりしたいと考えている。ただ、とくに大きな規模では、実現が本当に難しい。なぜなら、そのためには関係が必要で、本物の関係は規模の拡大が難しいためだ」。
[原文:How WeWork is tapping new revenue by bringing consumer brands inside co-working spaces]
Marty Swant(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:島田涼平)