【おもしろプラモ】マグロが食べたくて仕方がないので「マグロ漁船」を作ってみた

ロケットニュース24

「大間のマグロ」といえば、1匹3億円超の高値がつくこともある超高級グルメ。網で捕獲するのとは違い、一本釣り漁のため魚に傷がつかないのが特徴だという。

利尻島で初めて生ウニを食べたら、それまでのウニ嫌いがひっくり返った経験があるから、ぜひとも現地で食べてみたいとずっと思っている。しかし、ご存じコロナ禍である。

この鬱憤(うっぷん)をどこにぶつければいいのか……とネットサーフィンをしていたら、いいものを見つけた。マグロ漁船だ!


・「大間のマグロ一本釣り漁船 第三十一漁福丸 フルハルモデル」(税込3960円)

そもそも船舶プラモデルは、軍艦であったり往年の帆船であったり「手の届かない憧れのもの」を商品化するのが定石のはず。にもかかわらず、青島文化教材社には「漁船」シリーズがある!

ラインナップはマグロ漁船2種とイカ釣り漁船である。渋すぎる。

これまで塗装不要、接着剤不要などお手軽キットをいくつか作ってきた筆者。今回は初心者向けから脱却して、本格的なプラモデルに挑戦してみたい。

……と思ったが、すごい量の色分けが必要なことがわかり、少々怖じ気づく。どのパーツが何色になるのか、とても覚えきれないほど複雑なので、自ら色指定のメモを書き込む必要があった。

まずは塗装からだ。マスキングテープやゾルを使いまくって塗り分けていく。細かいパーツは、ランナーから切り離す前に塗ってしまおう。

が、しかし、とても筆では塗れないような細部がありすぎて、ペンに頼ったことを白状せねばなるまい。

その後もマスキング → 塗装 → 乾燥 → マスキング → 塗装 → 乾燥の作業を延々と続ける。作業の9割はマスキングだといっていい。

たとえばこんな隙間、いったいどうやって塗れと……

デザインナイフも入っていかない細~い隙間を、なんとかマスキングテープで覆い隠して塗る。

ま、まさか……「見えなくなる場所」だと……?


とはいえ接着の作業はワクワクする。もっとも楽しい工程といえるかもしれない。形が出来上がっていくのがわかって、やりがいがある。

お、折れたー!!


これまで作ってきたどの作品よりもトラブルが多い! 理由はたくさんあって、スナップフィットのキットよりもパーツの「合い」がシビアで、組むのに手こずる場面が多々あること。初めて使ったMr.カラー(塗料)の粘度の高さに悪戦苦闘したこと。接着剤で塗料が溶ける事実に思いが至らなかったことなど。

しかし、普段は間近で見ることのない漁船の構造はおもしろい。なんと神棚がある! 危険な仕事になればなるほど、縁起を大事にするのだろう。

屋根をつけると見えなくなってしまう操舵室。ズラリと機器が並んでいる。塗り分けをサボったところも、ムラになったところも、見えなければ失敗しなかったのと同じである。

その後も細かい作業が続く。2mmにも満たないパーツを着色・切断して、赤色灯にしたり……


震える手で透明パーツを1つ1つ固定して照明を作ったり……


このとき筆者は「イカ釣り漁船にしなくて本当~によかった……」と心から思った。


なんと漁師さんのパーツもついている! マスキングも不可能なくらいに小さいから、手の感覚を頼りに塗っていくぞ。

おや、マグロを塗ってみたが、なにかがおかしい……


おおっと、黒い部分は背中だけだった! 塗りすぎである。世の中「知っているつもり」でも適当にしか覚えていないことがたくさんあるな。

最後の大詰め、薄紙で大漁旗を作ったり、デカールで船体を飾ったりする。これは楽しい!


ところが。


水でヒタヒタに濡らしたデカールを貼りたいところにのせ、台紙だけをそっとスライドさせる……理屈はわかるのだが、無残にもデカールが破れる事態が多発!

1度は貼れたと思っても、ちょっと目を離した隙に「誰がこんなことを!」といいたくなるような怪奇現象も起こる。

組み上がった船体は、安定して持てる場所が限られる。デカールをいじっているうちにパーツが取れたりしてドロ沼だった。添付のデカールのすべては貼れなかったことを許して欲しい。


・完成

完成である。強引に筆塗りしたのでムラがたくさんあるし、折れたところや、無理にはめたところ、デカールが破れたところなど、失敗したところを数え上げたらキリがない。

けれど、大漁旗をなびかせる船体のかっこよさよ! 1/64スケールモデル、全長約257mm、パーツ点数約329点!!

すべてがマグロを獲るためだけに考えられ、搭載されている機能ばかり。これを機能美といわずして、なんという。スキル不足で窓ガラスのワイパーを塗れなかったことが悔やまれる。

漁師さんもちゃんといる。実在の一本釣り名人、山崎倉氏の第三十一漁福丸がモデルである。


本当ならサーフェイサーを使うべきだったのかもしれないし、船底のような広範囲は筆ではなくエアスプレーが必要だったろう。反省点だらけである。けれど、達成感はハンパない。

作っている最中は「こんな大変な作業、もう2度とやらん!」と思っているのに、完成した途端に次を作りたくなってしまう。それこそがプラモデルの “沼” なのかもしれない。苦しくも楽しい日々だった。イカ釣り漁船、買おうかな……。


参考リンク:青島文化教材社
執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.

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