Amazon広告に活路を見出すブランドたち:iOS更新後、より確実でダイレクトな効果を求める

DIGIDAY

こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
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各ブランドは、Facebook、インスタグラム、Googleのソーシャル広告の有効性が低いことを理由に、eコマース大手であるAmazonに広告費用をシフトしつつある。

テック大手企業のAppleは昨年、同社のソフトウェアのプライバシー設定に大きな変更を加え、iPhone所有者が広告主に対して、ユーザーである自分のトラッキングを許可するかどうかを選べるようにした。専門家は、有料のソーシャルキャンペーンでは、iOS 14.5アップデートの前に行っていたのと同じ見返りを得られないと語る。Facebookは、Appleのアプリトラッキングトランスパレンシー(App Tracking Transparency)機能により、同社は2022年に100億ドル(約1兆3100億円)の損害を被るとしている。またGoogleは2月、同社のAndroidスマートフォンでアプリによる監視を減らすため、新たなプライバシー制限を実装すると発表した

これに対して、各ブランドや代理店は、広告予算がAmazonに移行しつつあると米モダンリテールに語った。すなわち、ソーシャルメディア広告に使われていた資金が、Amazonのよく知られたマーケットプレイス検索ビジネスの枠を超え、同社が拡大する広告商品群にますます振り分けられるようになっていくということだ。この変化は、Facebookなどのプラットフォームのパフォーマンスが低いことと、Amazonがマーケットプレイス以外のプラットフォームで広告の存在感を増していることによるものだと、関係者は述べている。

Amazon、広告収益が2ケタ増

これは、eコマース大手である同社が小売ビジネスの減速を補うのに役立っている。Amazonはライバル各社が苦闘するなかで、広告収益の2ケタ成長を報告し続けている。最新の第2四半期(4〜6月)決算において、同社の広告サービスによる収益は25%も増加した。一方で、Snapchatは同社の最新の第2四半期決算発表において13%の収益増加を報告し、Metaの最高財務責任者を務めるデイブ・ウェーナー氏は4月の第1四半期決算発表で、Appleが昨年9月にサービスを開始したiOS 15からは、「さらに対象設定と測定することが難しくなる」見込みであると語った。

広告費の増加は、厳しい時期にあるAmazonの懸念を一部軽減するかもしれない。3月31日までの四半期末時点において、同社の中核的となるeコマース部門の売上は、前年比で3%減少した。一方、Amazonへの支出を増やしはじめたというブランドのなかには、ほかの広告チャネルでのパフォーマンスが悪化している現在において、投資回収が改善していると述べている。

消費者の意思決定に変化が起きている

ウェルネスブランドのビーキーパーズナチュラル(Beekeeper’s Naturals)は、風邪やインフルエンザ向けの商品をAmazonで販売しているが、過去6カ月間でAmazonのマーケティング費用を大幅に増やしたと述べている。今年、同ブランドがAmazonでの広告に支出した平均金額は2倍になり、さらに予算を増やす予定だという。

ビーキーパーズナチュラルの共同創設者で最高成長責任者を務めるダニエル・ミラー氏は、「当社はAmazonでのマーケティングへの支出を大幅に増やす一方、FacebookやGoogleでのマーケティングは減らした。これらのチャネルには安定性が欠けているためだ」とメールで語った。同社が過去数カ月にAmazonでの広告支出を増やした理由について問われたとき、同氏は、消費者が「今までとは異なるプロセスで意思決定を行うようになった。つまり、直接的なメリット、「なぜこの商品なのか?」という理由、そして自宅までの配達時間のほうが、ブランドのフラッグシップであるデジタルでの経験よりも重視されるようになった」と返答した。

Amazonコンサルタント会社のポディアン(Podean)でチーフエグゼクティブを務めるマーク・パワー氏は、「ほかのプラットフォームで新規顧客を獲得するコストが高騰し、さまざまなカテゴリーにわたるクライアントの多くにとって維持できなくなってきたため、従来なら顧客獲得に割り当てられていたメディア予算をAmazonに振り分け、スポンサー付き広告やDSPをサポートするようにしているが、増えた予算の大部分はDSPのものであるという興味深い変化が起こっている」と、述べている。同氏と、ポディアンでの同氏のクライアントであるモンデリーズ(Mondelez)、エルフ・コスメティクス(e.l.f. Cosmetics)、ソニー(Sony)などは、これまで新しい顧客を獲得するためにFacebookやGoogleに多額の投資を行ってきたが、現在はAmazonにより多くの広告予算を支出している。ただしその詳細は公表されていない。

有料ソーシャル広告の機能が低下

ソーシャルメディア広告がますます予測不能になってきていることは、メディアバイヤーとの対話において繰り返し持ち出されるテーマだ。ブランドがAmazonで成長することを支援している成長マーケティング企業のアカディアズボブスレー(Acadia’s Bobsled)では、D2Cブランドの見込み顧客のうちの3分の2は、スポンサー付きソーシャル広告の成果が低いと報告していると、同社の小売マーケットプレイス戦略責任者を務めるキリ・マスターズ氏は語る。場合によっては、以前は広告支出に対する回収が7倍だったものが1倍にまで落ち込んでいるケースもあると、同氏は付け加えている。

マスターズ氏は次のように述べている。「有料のソーシャルはしばらくのあいだ成功してきたが、最近になって機能しなくなった。一部のブランドは、この方法が今後使えなくなったことに気づいて「しまった」と思いはじめている」。

ビーキーパーズナチュラルによる広告は、ROAS(広告費用対効果)に関して、Amazonを大幅にしのいでおり、Facebookと比べると5〜10倍に達していると、ミラー氏は述べている。

確実性を求める広告主

「Amazonは、iOS14以後の世界において、データに関してほかの会社と一線を画し続けている。Amazonマーケティングクラウド(Amazon marketing Cloud)などの新しいツールは、動画などのトップオブファネルでの戦術が、ファネルの下流に引き起こす影響を確認できるため、ファネルのすべてのレベルで何が起きているかを把握し、より的確な手段に注力できるようになる」と同氏は語る。

AWS上に構築されたAmazonマーケティングクラウドは、広告主が自分たちのマーケティングについて、検索、表示、動画、音声などのメディアチャネル全体にわたってどのようなパフォーマンスを示しているかをより透過的かつ柔軟に把握できるよう設計されている。DSPやPPCの広告キャンペーンがどのようなパフォーマンスを示したかも、より深い洞察を提供する。

「2021年にiOS14のサービスが開始されて以来、FacebookやインスタグラムのROIは大幅に低下している。過去数カ月には多少の減少が見られた」とミラー氏は述べている。

さらに、eコマースアナリストたちは、マクロ経済が不確定な現状において、広告主は確実性が得られるようなチャネルを使い続ける可能性が高いと語っている。

ピュブリシス(Publicis)で最高コマース戦略責任者を務めるジェイソン・ゴールドバーグ氏は次のように述べている。「私がAmazonで広告を購入するとき、それはダイレクトレスポンスで、すぐに行動を喚起する広告であり、その広告を見た人は、商品をクリックして、その商品を購入する。経済が厳しい時期において、広告主はファネルの下流により多くの資金をつぎ込む傾向がある。そして、ファネルの一番下に位置しているのがAmazonだ」。

[原文:Brands and agencies are turning to Amazon’s ad products as other platforms flounder]

Vidhi Choudhary(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:黒田千聖)
Illustrated by Ivy Liu

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