「IP間のつながりが分かれば、データを通じ多くのことが可能になる」: ファンダム CMO ステファニー・フリード 氏

DIGIDAY

フィクション、ファンタジー、エンタメにまつわるウィキペディアと形容されるファンダム(Fandom)。同社は、インターネットユーザーがさまざまな番組、映画、ビデオゲームに傾ける情熱について、独自のデータと洞察を持っている。しかし、その内容はユーザーたちの行動データにとどまらない。ファンダムが抱える大量のユーザー生成コンテンツやコミュニティボードは、同社のファーストパーティ・データ収集にも役立っている。

そして、ユーザーのお気に入りのキャラクター、物語のプロット、クロスオーバーに関する興味などのデータを18年間蓄積したこの自社データはファンDNA(FanDNA)と呼ばれ、広告主に販売され、従来の広告キャンペーンから新しいプロジェクトや商品の研究開発まで、あらゆる情報を提供する。

DIGIDAYポッドキャストのエピソードで、ファンダムのCMOであるステファニー・フリード氏は、クライアントがどこに投資すべきか、ターゲットとするオーディエンスに最も効果的にリーチするにはどうすればよいかを理解できるよう、彼女のチームがこのデータを4つのアフィニティ(親近感・類似性)ベースのグループに分類し始めた方法について語った。

彼女はまた、なぜファンダムがファネルの上部、マーケティング・プロセスにおける発見ステージに関心を持っているのかについても語ってくれた。2022年、同社はTVガイド(TV Guide)を含む7つのブランドをレッド・ベンチャーズ(Red Ventures)から買収。目的は、視聴者がどのように新しい番組を見つけるかに関するデータの構築を開始することだ。また同社は、以前の検索に基づいてコンテンツや広告を推奨するのに役立つ新しいパーソナライズツールも構築している。

以下、読みやすさのために編集と要約を加えた、会話のハイライトである。

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ストリーマーに対抗するファーストパーティデータ

私たちは自分たちのデータをファンDNAと呼んでいるが、これはプラットフォーム上で人々が何をしているかという行動データに深く基づいている。この規模は、何兆ものデータポイントにわたっている。私がファンダムに来た主な理由は、データから収集できる洞察がたくさんあり、その情報を使ってよりよいファン体験を生み出せると感じたからだ。

我々は非常に多くのコンテンツを所有している。4500万ページのコンテンツがあり、それぞれのページは無限にスクロールすることができる。これをネットフリックス(Netflix)のようなものとして考えてほしい。何年もの間、ネットフリックスは膨大なデータを持っていると賞賛されてきたことを思い出してほしい。彼らはあなたを理解していて、画面でホームページにアクセスしたときに何を勧めるべきかを知っていて、何を見たかを知っている。どの番組を最後まで見たのか、何を見終わっていないのか、どこで視聴を止めたのか、どこで一時停止したのか、を把握している。

しかし、ネットフリックスは、ユーザーがどのキャラクターが好きなのか、どんな順番で好きなのかはわからない。どんな武器がユーザーの心に響くのか分からない。ユーザーが物語のどんなポイントに関心をうっすらと持っているのか、もしくは深く飛びつくのか、といった詳細は知らない。そして、ネットフリックスは自分たちのエコシステムの外にあるつながりやショーについては見られない。そのため、Huluにおけるユーザーの好きな番組や好きなキャラクターももちろん知らない。そして、どんなゲームが好きなのか、何をプレイしているのかもわからない。

ファンダムの本当にユニークな点は、それぞれのIPのなかで、具体的に何に興味を持っているのか、非常に詳細に見られることだと思う。そして、IP間のつながりも確認できる。これにより、データに関して非常に興味深い多くのことが可能になる。

4つの異なるアイデンティティ・セグメントを発見

私たちは以前、(ファンダムに)「スーパーファンがいる」といっていた。実際、ファンベースを見ると、確かに私たちにはいわゆる「スーパーファン」がいる。しかし、それ以外にもかなり(スーパーでないにしても)大きなファンもいて、平均的なファンもおり、カジュアルなファンもいる。我々は、人々がさまざまなIPとどのように交流したり関与したりするかについての、範囲の幅広さについて考えている。

我々は4つの異なるアイデンティティ・セグメントを発見した。ひとつは、IPがその人の一部であり、自分自身がどんな人間であるかを人に説明するときの一部となっているような人だ。IPが彼らの人生の奥深くに関わっているのだ。作品の存在が彼らの毎日の生活の一部に取り込まれており、そのIPにちなんだタトゥーやペットを飼っているかもしれない。

2つ目は、特定のカテゴリーやジャンルが本当に好きな人たちだ。彼らは(アカデミー賞などの)賞に興味があり、レビューにも興味がある。

3つ目の人は、作品について、ただ井戸端での会話をしたいだけなので、どんな作品でも「他の人が見ているのに自分が見ていない」状況を嫌う。夕食の席で話題になっていることを見逃したくないと考えており、それについて自分の意見を持ちたいと思っている。彼らは、ただその自分の意見や考えを言いたいがためだけに、作品を視聴したいと感じる。そして最後の4つ目は、楽しみたい人だ。彼らは単にエンターテイメントのファンである。彼らはおそらく、いわゆる「カジュアルな視聴者」と呼ばれる人たちだろう。

トレンドTVのケーススタディ

私たちはファンダムの構成を理解するために、これらのより深いファン・アイデンティティやファン・プロフィールを調査した。というのも、この時代には見るべきものが多く、遊ぶものも多いので、広告主やブランドがブレークスルーを持つのは確かに困難だからである。彼らのファンや潜在的なファンの理解を深めることは、彼らの市場開発戦略やマーケティング戦略、そしてブランド認知と顧客維持を促進する方法を理解するのに役立つ。

たとえば、ドラマ『女子大生の性生活(Sex Lives of College Girls)』は、IPが自分自身であるような熱狂的な人や、特定のカテゴリーやジャンルが本当に好きな人には、非常に高い人気を持っている。このことは、『女子大生の性生活』に非常に親近感を持っている人々がいて、彼らはそれを見ることに非常に意図的であることを意味する。HBOが宣伝キャンペーンや新シーズンについて考えているときには、この番組にすでに夢中になっている人々をどのように活用するかを考える。

なぜなら、潜在的なファンたちが、友人や家族など、作品を大好きな人々を通して、情報を受け取っているからだ。そのため、大規模なテレビ広告キャンペーンとは対照的に、これらのインフルエンサー(の友人や家族)と実際につながる戦略もあり得る。この戦略によって、人々がユニークな体験を通し、ファンたちのアイデンティティを利用する方が、実際には効果的かもしれない。

[原文:How Fandom’s first-party data, FanDNA, is expanding to improve recommendations for advertisers and audiences

Kayleigh Barber(翻訳:塚本 紺、編集:島田涼平)

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