パブリッシャーの コマースビジネス 、拡大に必要な投資は?:Vice、Vox Media、Leaf Group、BuzzFeedが挙げるポイント

DIGIDAY

米DIGIDAYの第1回コマースウィーク(2022年5月16日~20日)のさなか、パブリッシャーはバーチャル会議を開いて、今後のコマース戦略について互いに意見を交わした。

バイス(Vice)、ボックスメディア(Vox Media)、リーフ・グループ(Leaf Group)、バズフィード(BuzzFeed)の幹部がパネルディスカッションに参加し、パンデミックの際に自宅にいた消費者に対し、どのようなサービスを提供したか、そして今後のビジネスを拡大すべく、パンデミック後の消費者向けeコマースサービスを強化するために何に投資しているかについて話し合った。

ポイントは5つあり、それぞれ次のとおりだ。

ポイント1:単にオーディエンスを増やすのではなく、現状のオーディエンスの意識を維持しつつ、増やす。

パブリッシャーがeコマースサービスを強化する際、すでにリーチしている一部のオーディエンスの意識を希薄化させないことが重要だ。

バイスメディア・グループ(Vice Media Group)のコマース&パートナーシップのバイスプレジデントであるサマンサ・ベーカー氏は、アフィリエイトコンテンツは、ブランド全体の適切な場所にのみ表示されるだろうし、そうあるべきだと主張する。これは特に、ニュース報道の近くには配置されるべきではないことを意味する。

また、ニュース以外のブランド全体でもアフィリエイトコンテンツが表示されるような、画一的なアプローチを適用すべきでないことも意味する。代わりに、ベイカー氏とそのチームは、オーディエンスをSNSから新しいアフィリエイトコンテンツへと誘導することに重点を置いている。「オーディエンスを遠ざけたくないし、色付けされたコンテンツと思われたくない」とベイカー氏は言う。

ポイント2:広告主との直接の関係こそが、新しい戦略を正確に伝えることができる。

リーフ・グループは、オーディエンスにリーチするための双方向型のコンテンツ提供事業の創出に成功した。カリフォルニア州ベニスにあるハンカーハウス(Hunker House)と呼ばれるこの家は、製品を直接売り込むことができるスペースがあり、インフルエンサーに独自のオーガニックコンテンツを作成できるエリアを提供している。

その延長線で、リーフ・グループのホームブランドであるハンカー(Hunker)は、パブリッシャーの営業チームと直接関係のある広告主との契約に基づいて、その家を利用したブランディングにはじまり、紙媒体、デジタルコンテンツのコンポーネントなどを含む統合パッケージの制作に署名した。

「アフィリエイト広告はもちろん収益源であり、また多様化のための方法として機能させることが可能だが、一方で、それは、さまざまな人々との関係構築をする上で、より重要な要素となっている」とハンカーのシニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのイブ・エプスタイン氏は述べている。

これは、ボックスメディアが展開してきた戦略であり、特にブランドのプロフィールを考えると、ニューヨーク・マガジン誌(New York Magazine)、ナウディス(NowThis)、スリリスト(Thrilist)などに採用されている。ボックスメディアのチームは直接的な関係を活かし、リードタイムが長くかかる広告主に対して提示する条件の中に、この戦略を取り入れていた。

「今年度または今四半期ごとの指標を理解していれば……、それを考慮に入れて計画を立て、当社のサイトにうまく連携できる適切なタイミングで当社の企画力や編集力を売り込むことができる。そして、広告主とデータを共有する」と、ボックスメディアのコマース担当シニアバイスプレジデントであるカミラ・チョー氏は話す。

ポイント3:KPIは刻々と変化しており、広告主/パブリッシャーは既存の契約条件を変更しつつある。

以前は成功したアフィリエイトコンテンツを測定する方法も、今では適宜変わりつつある。それゆえ、広告主とパブリッシャーの契約内容も変化している。

「小売業者と広告主は、特にこれまで以上にコンテンツを重要視し、価値を見出している」と、バズフィードのコマースのエグゼクティブバイスプレジデントであるニラ・アリ氏は語る。「本来、これはパブリッシャーの本業である。既存のフォーマットやトレンドを解明し、それを打破したいと、広告主とパブリッシャーの双方が願っている」。

それがCPAやCPCで価値を測定することを意味するのか、定額料金の交渉を意味するかにかかわらず、パブリッシャーはその条件策定に取り組んでいる。そして、多くの場合それは、パブリッシャーがいつどうやって推奨コンテンツをオーディエンスに提示するかの判断指針ともなる。

たとえば、バイスメディア・グループでは、「オーディエンスをコンバージョンさせたいときは、真剣に内容構成に注力する」とベイカー氏は言う。

ポイント4:経済状況やインフレを考慮し、パブリッシャーは消費者の購買力を常に意識する。

インフレと景気後退の可能性が高いため、パブリッシャーはオーディエンスの購買力を考慮する必要がある。したがって、オーディエンスにリーチするために推奨コンテンツの種類を検討する必要がある。

ボックスメディアは、オーディエンスに新しいブランドを紹介する方法として、その時事に連動する最適なコンテンツを大幅に割引して提供することで大成功をおさめている。具体的には、ザ・ストラテジスト(The Strategist)のコンテンツチームと協力して、ユーザーの好みに合ったコンテンツを紹介するようにしている。

「データ共有を行って、読者に(ブランドが)浸透し始めている事実を広告主に知らせることもできる」とチョー氏は述べる。

ポイント5:ショッパブル動画には、いくつかの問題がある。

バイスメディアのベイカー氏もバズフィードのアリ氏も、今年のニューフロンツ(NewFronts)で過大な注目を集めたトピックであるショッパブル動画を中心にした新しいサービス提案を予告したが、測定やアクセス可能な在庫に関する業界の一貫性の問題でいまだ苦戦しているようだ。

「ショッパブル動画はまだ発展途上だ」とベイカー氏。「だから、そこに最大のチャンスがある」。

SNSプラットフォームの中でも特にピンタレスト(Pinterest)のような、コンバージョンを中心に構築されたものであれば、ライブストリーミングショッピングのインフラをパブリッシャーに提供できる、とベイカー氏は話す。「私としては、いずれピンタレストが最適な方法を考案するだろうと、慎重ながらも楽観的に考えている」

[原文:How publishers are future proofing their commerce offerings for post-pandemic consumers

Sara Jerde(翻訳:SI Japan、編集:猿渡さとみ)

Source

タイトルとURLをコピーしました